【新型XC60試乗】ボルボのベストセラーが進化!骨格から一新したミドルSUVの意欲作

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“安全”と“頑丈”一辺倒から、“北欧デザイン薫る、洒落たブランド”へとボルボが変身するきっかけとなったモデル。それは、2000年に登場したボルボ「S60」でしょう。

それまでも、突然変異的に小洒落たモデルをリリースすることがあったボルボですが、S60以降、デザインを統括するピーター・ホルバリー氏指導のもと、ブランド全体のイメージチェンジが強力に押し進められました。

特に、ハンサムカーの代名詞ともなったS60の成功は著しく、代が替わってからは、2009年に流行のSUVボディをまとった「XC60」、その翌年にはステーションワゴンの「V60」が加わり、ファミリーを増やしました。

中でもXC60は、トレンドの波に乗り、世界中で売れているボルボ車のうち“3台に1台はXC60”というベストセラーに成長。それだけに、今回のフルモデルチェンジにも、力が入ろうというものです。

2017年のジュネーブモーターショーで披露された新型XC60は、ボルボのフラッグシップである「S90」「V90」の際に新開発された“SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ)”プラットフォームを活用。根本から新しいモデルとなりました。

S90/V90より75mm短い2865mmのホイールベースに、全長4690mm(先代比プラス45mm)×全幅1900mm(同プラス10mm)×全高1660mm(同マイナス55mm)のボディを載せます。大きさは旧型と同等ながら、若干、車高を落としたスポーティなフォルムになっているわけです。

一方、ホイールベースの延長分だけ前輪の位置が前進し、昨今のボルボ車のデザインコンセプトになっている“FR(後輪駆動)ルック”が強調されました。ボルボとしては、スッと伸びたフロント部が「プレミアムモデルには欠かせない」と考えているのです。

外観では、ボンネット、ボディ側面の各部に凹みが入れられ、また細かいところですが“6ライト(片側3枚の窓)”最後部の下端が跳ね上げられて、デザインの躍動感を増しています。初代のXC60と比較すると、ちょっと線が多いビシーな印象ですが、トール神のいかづち(ハンマー)をイメージしたヘッドライトと併せ、XC60が新世代に移ったことを強くアピールします。

世の環境重視の流れと、開発リソースを集約するため、SPAプラットフォームは直列4気筒エンジンの搭載しか考慮していない、思い切ったものです。グレードによる差別化は、主に過給方法によって実現。ニューXC60には、4種類のパワーソースが用意されます。

2リッター直列4気筒エンジンをスーパーチャージャーで過給(318馬力)し、さらにモーター(87馬力)を組み合わせた「T8 ツインエンジン」。2リッター直4にターボとスーパーチャージャーを与えた「T6」(320馬力)。ターボのみの「T5」(254馬力)。そして、2リッターディーゼルターボ(190馬力)です。

内外装の違いは大きく分けて3種類。ベーシックな「モメンタム(MOMENTUM)」、豪華版「インスクリプション(Inscription)」、スポーティな「Rデザイン」です。

気になる価格は、以下のとおり。
●T8 ツインエンジン AWD インスクリプション:884万円
●T6 AWD Rデザイン:724万円
●D4/T5 AWD インスクリプション:679万円
●D4 AWD Rデザイン:649万円
●D4/T5 AWD モメンタム:599万円

ポルシェ「マカン」はもとより、BMW「X3」やアウディ「Q5」より、グッとリーズナブルですね。ガチなライバルはメルセデス・ベンツ「GLC」になりましょうか。スリーポインテッドスターを掲げたGLCに対するXC60の強みは、ボトムレンジから200馬力超の強心臓を持ち、装備も充実しているところ。

まあ、XC60の格好にほれたら「それまで」ですが、SUV市場は、ブランドをまたいでの買い換えが多い流動性の高いマーケット。「ニューモデルの魅力がどれだけ持続するか」も大切な要素です。その点、シンプルなスカンジナビアンデザインは、飽きがこなくていいかもしれませんね。個人的には、すでに旧型になった初代XC60さえ、いまだ魅力的に見えます。

さて、XC60のファミリー中、先陣を切って販売されるT5 AWD インスクリプションに乗ることができましたので報告しましょう。

ドアを開けて運転席に座ると“ドリフトウッド”と名付けられたマット調の白いウッドパネルがいい感じ。その名のとおり“海岸に漂着した流木”を模したものだそうで、自然に対する日本人の美意識とは「少々異なるなぁ」と感じるけれど、そうした一種の違和感も、輸入車に接する楽しさです。

室内を見まわすと、トンネルコンソールに設けられたスターターボタン、センターコンソールにはめられた縦長の9インチのタッチセンサー式ディスプレイ、12.3インチの液晶に映し出されるメーター類…。そうした、ボタンの数がミニマムに抑えられた操作系は、上級車種であるS90/V90のそれをひきついでいます。インテリア全体のイメージも共通のもの。でも、乗員の前を横断するインストルメントパネルの造形そのものは、きっちり差別化されています。「単なる90シリーズの廉価版ではない」ということです。

ステアリングホイールを握って走り始めると、穏やかな運転感覚がいかにもボルボ。1860kg(ガラスサンルーフ付き)と2トンを切ったボディを、かつての3.5リッターV6級のアウトプットを誇る2リッターターボ(最高出力:254馬力/最大トルク:35.7kg-m)が余裕を持って運びます。

試乗車は、オプションのエアサスペンションを備えていましたが、細かい凹凸が連続するニッポンの田舎道はちょっと苦手の模様。“らしからぬ”ゴツゴツ感が意外と伝わってきて、「要改善」と灰色の脳細胞にメモされました。もちろんこの辺りは、インポーターのボルボ・カー・ジャパンも認識している模様で、近いうちに改良されることでしょう。

このエアサスには、ドライブモードをはじめ、状況や速度によって車高を上下させる機能が付いています。速度が上がったり、燃費を重視したりする場合には、最大20mm車高が下がり、逆に最低地上高を稼ぎたいオフロードモードでは、40mm上げられます。そのほか、荷積みモードでは、50mmもダウンするなど、それなりの量のレジャー用品を搭載し、頻繁にオフロードに入り込むような仕事/趣味を持つ人にはオススメの装備です。

ボルボ車として当然のこととして、安全装備も充実。“シティ・セーフティ”機能には、夜間の大型動物検知能力に加え、新たに“ステアリングサポート”を搭載。万一の際、衝突回避のために、運転者のステアリング操作を補完するよう、内輪側のブレーキをかけてくれます。自動のステアリング操作機能そのものも90シリーズ同様に採用され、対向車との衝突回避や車線逸脱防止、半自動運転たる“パイロットアシストII”の車線維持支援機能などでも活用されます。

ボルボのベストセラーとして惜しみない機能が与えられ、順当な動力性能を持つ新型XC60。国産、輸入車を問わず「手頃なSUVが欲しい」と考えているユーザーには、見逃せないクルマに仕上がっています。ドイツ御三家も、安閑としてはいられません!

<SPECIFICATIONS>
☆T5 AWD インスクリプション
ボディサイズ:L4690×W1900×H1660mm
車重:1860kg
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8AT
最高出力:254馬力/5500回転
最大トルク:35.7kg-m/1500〜4800回転
価格:679万円

(文&写真/ダン・アオキ)