東京モーターショー(TMS)が始まって初めての週末、筆者は台風が近づく中、長野に向かった。車山高原で行われるフレンチブルーミーティング(FBM)に参加するためだ。

FBMはフランス車オーナーが集まる自動車のイベントで、1987年に初開催。毎年10月中〜下旬の土日に行われ、今年で31回目を迎える。自動車関連のミーティングの中でも長い歴史を誇るほうだろう。

筆者が最初に参加したのは第3回。初めてのフランス車としてシトロエン2CVを買ったばかりの頃だった。それ以来、家庭や仕事の都合で行けないときもあったけれど、25回以上は足を運んでいると思う。


今年で31回目を迎える「フレンチブルーミーティング」。ユーザーが主導する自由でユニークなイベントとして知られている

30年の間にはさまざまな変化があった。当初は雪が舞うこともあったが、最近は雨止まり。温暖化を実感する。当初は100台前後でメイン会場のグランドだけで完結していた参加台数は、近年は2000台を超えることも。すべての駐車場がフランス車で埋まるという、日本じゃないような光景が展開される。

もちろんTMSを筆頭に、これ以上の人を集めるクルマのイベントはある。しかし多くはメーカーやインポーターが絡んでいる。一方FBMはインポーターの協力はあるものの、運営は一貫してユーザー有志が行なっている。

当然ながら宣伝効果はメーカーやインポーターが関わったほうが絶大。ではなぜFBMは手弁当のイベントなのに人とクルマを集め、ここまで長い間続き、筆者のような常連を増やしているのか。

個人的はイベントそのもののフランスらしさにあると思っている。

フランス映画、フレンチポップス、フランス料理、フレンチファッションなどのメニューも盛り沢山だけれど、これらは表面的な部分。もっと根源的な部分が日本離れしている。

■“日本型イベント”に慣れた人にはつらいかも?


60年代の旧車から最新モデルまで並ぶ姿は圧巻。車種や年式、価格によるヒエラルキーは存在しない

まずは自由・平等・博愛というフランス国旗のトリコロールを表す精神が息づいていて、新車のほうがエラかったり、希少なクラシックカーが特別扱いされたりということがない。1960〜70年代の名車アルピーヌA110の隣に今年発売された新型シトロエンC3が並んでいたりして、どちらのユーザーもお互いに気兼ねしたりはしない。

イベントプログラムは、土のグランドを舞台とするジムカーナ、シトロエン2CVのエンジンをクランクで掛ける競争、子供写生大会などいろいろあるが、参加義務はなし。グランドから離れた駐車場にテントを張って1日過ごす人もいる。こちらもまた自由なのだ。

たとえば筆者の場合は、当初はイベントに参加する珍しいクルマを見たり、ジムカーナに参加したりするのが楽しみになっていたが、回を重ねるにつれ「仏車友」が増えてきて、今では年に一度彼らに会いに行く、お盆休みの里帰りのようになっている。

そう、FBMは自由だからこそ、参加者の自主性が求められる。主催者は場を提供するだけ。その場をいかに楽しむかは参加者の役目だ。至れり尽くせりの日本型イベントに慣れた人は何をしていいか分からず、二度と来ないかもしれない。

今年はある意味この精神を象徴していた。台風が日本列島に接近する中、FBMは前日に開催を決断し、オフィシャルサイトに次のようなメッセージを掲げた。

「FBMはどのイベントよりも自立をされた参加の皆様により支えられております。情報のご収集及び現地情報により、皆様のご判断にてご参加頂きたいと思います。お越し下さる場合は、くれぐれも道中お気をつけてお越しくださいませ」

言われなくてもそうだと思った筆者は、雨具一式を愛車シトロエンC4カクタスの荷室に収め、雨の中車山高原へ。土曜日の夜は多くの仏車友と1年ぶりの再会を喜んだが、日曜日の昼頃に雨が強くなったので、いつもより早めに会場を後にした。

だからFBM、フランス車やフランスを愛する人だけでなく、日本的な生活に疲れている人にもお勧めしたいと思っている。フランス車オーナーじゃないって? 心配ご無用。FBMはフランス車以外でも参加できる。はてしなく自由なイベントなのだ。