映画『ラストレシピ 〜麒麟の舌の記憶〜』二宮和也と西島秀俊の演技で料理人たちの魂の輝きを魅せる物語です【最新シネマ批評】

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【最新シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは、嵐の二宮和也主演作『ラストレシピ 〜麒麟の舌の記憶〜』(2017年11月3日公開)です。天皇の料理番が考案した伝説のフルコースのレシピを探し出そうと奔走する絶対味覚の料理人が、そのレシピに隠された謎を解き明かしていく……という、1930年の満州と現代の日本を繋いだドラマです。

演出は『おくりびと』で、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎監督。では物語からいってみましょう!

【物語】

佐々木充(二宮和也)は、絶対味覚を持った天才料理人。彼は幼いときに両親を亡くし、施設で育ちました。料理の才能によって若くして起業しましたが、経営に失敗。今は「人生の最後に食べたい料理」を再現する料理人として、個人の依頼を受けながら高額の報酬を得ています。

そんな彼の元に「満州国で天皇の料理番として働いた山形直太郎(西島秀俊)の伝説のフルコースのレシピを再現してほしい」という依頼が来ました。充はそのレシピを求めて、山形を知る人物を次々と尋ねることになるのです。

【本作のニノは、ちょっと嫌な奴です】

ニノが演じる佐々木充は天才料理人です。天才と言われる人物は、人より飛び抜けた才能がある分、できない人の気持ちがわからないこともあり「なんでこんなことがお前にはできないんだ!」と言い、歩み寄ったり、目線を下げて対応したりということをしない人がいます。それが佐々木充です。

彼はその才能で若くして自分の店を持つほどになりますが、すぐに経営破たんしてしまったのは、天才だけど、人として欠けたところがあったからでしょう。正直、前半の佐々木は、自分本位で人の気持ちがわからない人。あまり良い人とは言えません。でもそれは、彼が幼くして孤児になり、家族のぬくもりを知らないことも関係しているのではないかと思います。

その彼が、伝説のレシピを探す旅に出ます。探偵のように天皇の料理番・山形を知る人物を訪ねて歩き、そこから映画は1930年代の満州へ飛ぶのです。

【映画の真ん中ガッツリ西島秀俊!】

映画の前半は佐々木の物語なのですが、真ん中では1930年代の満州へ舞台を移して、天皇の料理番の山形と妻の千鶴(宮崎あおい)が料理スタッフとともにレシピ作りに励む物語になります。

満州編にはニノが出てこないので、ニノファンの皆さんはちょっとだけ寂しいかもしれません。けれども、実はこの満州エピソードのすべてが、物語全体の謎の鍵を握っています。

構成は巧みで「ナルホド」と思うし、西島秀俊を見るために劇場に足を運んだ西島ファンは大満足だと思います。ストイックな料理人・山形の役は西島さんにピッタリ。陸軍からの依頼でレシピ作りに明け暮れた果てに、彼に襲い掛かる運命は悲劇です。でも彼は料理人としてのプライドを貫いた。かっこいいんですよ!

【受け身の演技で後半巻き返し!】

今回のニノは、受け身の演技に徹しています。佐々木は、レシピ探しの旅で出会う人々から山形の様々な情報を得ていくわけですから、心の変化を積み重ねていく感じです。

そして後半、佐々木は、レシピと山形のすべてを知ることで、何をやっても達成感を得られないモヤモヤした人生をガラリと変えることになるのです。

70年前の真実が佐々木に関係しているというのにビックリですが、佐々木はどんどんいい顔になっていく。やさぐれてうつむいていた男が、徐々に顔を上げていくような……。そんな微妙な表情の変化を見せていくニノ。

今回のニノは静かな好演という感じでしょう。これだけ受け身の芝居をするニノを見る機会はないので、ある意味貴重かも!

【何気に凄いよ、綾野剛】

この映画の凄いところは、二宮、西島に加えて、主演映画も多数ある、宮崎あおいと綾野剛を助演ポジションで起用していることでしょう。宮崎さんは山形の妻役で、満州編のみの登場。夫を支える良妻を可憐に演じ、あいかわらず可愛いです。

綾野剛さんは、助演でもインパクト大。佐々木が唯一の本音で語れる幼なじみの柳沢役。中華料理店の雇われ店長で、佐々木は彼の元を訪れ、炒めものを作っている柳沢を見ては、嫌味な事を言うんですよ。

その嫌味をさりげなくかわして佐々木を心配する柳沢。そのシーンだけで二人の絆が垣間見られるのです。佐々木はここにいるときが、いちばんホっとするんだろうな〜と。

その雰囲気を作っているのが綾野剛。汗かきながら中華鍋をガンガンまわしている姿もセクシーです。

ちなみに登場する料理は本格的で凄いです。こんな凄い料理見たことないという、ヴィジュアルも美しい料理が続々登場しますから、空腹で見るとお腹グーグー鳴るかもしれませんよ。

執筆=斎藤 香 (C) Pouch

『ラストレシピ 〜麒麟の舌の記憶〜』
(2017年11月3日より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー)
監督:滝田洋二郎
出演:二宮和也、西島秀俊、綾野剛、宮崎あおい、西畑大吾、大地康雄、竹野内豊、笈田ヨシ
(C)2017 映画「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」製作委員会、(C)2014 田中経一/幻冬舎

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