MACOが語る、ラブソングを歌って気づいたこと「“愛してる”は“生きてる”の実感にも繋がる」

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 MACOが、3枚目のオリジナルアルバム『メトロノーム』を11月15日にリリースする。同作には、MACO x ACUVUE®キャンペーンCMソング「恋するヒトミ」やJTB『知ることは、出会うこと。シンガポール篇』CMソング「恋の道」など全12曲を収録。これまではリスナーに“恋をしたい”と思わせる、幸福感溢れるラブソングを数多く世に送り出してきたMACO。しかし、今作では失恋ソングの「Sweet Memory」がリード曲であるように、多くの女性たちの心に響くような言葉を綴った楽曲がより一層増えている。自身の成長に伴い、歌われるテーマも深みが増している今、MACOは『メトロノーム』にどのような思いをこめたのだろうか? 本人にインタビューを行い、歌詞とサウンドの両面から作品の魅力に迫った。(リアルサウンド編集部)

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■楽曲を通して“疑似失恋体験”をしてほしい

ーーアルバム『メトロノーム』の話に入る前に、前作アルバム『love letter』からここまでの話も伺わせてください。大きなトピックとしては、フォトエッセイ『タイムマシンができたなら。』の刊行がありました。音楽以外でも幅広く活動することで、何かフィードバックはありましたか?

MACO:故郷のことや歌手になるまでのことを書いていて、ファン以外の方の手にも取っていただいた実感はありますし、改めてMACOというシンガーがどういう価値観を持っているかも知ってもらえたと思います。

ーーCMソング「恋するヒトミ」も手掛けたりと、ますます好調のMACOさんですが、ここまでの2017年を振り返ってみてどうですか?

MACO:ツアーから始まった1年でしたね。途中には、アキュビュー®さんのCMに「恋するヒトミ」、JTBさんのCMに「恋の道」をそれぞれ起用してもらって、MACOの歌がこれまでよりも広く聴かれた年だと感じています。でも、自分では「まだまだ」なんですよ。ツアー自体もファイナルの横浜はどこか悔いが残っていて。それが「もっとやれたはず」という気持ちにも繋がっています。11月にこうやってアルバムを出して、ようやく来年に向けてスタートが切れるという感覚です。

ーー2017年はツアーから始まったということですが、それは今回のアルバム制作にも反映されているのでしょうか。

MACO:それはありましたね。みんなでミーティングを開いて、『love lettter』や『22』、『FIRST KISS』を改めて振り返ってみたんですよ。今までのMACOが持っていた良い部分ともう少し伸ばせるところを話し合ったこともあり、今回のアルバムでは少し前のMACOを思い起こさせる要素が核になっているんです。

ーーアルバムのタイトルである『メトロノーム』は、振り幅を見せつつ、しっかりとMACOさんの声が軸にあることを示す、良いタイトルだと感じました。

MACO:ありがとうございます。自分自身がみんなのメトロノームになって、歌の世界やMACOが刻む時空にどんどん巻き込んでいきたいという意味を込めて付けました。みんなの気持ちが乱れているときにMACOの音楽が掛かると、嫌なことも忘れて、心地よさを覚える。そんなアルバムにしたいと思ったんです。大切な人と過ごす時間や、そこにしか流れない空気感も、メトロノームみたいだなって感じたのもきっかけかもしれません。

ーー軸はしっかりとある一方、全体的な印象としては様々な音楽性も取り入れていて、歌い方もバラエティに富んでいるように感じます。前作はバンドサウンド中心だったと思うのですが、今回は音作りにおいてどういった部分を意識したのでしょうか。

MACO:『FIRST KISS』も『love letter』も、秋から冬にかけてリリースしたアルバムで。今回もそうなんですけど、季節的には「Kiss」のような切ない楽曲がマッチすると思ったので、「Sweet Memory」をリード曲にしました。そこを軸に据えつつ、原点回帰のような気持ちでバンドサウンドではない方向を選んだんです。そうした結果、前向きな歌詞が多くなりました。

ーー確かに、『love letter』のリリース時には「リア充っぽくなった」と話していましたが、今回もかなり前向きですよね。しかもどこか大人の余裕みたいなものが出てきているようにも受け取れます。

MACO:26歳になって、悟った感じが出てるのかもしれません(笑)。

ーー視点も俯瞰的なものが多くなった印象です。

MACO:これまでは、「MACOのラブソングを聴いて、『恋したい』って思ってほしい」と色んなところで言ってきたんですけど、今回はもう少し踏み込んでいます。例えば「Sweet Memory」は友だちに恋をする歌だったり、「カタオモイ」という曲があったりと、MACOの楽曲を通して“疑似失恋体験”をしてほしいなと思って。恋人がいない人も曲を聴いて切なくなって、気付いたらMACOのメトロノームに巻き込まれていてほしいなと。

ーーリード曲が失恋ソングの「Sweet Memory」というのは、たしかに意外でした。そんな意図があったんですね。

MACO:2曲くらい候補があって、ずっと迷っていたんですけど、最終的にはこの曲になりましたね。サビにかけての息を飲む感じが好きです。切ないけど何度も聴かせる魅力があるというか。最初はただ単に片想いをしているだけの曲だったんですけど、その先を見込めない恋、結末がダメだと分かっている恋って一番悲しいなと思って。許されない恋をしている人たちにも届くといいなと思います。

■「これは運命だったんだ」と思いたくなる

ーー作家陣の音楽がバランス良く収録されているのも印象的でした。特にMUSOHさん、Takashi Yamaguchiさん、SHIKATAさんと、MACOさんの楽曲を語るうえで欠かせない3人のコンポーザーが散りばめられていて、その真ん中に持田雄介さんによるヒットシングル「恋するヒトミ」が堂々と立っていたり、ラストをMarchinさんが飾っている感じも、多面性を出しながら、そのどれもがMACOさんっぽくなっている要因なのかなと感じます。

MACO:MUSOHさんはMACOの良いところをいつも引き出してくれますし、ぐっさん(Takashi Yamaguchi)はMACOのイメージをご自身の世界観と混ぜて新しいものを見せてくれる。SHIKATAさんはシンガーソングライターということもあってか、MACOの声の絶妙な部分を突いてくるし、Marchinは自分が書きたいことを書かせてくれる曲を作ってくれます。

ーーせっかくなので、コンポーザー別にお話を聞かせてください。個人的に驚いたのはUTAさんの手がけた「NATURAL LOVE」で、この曲はトラップも取り入れていて、MACOさんのディスコグラフィにはない新境地を切り開いた曲です。確か、ご自身はこういう系の曲が好きでしたよね?

MACO:そうなんです! UTAくんはずっと一緒にやってみたかった作家さんで、リリースはしていないんですけど実はこの前にも1曲作っていたりして。今回は私のルーツであるR&B要素をがっつり入れたいと思って、彼にお願いしました。曲をいただいた時点で「絶対良い歌詞が書ける!」と確信しましたね。レコーディングも楽しかったです。サビは自分のキーよりも上のギリギリなラインを地声で歌うのが定番だったんですけど、この曲ではサビをほとんどファルセットで歌っていて、聴きどころになっていると思います。

ーーぐっさんことTakashi Yamaguchiさんの手がけたタイトルトラック「メトロノーム」は歌謡曲のような節回しも特徴的です。前回のインタビューで「90年代の空気感に近い楽曲はもっと増やしていきたいですし、上の世代の方に『こんな良い曲を歌っているのね』と感心してもらえるような曲が自分のなかから出てくるようになりたい」と話していて、まさにその通りの曲というか。

MACO:曲をいただいて、歌詞を書く前に聴き込んでいたんですけど、移動中に聴いていたら涙が止まらなくなって。歌詞もスラスラ書けましたし、この曲ができたことでアルバム全体のイメージが見えてきましたし、絶対に1曲目にしようと思いました。ぐっさんは歌詞についても意見をくれたりするので、その言葉も大事にしつつ作り上げていったんです。歌詞といえば、<何十億年も前から>というワードは結構色んな人からもツッコまれたんですけど(笑)、それくらい強い気持ちを入れたくて。人って、色んなことを運命に委ねたくなるじゃないですか。辛い時も悲しいときも幸せなことも、「これは運命だったんだ」と思いたくなるというか。今こうやって出会ってお話をさせていただいているのも奇跡的な確率だと思いますし、私、そういう事って生まれた瞬間から決まっていたんだと思うし、もう細胞レベルで決まっていると思っているんです。そういうことをこの曲で表したかったんですよね。

ーー続いて同じTakashi Yamaguchiさんによる「秋空」と「朝もお昼も夢の中も」は、彼の得意なサーフミュージック的ともいえる、アコースティックギター主体の温かい音色が響く楽曲です。

MACO:「朝もお昼も夢の中も」は、曲をいただいたときに安定した恋愛模様を書こうと思っていたんですが、ぐっさんから「じれったい感じを出してほしい」というリクエストがあって、“一緒に居たいけど居ることができない、だけどその距離も楽しい”みたいな、付き合う前のもどかしさを表現しました。「秋空」は、今年の夏を終えて「私、夏が嫌いだな」って思ったのがきっかけで生まれた曲で……(笑)。

ーーインドアな性格と出身地が影響してるのかもしれないですね(笑)。

MACO:多分そうです(笑)。これまでは無理して「夏だ!」って思ってたんですけど、夏の終わりが近づいてきて、高い秋空を見て「秋の空ってどこで見ても広くて遠いな。やっぱりこの時期が好きだ」と感じた体験から、歌詞は生まれています。あと、私、空を見るとなぜか泣きそうになるんですけど、好きな人といるときも同じ感覚に襲われることがあって。DREAMS COME TRUEさんが「LOVE LOVE LOVE」で歌っているような感覚に近いんですよね。

ーーそして、Takashi Yamaguchiさんのもう一曲、配信シングル『恋するヒトミ』のカップリング「二人は夢みるマーメイド」は、自身で制作したiPhoneムービーも話題になりました。こういう映像を作ろうと思ったきっかけは?

MACO:「二人は夢みるマーメイド」は友だちと海に行こうという曲なんです。映像でもラフな感じを出したいなと思ったので、綺麗に撮るのではなく、日常の風景をiPhoneで撮ることで、見ていただいてる方にも近さを感じてもらえるかなと考えて作りました。

ーー続いてMUSOHさんが手がけた楽曲について。リードトラックの「Sweet Memory」と「カタオモイ」のバラードパートを担っていますね。

MACO;「カタオモイ」は「Sweet Memory」と同じく成就しない恋を歌っています。その人といる時間だけが大切だけど、歌詞にあるように<好きでもない人と埋める時間は 虚しい>みたいなことって結構あるのかなと思っていて。片想いのときって理性が効かなくなるというか、思ってもみないことを言ったり、大丈夫じゃないのに大丈夫と言ったりするじゃないですか。そういう部分を沢山詰め込みました。

ーー次のMUSOHさん曲「PEEKABOO」は、アーバンなギターカッティングと太いベースラインによるダンスミュージックが同居した楽曲です。こういった路線を今回のアルバムに収録したのはどうしてでしょうか?

MACO:これまでなかった路線で、自分の中でも新境地と捉えています。サビの歌詞もシンガロングしやすくて。ライブで一回披露したんですけど、一体感が生まれて、歌っていて楽しい楽曲です。

ーーそしてSHIKATAさんが手がけたのは「僕だけのbaby」と、アルバムの終盤を飾る壮大なバラード「恋の道」の2曲。「僕だけのbaby」はこのアルバムのなかで一番前作『love letter』の雰囲気に近いのかなと感じました。

MACO:確かにそうかもしれません。この曲は自分の深い所にある気持ちを引っ張り出されるような感覚なんです。歌詞が書けないときは1週間くらい悩むんですけど、この曲はスラスラ書けましたね。

ーーMACOさんの楽曲にはときおり男性視点が登場しますが、そういった歌詞を書く時に気をつけていることはありますか?

MACO:“自分が歌っていない”という気分ですね。日常の中で起こる会話や出来事のなかで、嬉しかったものを覚えておいてあとでメモするんです。それを言っている・やっている側の立場になって歌詞にすることで、誰かが乗り移っているかのように言葉を書いていくようにしています。

ーー最後に、ご自身が作曲した「愛してる」について。これまでの自作曲と同じく、Marchinさんとの共作ですね。

MACO:Marchinが作ってくれたトラックに合わせて鼻歌で歌詞と一緒に作るんですけど、これもかなり早く書けました。プリプロの時に「これだ!」という感覚が降りてきて、直後のレコーディングで難なく歌えましたね。作曲をするときは、自分の根っこにある部分が出るんだと思います。譜割りも自分で決められるぶん、言葉を詰め込むことも多いですし。

ーー前アルバム『love letter』と同じく自作曲で締めるという流れですが、これは意図的なものでしょうか。

MACO:考えてはなかったですね。というのも曲順はギリギリまで悩んでいて、最終的に一番聴き心地のいいところに収めただけなので。この曲に関しては………私、これまで「生きる」ということを軽く考えていて。「いつまで生きているんだろうな」なんて思っていたし、未来よりも過去について思うことが多かったり、今のほうが大切だったり。でも、「愛してる」という言葉まで行き着くってことは、「生きてる」という実感に繋がるのかなと思えたんです。これに関しては、父が亡くなったことも大きいかもしれません。

ーー恋愛観だけじゃなくて、死生観も込めた歌詞になっているからこそ、より言葉や歌に深みが出ているんですね。

MACO:「生きているからこういう気持ちになれる」ということを今まで見落としていたんだと気付かされました。なので、このアルバムでは一番、素の自分自身が出ている曲になったと思います。そんな感覚を歌詞にすることはこれまでなかったので、だからこそこの曲で締めくくりたいなという気持ちになりましたし、1曲目の「メトロノーム」とも繋がっているなと。

ーー確かに、両方とも6分超えの楽曲ですし、何かしらの共通点を感じます。そういう価値観を踏まえてアルバムの楽曲を捉え直すと、小さい幸せの大事さを歌っているものが多いような気がしますね。

MACO:多くは望まずに、その人が側にいればいいと思うようになってきましたね。がむしゃらな感じはなくなってきていますし。そこまでリラックスして作れたのも、作家のみなさんが作ってくれた楽曲があってのことだと思います。

ーーそのリラックスが反映されてか、今まで以上に幅広く、曲に寄り添って歌い方を変えているような印象を受けました。作品に対しての表現力が豊かになっているというか。

MACO:幅を広げることはかなり意識しました。「恋するヒトミ」も自分の音域から少し高いくらいの曲で、最初は不安でしたけど、ライブを重ねていくうちに伝えたいことと歌い回しが固まってきたんです。制作時も自分でボーカルディレクションをしていたので、空気の入れ方や歌い方は自分にしかわからない細かいところまで作り込んでいますね。「Sweet Memory」はサビとAメロで声をガラっと変えていたり、「愛してる」や「メトロノーム」では語りかけるようにしたり。自分で自分の声の良さを最大限引き出すことができたと思います。

ーーそんな楽曲群を『MACO メトロノームツアー 2018』や今後のキャリアではどう表現していきたいですか?

MACO:みんな聴き込んできてくれると思うので、心に刻み込むように、忘れられないライブにしたいです。前回の悔いもここで晴らしたいですね。楽曲に関しては、「PEEKABOO」や「僕だけのBaby」のように、みんなで歌える曲で盛り上がりたいですし、今回はホール会場なので、「Sweet Memory」もピッタリだと思います。こうやってどんどん大きいところでやっていって、色んな曲を歌えるように、2018年も頑張りたいですね。