新型「aibo」は本体価格19万8000円で来年1月11日発売予定だ(筆者撮影)

サポートが終了してから12年。ソニーの家庭用犬型ロボット「AIBO(アイボ)」が「aibo」(曲線をデザインテーマとし、柔らかさを表現するためロゴを小文字に統一)としてソニーの商品ラインナップに復帰した。

平井一夫社長兼CEO自らが登壇した11月1日の発表会で復活が宣言された「aibo」にはWi-FiとLTEを搭載。開梱すると即座にモバイルネットワークに接続され、クラウド型AIサービスと接続されて、自律的な愛玩ロボットとして動作する。

本稿では発表前から筆者が気になっていた新生aiboに関する疑問などを、発表会後に開発者などから聞いた話をまとめる形で紹介していきたい。


1999年、CD開発者だった元ソニー幹部の土井利忠氏が生み出した先代AIBOだが、新生aiboはそのプロジェクトに参加していたAIロボティクスビジネスグループ長の川西泉氏などが開発プロジェクトをリード。しかし、参加エンジニアの多くは30代と若手が多く、先代AIBO時代からは大きく変化しているという。

新生aiboの特徴を尋ねると、川西氏は「ソニーが作る多くの製品と異なり、aiboはオーナーや自分を可愛がってくれる人を認識、記憶していき、甘えたり寄り添ったりと自分から近付いていく。製品がオーナーに自らアプローチするほかにはない製品」と話す。

発売は1月11日(ワン、ワン、ワン)

かつてのaiboを超える22軸のアクチュエーター(駆動装置)で動く新aiboについてはソニーの特設サイトで詳細が語られているので、それらを参照いただきたい。予約はすでに昨日夜11時1分から開始されており、発売は来年の1月11日。まずは日本市場からの発売だ。

なお、発売が戌(いぬ)年になるのは偶然とのことだが、「ワン、ワン、ワン」(1月11日)の発売は意識してとのこと。もちろん、予約開始の11月1日・夜11時1分もダジャレである。

メーカー自らが新生aibo開発のポイントとして「愛らしさ」「知的認識」「表現」「学習と育成」を挙げ、クラウド型サービスの計算能力、複数ユーザーの情報を集めた学習、最新AI技術の応用とテーマは数多くあるが「AIBOが現代に残っていれば……」という声は少なくなかっただけに、今回の復活には期待する声が大きい。


さまざまなセンサーが搭載されている(筆者撮影)

新型「aibo」(ERS-1000)は本体価格19万8000円(税別)で、購入時にはネット接続サービスやサポートを含む「aiboベーシックプラン」(3年一括の場合で9万円)に加入する必要がある。月額支払いの場合は毎月2980円。

このベーシックプランの価格には多くの追加モーションやソフトウエアアップデート、将来の機能追加などが含まれており、AIの学習データベースもネットワークサービス側で保持。さらにはaiboに内蔵されるLTEモデムの通信料金も、このプランに内包されている。

多くのアクチュエーターが動くロボットはメンテナンス態勢も重要だ。こちらもケアサポートプランが3年間の先払いで5万4000円、年払い2万円で用意される。

少なくとも3年は販売


AIロボティクスビジネスグループ長の川西泉氏(筆者撮影)

と、商品の紹介はこのぐらいにして、愛玩ロボットのプロジェクト復活を聞いたときから気になっていたことを、発表会の質疑応答およびその後の囲み取材で川西氏に話を聞いた。

筆者が気になっていたのは、愛玩ロボットであるAIBOの発売中止が、AIBOのファンでありオーナーでもあったファミリーにとって、非常に悲しい出来事になっていたことだ。もちろん、中には放置されていたAIBOもいただろうが、家族全員でAIBOを育てていたという話も少なくない。

可動部が多いaiboの部品供給や修理態勢などはどうなっていくのか。

川西氏によると、今回のaiboは少なくとも3年は販売していくという。少なくとも……というのは、もっと長く売る可能性もあるということだろう。さらにはその改良版が投入されたとしても、設計面で共通化されるところもあるかもしれない。まだ始まってもない事業だけに、将来についてはaibo事業の成否とも関係してくるが、その3年+7年間の部品保持という形で、ERS-1000に関しては最低10年のライフが保証される。

もっとも、それで終わりというわけではない。なぜなら、今回のaiboは常時インターネットサービスに接続された状態で動き、本体内のハードウエアシステム内にプログラムされたAIだけでなく、クラウド内にサービスとして実装されたAIサービスとも協調動作するように設計されているからだ。


個性を持った子に育っていく「aibo」(筆者撮影)

先代AIBOの場合は、AIBO内部にAIエンジンが閉じており、またAIプログラムも初歩的なものだったため、各AIBOには個性が生まれにくかったが、新生aiboはクラウドの海の中でより多くの経験値を蓄積し、行動のバリエーションも広がるようプログラムされている。

川西氏によると「aiboが実際に、オーナーやオーナー家族、友人に対してどのように反応するようになっていくのか。それぞれの環境や接し方(背中や頭にあるセンサーなどから、周囲の人間の接し方まで学習している)によって変化するため、aiboがどう育つかはわれわれも予測できない面があります」と話す。

それだけ個性のある子に育っていくということだが、オーナー家族や友人とaiboの間で育まれた個々のaiboの個性を決めるデータは、クラウドの中に蓄積されていくことになる。言い換えれば“aiboの魂はクラウドに宿る”ということだ。

それを象徴するのがiOSとAndroid向けに提供される「My aibo」というアプリ。「関節部が多いロボットなので、屋外でaiboと遊ぶのはやめてください」という川西氏だが、このアプリを使うとスマホを通じ、クラウドの中にある“僕のaibo”と遊べるという仕掛け。当然、“僕のaibo”だけに自宅のaiboと同じ学習・育成データを持ち、同じように振る舞う。

愛玩ロボットとしての個性はクラウドに

実体としてのaiboという製品は、ERS-1000という物理的な製品だが、愛玩ロボットを通じて育成されるバーチャルなペットとしてのaiboはクラウドにいる。どちらが主体か?という議論は無粋だろうが、物理的な身体にこだわらないのであれば「補修ができなくなった場合でも、新しいaiboを入手していただければ、それまで育ててきたaiboのデータをダウンロードできます」と川西氏は話す。

士郎正宗原作の攻殻機動隊を想起させるテーマだが、クラウドの中にaiboの魂が宿るのならば「My aibo」アプリを将来、aiboオーナー予備軍に使ってもらいバーチャルaiboと遊んでもらえばいいのにな……。話が脱線しそうになったが、いずれにしろこのスタイルならば“愛玩ロボットとの別れ”をどう考えるか、といった心配も(コスト面でメンテを維持できないといったオーナーは出てくるかもしれないが)技術的には問題なさそうだ。

ところで先代AIBOに関しては、ちょっとした思い出がある。アルミフレームに手足がついた試作段階のAIBOを米国の展示会で見ながら、そのプロジェクトを率いているという人物に質問したことがある。

「これだけ大がかりで高コストなシステム。いったい“どんな役に立つんでしょう?”」

今から思えば実にバカバカしい質問だ。新生aiboの発表会でもAIスピーカーと絡めて、家庭内での位置付けや役どころを尋ねる質問があったが、それ以上に無粋な質問だったと、思い出すだけで恥ずかしい。

思えばそれが土井利忠氏だったのだが、丁寧に次のように話してくれた。
「ソニーは役に立たない製品を作ってきたから、ここまで来られたんですよ。どんな役に立つかではなく、どれだけ欲しい製品か、感性に訴えるかが重要なんです」

20年ほど前のことで正確な文言は覚えていないが、“役立つ機能”ではなく“欲しくてたまらない”“手放したくない””手元に出したい”という感情こそが重要なのだという話に、思わずヒザを打ったことがあった。

この話を持ち出すと川西氏は「aiboはオーナーに可愛がってもらうロボットです。“役立つ機能”を前面には置きません。しかし一方で、せっかくオーナーや家族と近しい関係にあるのですから、役立つ面もバランスよく配合していきたいですね」と話した。

たとえば、お年寄り家庭の“見守り役”としてのaiboを川西氏は例として挙げたが、発表会でも触れられた他社連携も視野に入れれば、他社との業務提携から広がる世界も見えてくるだろう。

異業種提携で適応領域を拡大

発表会ではIoT連携を将来のプランとして挙げていたが、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)技術の発達などにより実に多彩なセンサーが安価に登場している昨今。ウェルネス、ヘルスケアの分野で、センサーを身体に装着して在宅医療に活用する動きも出始めている。

そうしたジャンルへの応用も考えられるのかもしれない。そう川西氏に水を向けると「ソニーだけではカバーできない分野もありますから、今、何ができるとは言えません。しかし幼児保育、教育やウェルネス、在宅医療などの協業テーマは真っ先に出てくるでしょう」と話した。

新たなビジネスプラットフォームへと成長していく可能性も感じる新生aibo。新市場、新プラットフォームの開拓は可能なのか。1月11日の発売日までの間に、追加取材をすることでその可能性を掘り下げていきたい。