J2優勝を達成した湘南は、調篤帖蔽羆)のもと常に試合内容に目を向けてシーズンを戦ってきた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[J2リーグ39節]湘南1-1岡山/10月29日(日)/Shonan BMWスタジアム平塚

 試合終了の長い笛が雨空に響く。笑顔と涙と、選手たちの様々な表情が激しい風雨のもとで混ざり合う。J2リーグ39節、首位の湘南は岡山との一戦に引き分け、勝点1を積み上げてリーグ優勝を決めた。
 
 苦しい展開だった。限られたチャンスをゴールに結び、前半のうちに先制したものの、後半相手にシュートの山を築かれ、終盤に追いつかれもした。だが攻勢にさらされても、GK秋元陽太を中心に全員で身を挺す。勝つために守るべき時間帯を受け止める戦いは、チームの今季の成長を象徴するようでもあった。
 
 ゲームキャプテンを務める菊地俊介は言う。
 
「今年は1点差をモノにする試合が多かったし、どちらに転んでもおかしくないゲームがシーズンを通してたくさんあった。今日は最後1点取られてしまいましたけど、その後やられてもおかしくないピンチでスライディングするなど、みんなで身体を張って守った。ああいうプレーが今年の湘南を象徴するシーンだと思う」
 
 昨季のJ2降格を経て「ゼロからのスタート」を掲げた今季。だが主将の高山薫や副将の菊地、2014年からの歩みを知る藤田征也らがシーズン序盤に怪我で離脱を余儀なくされる。開幕から勝点こそ積み上げたものの、相手の湘南対策は進み、また6節・讃岐戦をはじめ幾度か0-3の大敗を喫したように、勝利と敗北は紙一重で隣り合っていた。
 
 苦しい日々のなかで、チームはしかし者貴裁監督のもと、勝敗ではなくゲームの内容を常に見つめ、反省と修正を粛々と繰り返した。そうして攻守に仕掛ける自分たちのスタイルを育みながら、状況判断や勝つための振る舞いを身に付けていく。出場にかかわらずトレーニングの温度は高い。主将や副将の不在をそれぞれが受け止め、勝負に対する責任感を個々に逞しくした。
 
 もしも彼らが言い訳を探すようなマインドであれば、こんなふうに逆境を覆せはしなかっただろう。例えば、岡本拓也は率直に振り返っている。
 
「特に前半戦はきつかった。薫くんや俊くんや征也くんがいないなかで、どうしていかなければいけないか、みんなが自分に矢印を向けて考えた。僕自身、自分がチームの勝利への責任を負っていかなければいけないと思いました」
 敗戦もまた彼らに得難い意味をもたらした。たとえば0-3で敗れた24節の山形戦だ。立ち上がりから積極性を欠き、球際も後手を踏んで、相手の気持ちの強さばかりが引き立ったこの試合を経て、チームはオフ明けからビーチトレーニングで追い込んだ。目の前の一戦にすべてを注ぐ自分たち本来の姿勢をあらためて見つめ直した彼らは、以降12試合負けなしで勝点を伸ばした。
 
 指揮官が目を細めるようにして言った。
 
「自分たちは上手いとか、やれるという気持ちよりも、もっと上手くなりたいんだという気持ちが今年のチームは強い。トライ&エラーを続けて大きくなっていくという点で言うと、今年は過去のJ2の2シーズンよりも抜けている」
 
 厳しい状況とまっすぐに向かい合い、自覚を高め、スタイルとともに勝つための戦いを全員で深めた。この日の笑顔と涙と勝点1に、彼らの貴い道のりが映えていた。

取材・文:隈元大吾(フリーライター)