今回は、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、赤色が特徴的なルビーについて(写真:chiiro / PIXTA)

モノ情報誌のパイオニア『モノ・マガジン』(ワールドフォトプレス社)と東洋経済オンラインのコラボ企画。ちょいと一杯に役立つアレコレソレ。「蘊蓄の箪笥」をお届けしよう。
蘊蓄の箪笥とはひとつのモノとコトのストーリーを100個の引き出しに斬った知識の宝庫。モノ・マガジンで長年続く人気連載だ。今回のテーマは「ルビー」。あっという間に身に付く、これぞ究極の知的な暇つぶし。引き出しを覗いたキミはすっかり教養人だ。

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1. ルビーは、宝石のなかでも財宝・宝飾として評価の高いものを指す「貴石(precious stone)」のひとつ

2. ルビーの語源はラテン語で「赤」を意味する「rubeus」

3. 古代ローマでは「カンブルクルス」、ギリシャでは「アクスクラックス」=「燃える石炭」と呼ばれた

4. サンスクリット語では「宝石の王」を意味する「ratnaraj(ラトナラジュ)」という名で呼ばれていた

5. ルビーは和名で「紅玉」

6. 「ルビー」は宝石としての名称で、鉱物としての名称は「コランダム(corundum)」

7. コランダムは、酸化アルミニウムの結晶からなる鉱物で、鋼玉とも呼ばれる

8. ルビーはダイヤモンドに次いで高い硬度をもつ鉱物

9. 鉱物の硬さを示す「モース硬度」でルビーは硬度9

10. 宝石に適さない不純物の多いコランダムは、金属の研磨やレーザー光線の光源など工業用に利用されている

11. ルビーは耐摩耗性に優れるため、機械式腕時計の回転体の軸受けなどの部品にも使用される。「石」「ジュエル」と呼ばれ、主に人工ルビーが17〜25個ほど使われる

ルビーとサファイアの関係


12. ルビーとサファイアは、元は同じ鉱物。クロムという成分の含有量でこのふたつの石は区別される

13. 主成分がアルミニウムの宝石は、赤以外のものはすべてサファイアと呼ばれる

14. クロムの含有量0.1%ほどの薄い赤色の場合には、「ピンクサファイア」「パープルサファイア」となる

15. クロムが5%を超えると宝石としては使用できず、「エメリー」という灰色の工業用研磨剤になる

16. ルビーの“石言葉”は「熱情」「純愛」など

17. ルビーは7月の誕生石

18. ルビーは牡羊座の星座石、火曜日の曜日石でもある

19. 結婚40周年の記念日は「ルビー婚式」

20. 古代インドでは、ルビーはその石の中で燃え続ける不滅の炎により赤くなると考えられていた

21. 聖書のなかにもルビーについて4カ所言及がみられる

22. ルビーの採鉱に関する最古の記録は2500年前に遡り、スリランカで「rathu kata」 と呼ばれていた

23. スリランカ産のルビーが西洋のジュエリーに登場したのは、エトルリア(紀元前600〜275年)が最初

24. 紀元前10世紀にはソロモン王がシバの女王にスリランカ産のルビーを贈り、心を射止めたという伝説も残る

25. 古代ギリシャ・ローマでは軍神マルスが宿る護身の宝石とされ、戦場の兵士たちは病気・呪い・悪運などを防ぐお守りとしてルビーを身につけたという

26. 古代ビルマの戦士たちもルビーを皮膚の中に入れて、戦いに勝つためのまじないとしたと伝えられる

27. 古代インドのアーユルヴェーダにおいてはルビーの粉末を不老長寿の秘薬として用いたという記録も残る

28. 中世ヨーロッパでは、愛と情熱の象徴として婚約指輪に用いられた

29. 東洋ではルビーは「太陽の宝石」だと信じられていた

30. ルビーの主要産出国はミャンマー、スリランカ、タイ、ベトナム、カンボジア、タンザニアなど

価格高騰の傾向にあるミャンマー産のルビー

31. 最も高値で取引されるのがミャンマー産のルビー

32. ミャンマーのなかでもとくにモゴック鉱山で採取されるルビーは高品質かつ希少で最も価値が高いとされる

33. 近年は政府による鉱山の国営化や紛争の影響でミャンマー産ルビーの供給量は不安定化、価格高騰の傾向にある

34. 2000年以降、新たな産地として中国やマダガスカルで鉱山が発見されている

35. 最近ではグリーンランドの後退した氷棚から広大なルビー堆積層が発見されている

36. 2002年にはケニアのワセージス川でもルビーが発見されている

37. ルビーは約2億5000万年という歳月を経て、ようやく宝石としての形を成す


母岩に埋もれるルビー原石(コランダム)

38. ルビーの原石は玄武岩、変成岩、大理石等の岩石を母岩として育まれる

39. 母岩によっては、クロムのほかにチタンやイオンなどの不純物成分が取り込まれ、黒味や紫味を増す。ルビーが産出地により色の違いが現れるのはそのため

40. ミャンマーでは、海底に沈殿した堆積岩がユーラシア大陸とインド亜大陸に挟まれて大理石(接触変成岩)が生み出された。ミャンマーのルビーはこの大理石の中で育まれ、非加熱ルビーとして扱われる原石が多く産出される

41. ルビーの価値に影響する最も重要な要素は、カラー

42. ルビーの色で最高評価を受けるのは「ピジョンブラッド」(鳩の血)と呼ばれる深い赤色のもの

43. 19世紀より英国の宝石商がミャンマー(当時のビルマ)で採掘されたルビーのうち鮮やかで深い赤色、かつ強い蛍光性を持ったルビーを「ピジョンブラッド」と表現した

44. ピジョンブラッドは約1%という絶妙なクロム含有量により美しい赤を呈する

45. 主にタイで産出されるルビーの赤色は「ビーフブラッド」と呼ばれる

46. 「ビーフブラッド」は鉄分が多く含有されているため、ピジョンブラッドよりも落ち着きのある赤色が特徴

47. 主にスリランカ、ベトナムで産出されるルビーの赤色は「チェリーピンク」と呼ばれる

48. 「チェリーピンク」はルビーのなかでもクロム含有量が少なく、透明度の高い赤、ピンクに近い色のもの

49. ミャンマーのルビーの年間産出量は約4万カラット

50. ルビーの年間産出量は世界中合わせても50万カラット程。対してダイヤモンドの年間産出量は約1500万カラット、サファイアは約2000万カラット

赤い色の元であるクロム自体が希少

51. ルビーの赤い色の元であるクロム自体が希少で、地殻では鉄の500分の1程度しか存在しない

52. ルビーは世界4大宝石のひとつに数えられる。4大宝石とはダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド

53. タイ、ミャンマーはルビーを「国石(国家を代表・象徴する石)」としている

54. ルビーの研磨と取引の中心地はタイ

55. ルビーの価値を決める要因として「カラー」のほかに「明度」や「彩度」がある

56. ルビーの内包物(インクルージョン)は天然の証であり、美しさを損なわない限り「個性」としてとらえられる

57. インクルージョンは母岩の影響を受けるため、ルビーの原産地・処理の有無などを判定する手がかりになる

58. かつて海だったミャンマー産ルビーは、カルシウム成分がインクルージョンとして見られるのも特長のひとつ

59. ルビーのなかには光をあてると星のような6本の光の線が浮かぶものがあり「スタールビー」と呼ばれる

60. このスター効果は宝石の中に交差した細かなルチルの結晶が光を反射するアステリズムにより生じる


赤の色味が美しく発色するよう加熱加工されるのが一般的(写真:danilo_vuletic / PIXTA)

61. ルビーは、赤の色味が美しく発色するよう加熱加工されるのが一般的

62. ルビーの内外にあるミクロな溝を人工のオイルで埋めることで透明度を改善するガラス充填法も用いられる

63. ごく稀に、掘り出された天然の状態ですでに美しい赤色のルビーが存在する。「非加熱ルビー」「ノンヒートルビー」と呼ばれ、宝石用ルビーのわずか1%程度しかない

64. 非加熱ルビーは特有の赤紫色蛍光性を有し、紫外線があたると赤紫の優しい蛍光を発する

65. 18世紀以前、ルビーだけでなくガーネットやスピネルなど赤い鉱物はすべて「ルビー」として扱われた

66. さらに古い時代には、ルビーやガーネットなど赤い石はすべて「カーバンクル(ザクロ石)」の名で呼ばれていた

67. 昔からルビーとして受け継がれたものが近年になって違う石であったことが判明した例がある。なかでも有名なのは英国王冠の中央を飾る「Black Prince's ruby」が実はスピネルだった件

68. 260カラットを超える世界最大のルビーとして、ロシアのロマノフ王室が保有していた「いちごの彫刻」もその一例。1925年に旧ソ連の鉱物学者によりルベライトであると判明

69. ルベライトはトルマリンのなかで鮮やかな赤色のもの

世界で最も大きいルビーの結晶は?

70. 「ヒクソン・ルビー・クリスタル」は世界で最も大きいルビーの結晶のひとつで196.10カラット。1978年にLAの自然史博物館にフレデリック・ヒクソンによって寄贈された

71. ニューヨークの自然史博物館には100.32カラットの「デロング・スター・ルビー」が所蔵されている

72. 「デロング・スター・ルビー」は1964年に盗難に遭い、25000ドルと引き換えを条件に犯人が指定したフロリダの公衆電話ボックスから回収されたエピソードをもつ

73. ニューヨークの自然史博物館では116.75カラットの深い赤紫のスタールビー「真夜中のスタールビー」も所蔵

74. 世界最大級138.7カラットの「ロサー・リーブス・ルビー」は広告業界の大立者ロサー・リーブスがスミソニアンに寄贈

75. 国立自然史博物館の宝石館には423カラットの「ローガンサファイア」や「ホープダイヤ」なども所蔵されている

76. 世界最大のルビーとされるのは1777年スウェーデン王がロシアのエカチェリーナ2世に贈った414カラットのルビー

77. このルビーはロシア皇帝の宝冠に飾られていたが、ロシア革命以降、その行方は不明となっている

78. 英国の名門宝石商にしてモゴック鉱山開発を手がけたエドウィン・ストリーターは「ミスタールビー」と呼ばれる

79. ストリーターが1875年自ら採掘してロンドンに持ち帰った48カラットの「マンダレールビー」はブローチとなった

80. 「マンダレールビー」は後にオークションで米国大手宝石商に買われ、現在はセレブの家宝となっている

81. 2015年香港のオークションでミャンマー産ルビー「クリムゾン・フレーム」が約22億3000万円で落札された

82. この「クリムゾン・フレーム」は15カラットのピジョンブラッド。1カラットあたりの価格約1億5000万円となり、宝石の価格として世界最高額

83. 2015年、サザビーズオークションでは25.59カラットのルビーの指輪が、ルビー最高額約36億円で落札された

84. 世界一高い靴は『オズの魔法使い』50周年記念に製作されたドロシーの魔法の靴。4600個のルビーと50カラットのダイヤモンドでデコレーションされ、約3億円

85. 世界一高価なチェスセットは金や宝石がふんだんに使われたもので約9億8000万円。とくにキングの駒には73個のルビー、146個のダイヤモンドがあしらわれている

86. ヴィクトリアズ・シークレットのショーには52カラットのルビーを中心に宝石をあしらった1000万ドルのブラが登場

87. ふり仮名を表す「ルビ」の語源は宝石の「ルビー」

88. これはかつて英国の印刷業界で文字の各サイズを宝石名の通称で呼ぶ習わしがあり、日本でふり仮名に用いる文字のサイズに相当する5.5ポイントの文字を「ruby」と呼んでいたことに由来する

89. 「Ruby」は豪州や英国で女性の名前として人気

90. 鮮やかな紅色を表す「Ruby(またはRuby Red)」は、西洋で1572年から使われる古い色名

インドでは心臓に近い左側につけるとよいとされるが…

91. 中世のヨーロッパでルビーは体の右側に身につけると、そのパワーを受けられると言い伝えられていた

92. ルビーの赤い色は夏の紫外線のもとで最も美しく輝くといわれ、「夏の宝石」と称される

93. ルビーは史上初めて人工的に作ることに成功した宝石

94. 1904年にフランスの科学者オーギュスト・ヴィクトル・ルイ・ベルヌーイが火炎溶融法による合成ルビーを作成

95. この技術により合成ルビーが大量生産され、当時は天然石と区別されることなく市場に流通した

96. 家庭用のアルミホイルやアルミ缶などからルビーを作ることが可能。アルミ缶1缶から作られるルビーは約18g

97. 人工ルビーの値段は1カラットあたり100円程度

98. 海外の土産物店で天然ルビーとして販売されているものは、クラウン部分にサファイア、パビリオン部分に合成ルビーを張り合わせたダブレットの例が多いので要注意

99. ルビーやサファイアなど貴石には鑑別書が発行される。鑑別書は宝石の種類と天然であることを証明するもの

100. 地球から1040光年離れた惑星「HAT-P-7b」ではルビーやサファイアの雲が存在する可能性があるとの研究成果を、英国ウォーリック大学が2016年に発表した

(文:森谷美香/モノ・マガジン2017年11月16日号より転載)

参考文献・HP/『宝石と鉱物の文化誌』(原書房)、『ずかん宝石』(技術評論社)、ほか関連サイト