筒井義信●1954年、兵庫県出身。京都大学経済学部卒業後、日本生命保険に入社。長岡支社長、企画広報部長、総合企画部長、常務、専務などを経て、2011年4月に代表取締役社長に就任。

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“仕事以外の世界”をもつにはどうすればいいのか。仕事や私生活での「モヤモヤ」を、識者が解決する「プレジデントウーマン」の好評連載。今回の回答者は筒井義信さん(日本生命 代表取締役社長)です。筒井さんは「たしかに仕事ができるだけでは通用しない」といいます。その理由とは――。

【今回のご相談】
仕事が楽しくて、日々残業している私に、上司が「仕事ができるだけじゃ、今に通用しなくなるぞ。もっと遊んで、仕事以外の世界をもちなさい」と忠告してきました。「遊びが人生を豊かにし、それがやがて仕事にも生きてくる」と。人生を豊かにする遊びとは何ですか。仕事だって十分人生を豊かにしてくれると思うのですが……。[32歳・サービス・raccoon]

■「仕事ができるだけでは通用しない」

「仕事だって人生を豊かにしてくれる」というのは、おっしゃる通りだと思います。1日のうち、家で過ごす時間と職場で過ごす時間を比べると、寝ている時間を除けば、圧倒的に後者のほうが長い。そこにあなたはやりがいを感じているのですから、すばらしいです。

一方で、「仕事ができるだけでは通用しない」というのもその通りで、年齢を重ねてキャリアアップしていくと、社内の人はもちろん、取引先から信頼、あるいはリスペクトされることも重要になってきます。

リスペクトされるには、視野を広げる、懐を深くする、すなわち「総体的な人間力」を高めなければならない。そのために、自己形成や自己研鑽につながる遊びをしなさいと、あなたの上司は言っているのでしょう。

実は、私自身も若いころは仕事人間で、「仕事ばかりしとったらあかんぞ。もっと遊べ」と、よく上司に言われていました。

実際、遊びのような時間から仕事につながるものを得てきたのは確かです。その1つが「飲みニケーション」ですね。やはり、人は一緒に飲み食いすると、仕事中には見えてこない本音が出てくるもので、飲みながら多くの人と信頼関係を深めることができました。もともと酒好きで、人脈形成のために飲んできたわけではありませんが、結果的に、その後の仕事につながり、私自身の自己形成に寄与したものと思います。

■自然とのめりこめるものが理想的

それから、休日はときどき吉本新喜劇を見ています。単純に笑ってストレス発散している、ということもありますが、漫才や芝居を見ていると、知らず知らず「間(ま)」というものが身につくようで、大勢の前でスピーチをするとき、意外と効果があります。大事なことを言う前に、ちょっと間を取る。すると、上の空で聞いていた人がパッと注目してくれたりします(笑)。

好奇心をもって続けられる遊びなら、なんでもいいと思います。ただ、やろうかやるまいかと考えたとたん、それはもう「マスト」になってしまい、限界がくる。自然とのめりこめるものが理想的ですね。習い事を再開するのもいいし、忙しくて時間がないなら、15分の散歩でもいい。

町の風景や道行く人を眺めながら、そこで目に留まったものが、直接的あるいは間接的に、仕事の糧になっていくかもしれませんよ。

※筒井義信さんの回答は今回が最終回となります。ご愛読ありがとうございました。

(日本生命 代表取締役社長 筒井 義信 構成=中津川詔子 撮影=遠藤素子)