仏ロシュシュアールの隕石痕から掘り出した円柱状の岩石を持つ宇宙地質学者のフェリペ・ランバート氏(2017年10月17日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】フランス中部にあるいつもはひっそりと静まり返っているこの町には9月初め以来、町周辺で地面に穴を開け、円柱状の岩石を掘り出している工業用掘削機の音が響きわたっている。

 その理由は、人口3800人の町ロシュシュアール(Rochechouart)とその中世の城が、隕石(いんせき)痕の上に築かれているからだ。

「星がつけた傷跡を意味する隕石痕は、大規模な隕石衝突によって残された跡のことだ」。そう説明するのは、宇宙地質学者のフェリペ・ランバート(Philippe Lambert)氏。同氏は隕石痕の謎の解明を試みている研究チームの一員だ。

 ロシュシュアールの隕石衝突孔(クレーター)は、2億年以上前に地表に激突した巨大隕石によって形成されたもので、19世紀に発見されて以来、科学者らの興味を引きつけている。

 有名なカナダ人天体物理学者のユベール・リーブズ(Hubert Reeves)氏は2011年、自身も立ち上げに携わった調査プロジェクトが進められているこの地を訪れ「極めて貴重な情報がわれわれの足の下にある」と熱く語った。

 それ以降、地質学者、古生物学者、宇宙生物学者などの世界十数か国の科学者から、隕石を詳細に調査するための申し込みが多数寄せられている。

 フランス国内で唯一知られているこの隕石痕を1977年に書いた博士論文で取り上げたランバート氏は現在、仏ロシュシュアール隕石痕研究国際センター(CIRRI)の所長を務めている。

 同センターは、この地で実施される史上初のボーリングと掘削調査を組織している。

 隕石痕周辺の自然保護区の監視を行っているピエール・プパール(Pierre Poupart)氏は「約2億年前、ジュラ紀より以前のまだ地球の大陸が分裂すらしていない時代に、直径約1キロ、重さ60億トンの隕石がここに激突した」と話す。「隕石は時速約7万2000キロの速度で飛来した」

 落下した隕石を蒸発させたほどの衝突の衝撃は、広島型原子爆弾数千個分に相当し、半径約200キロ以内の生物すべてをほぼ確実に死滅させ、地形を永久に変えてしまった。

 ロシュシュアール隕石痕は地表にかなり近い位置にあるため調査がしやすいとされている。ランバート氏は「今歩いているのは、隕石痕の上だ」「そこに到達するのに、土の層を掘削する必要すらない」と話す。

■自然の実験室

 11月末まで計画されているボーリング作業では、50ヘクタール中の異なる8か所で、地下1〜120メートルのコアサンプルを20個採取する予定だ。

 ランバート氏によると、仏政府と欧州連合(EU)から資金供与を受けている総費用60万ユーロ(約8000万円)のこのプロジェクトは、長い冒険の始まりになる可能性を秘めているという。同氏は「野外の実験室と呼ぶにふさわしいことを証明するためのあらゆるものが、ここにある」とつぶやいた。

 プロジェクトをめぐり一部の科学者は、地球に飛来する隕石の形成過程や、それによって明らかになるかもしれない宇宙空間での隕石の進化など、未解決の謎の解明が進むことを望んでいる。

 他方では、地球上の生命の発生や、生命の基本構成要素のうちのどれが宇宙からもたらされたかなど、謎を解くために必要な手がかりとなる化学的痕跡の発見にも期待が寄せられている。

 また地質学者らは、これほどまでに地殻を激変させた衝撃において、岩石層内に保持されていた水がどの程度解放された可能性があるのかに関心を抱いており、その一方で古生物学者らは、生命を大量に死滅させた可能性のある衝突事象が、同時にどれだけ新たな生物形態が出現するための状況を作り出すことに寄与したのかを調べたいとしている。

 プパール氏は「これは生命の秘密が足の下にあるというわけではない」と話す。「だが、2億年前にここで起きたことを研究すれば多くのことが分かる可能性がある」と付け加えた。また同氏によると、ロシュシュアールの岩石コアについては、固定、ラベル貼付、データ記録などの作業が終了すればすぐに世界中の研究者が利用できるようになる見込みだという。

 フランス国立科学研究センター(CNRS)は「ロシュシュアールの隕石痕が国内外の研究に恩恵をもたらす自然の実験室となることを望む」としている。
【翻訳編集】AFPBB News