江戸時代グルメ雑学(9) 焼き芋の歴史:江戸の焼き芋屋さんはまるでファストフード店

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枯れ葉を集めてたき火をし、その中にサツマイモを入れて焼き芋を作る…昔と違ってたき火を大っぴらに出来ない現代であっても、どこかノスタルジーを感じますね。それもそのはず、じっくりと焼き上げたサツマイモは江戸時代から続く伝統的なおやつでもあったのです。今回は、前回に続いて江戸時代で起こったサツマイモ食文化について紹介します。

煮物に麺料理…江戸時代のサツマイモ料理はレパートリー豊富

救荒作物(凶作などに備えて作られる農作物)として沖縄経由で海外から渡来したサツマイモは、甘藷先生・青木昆陽や名の由来となった薩摩国の人々など多くの人の試行錯誤で諸藩に広まりました。

凶作に強いだけでなく収穫が多く、救荒作物ゆえに高価では無いが、味は決して悪くないと来れば調理法を考えるのが人情と言うもので、江戸時代には様々なサツマイモ料理が生まれました。

干し芋や蒸かし芋などシンプルなものだけでなく、芋と長ネギを酒と塩で煮込んだ『なんば煮』、そば粉の代わりにサツマイモと山芋の粉を使った『六兵衛』と言う麺料理、そして当時の人気料理だった天ぷらの技術を応用した揚げ物と様々です。

こうした現代の料理顔負けのレパートリーは『甘藷百珍』『年中番菜録』と言ったレシピ集に掲載され、料理人や家庭の主婦に愛読されましたが、何れの本でもサツマイモが人気の食材として取り上げられているのも、人気の高さを伺わせますね。

『栗より旨い十三里』に『八里半』?一体なんの事?

よく時代劇や歴史ものの書籍で『八里半』『十三里』と書かれたお店が出てきますが、実は同じサツマイモ、特に焼き芋を扱ったお店を指します。前者は『栗=九里』に匹敵する味と言う意味で付いた名前ですが、後者は少し複雑なネーミングです。

『十三里』は、『八里半』の語源になった“九里(くり)”に“四里(より)”を足したもの、つまり『栗より美味い』と言う表現でもあるのと同時に、江戸から十三里離れた川越のことも意味しています。川越は今もサツマイモの名産地ですが、江戸時代でも品質の高さは人気であり、洒落っ気のある江戸庶民からこのように称えられていました。

その焼き芋屋は『安い、旨い、お手軽』で江戸っ子の需要を満たした、食べ物屋さんの三冠王と言ってもおかしくないほどに重宝されます。各町に設けられた木戸で治安の維持や火の番を受け持つ番屋と呼ばれる施設の管理人は、副業として雑貨などと共に焼き芋を売っていました。冬場は、きっと町内の人で賑わったことでしょう。

老若男女、身分も超えて江戸の焼き芋屋さんは大繁盛!

当時の江戸を書き記した『江戸繁盛記』(寺門静軒)によると、焼き芋は煨薯(わいしょ)と呼ばれ、朝の卯の刻から夜の亥の刻(午前六時から午後十時)までサツマイモを焼くお店があったとあります。まるで今のファストフード店かコンビニのようですね。

安価で味も栄養価もバツグンな焼き芋は、十文(200〜250円)分も買えば書生が空腹を癒す朝食になり得るもので、四文(100円ほど)ならば幼児を泣き止ませるなど、知識人から庶民に至るまで広く愛されました。

一方で商家や武士など社会的地位の高い人達の中にも焼き芋ファンはいたらしく、『江戸繁盛記』には、
「お嬢様は女の召使いに“おさつを買ってきて”と小声で頼む」
「ご主人が男の奉公人を行かせる時は、“小さくて数が多いのよりは、数が少なくても大きいのが良い”と言付ける」
と言った意味の事が記されています。きっと、『旨いと評判だが、場末の店にワシらが並ぶのは、ちと気恥ずかしいものじゃ』とでも思ったのでしょう。そうしたエリート層からも好まれていたのですから、その人気たるや現代の比では無かったかもしれませんね。

一方、現代では年配の方から「貧乏時代を思い出すから嫌だ」、若い人達は「お腹が張っておならの元になるのはみっともない」と敬遠されがちなサツマイモは、美容と健康に効果的であり、それらの短所を補って余りある利点がたくさんあります。救荒作物だったサツマイモを食文化にまで昇華させた先人にあやかり、その良さを再評価して味わってみるのも悪くないかもしれません。

江戸時代グルメ雑学

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