「1時間当たりのGDP。まず倍増を」(長島社長)

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 人工知能(AI)の利用に向けた研究開発が広がっている。自動運転やマーケティング、人事など用途はさまざま。ただ、AIは人の仕事を奪う懸念も指摘され、人とAIとの関係は多くの議論が必要となる。AIを使った日本型イノベーションを提唱するローランド・ベルガー日本法人の長島聡社長に、経営コンサルタントの立場として話を聞いた。

 ―AIが職を奪う脅威は、どの程度の現実味がありますか。
 「(処理能力の高い)量子コンピューターの普及は時間がかかり、すぐに脅威とはならない。技術課題が解決しても、高度なAIはコンピューターを動かすエネルギーがネックになる。AIが人に置き換わるだけの存在なら、人の方が省エネで、利点が大きい。AIは人の代替だけでなく、人の能力を高めるようにできればいい」

 ―具体的には。
 「例えば、非常に強い将棋AIから学べるのは強いプロの棋士だけだが、さまざまな段階の将棋AIがあれば、早く名人になれるかもしれない。同様に、仕事においても自分より強いAIに引っ張ってもらう状況を作れる。人を中心にAIを利用し、事業成長を加速させることを考え始めた日本企業もある」

 ―圧倒的に賢いAIが全体を最適化する考えもあります。
 「欧米はIoT(モノのインターネット)で無人化を追求するなど割り切って技術を利用する。だが、AIは使い方を誤ると激しい格差を生み、反発を招く。日本は大部屋やすり合わせの文化があり、AIで能力を高めて、『みんなで一緒にやる』というイノベーションの方が合う」

 ―人が中心のイノベーションとは。
 「AIやロボットを能動的に使い、人の認識力や機動力を高めて、密度の濃い対話から価値を創る。一人ひとりは自分らしいアイデアや得意技を持ち、関係のないことにも興味を持って他者から吸収する姿勢も必要だ。AIは合理的な判断が得意だが、それだけでは画一的になる。サプライズなどのプラスアルファは人が担う」

 ―日本企業がやるべきことは。
 「現場が創意工夫する日本は、考える人材が育つが、重複も多く、生産性が低くなる。増加した業務に忙殺され、自分の担当する仕事しか見えていない人もいるのが気がかりだ。AIを利用して視野を広げれば、より広い全体最適を考えられる。欧米の3分の2に止まる1時間当たりの国内総生産(GDP)について、まず倍増を目指してほしい」
(聞き手=梶原洵子)