神戸製鋼は「タカタの二の舞」になるのか

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神戸製鋼所の「不正発覚」が止まらない。大規模なリコールや訴訟に発展する恐れがあり、経営問題に発展するのは必至だ。ジャーナリストの鎌田正文氏は「対応が後手後手だ。エアバッグ大手・タカタの経営破綻を想起させられる」という。神戸製鋼も同じ道を歩むのだろうか。その経営体力を緊急分析する――。

■長期間の「品質偽装」はなぜ見過ごされたのか

「信頼される技術、製品、サービスを提供する」

神戸製鋼所が、持続的発展を目指して17年度に改めて策定した行動指針、3つの約束のひとつである。

アルミ・銅製品や鉄鋼製品など納入品の品質検査データ改ざんが次々と明らかになってきた今となっては、ホームページにあるような「本件不適切行為に関するお詫び」といった、神戸製鋼1社の謝罪だけで済む話ではない。たとえば問題製品を出荷した子会社のコベルコマテリアル銅管は、非鉄金属国内最大手の三菱マテリアルとの合弁運営だったのだ。

疑惑の目は日本の製造業全体に向けられつつある。日本の信用を傷付けかねない深刻な問題といっていいだろう。

神戸製鋼は、新しい製鉄法(新還元溶解製鉄法)を商品化したり、これまでにない方式を採用して短期間での高炉改修を実現したりするなど、技術開発力には定評があると思われていた。それだけにギャップは大きい。

自動車のボンネットなどに使用されるアルミ板については、国内の自動車メーカーが安全を確認しつつあるものの、一部製品については強度不足などが判明。日本工業規格(JIS)の認証取り消し問題まで事態は進んでいる。顧客離れなど経営問題に直結するのは避けられない。

刑事捜査に発展する可能性もある。航空機製造の米ボーイングなど納入先は米国企業にも及んでいるため、すでに米司法当局から関係書類の提出を求められている。米国の基準で“クロ”と認定され、司法取引による制裁金が科されるリスクはゼロではない。

■事業の多角化で成長を目指すはずだった

納入先や株主などからの賠償請求も必至だ。エアバッグ大手のタカタは、リコール問題でおよそ1兆7000億円の負債を抱え、17年6月に経営破綻した。組織ぐるみの不正隠しや後手後手の対応、取引先からの巨額の賠償請求などは、タカタの事例を思い起こされる。

また本来は関係のないところにも悪影響が及んでいる。神戸製鋼は国内トップレベルのラグビー部がある。この問題が長引けば、部の存続にかかわるような事態にも発展しかねない。そうなれば2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップにも影響が及ぶ。

また1990年から毎年開催していた「神鋼かこがわフェスティバル」は、今年は中止になった。このイベントは加古川製鉄所構内や、隣接する陸上競技場・野球場・体育館等を会場として、「地域のお祭り」として定着していたもので、16年には約8万人が来場した。楽しみにしていた子供たちも多かったはずだ。

データ改ざん問題が起きる前、神戸製鋼の経営体力はどうだったのだろうか。2017年3月期決算は、売上高1兆6958億円、当期純利益は230億円の赤字だった。

過去5期で最終赤字が3回あるように赤字傾向にあるが、キャッシュ創出額(5期平均の営業キャッシュフロー)は1264億円と、投資出金額(5期平均の投資キャッシュフロー)の1003億円を上回っており、キャッシュベース経営としては、特段な問題点はなかった。

その他の主要科目は、出資比率に応じて取り込む関連会社の利益は18億円の黒字。売却可能な有価証券は455億円。マンション販売やビル賃貸などを手がける不動産の子会社を抱えているが、帳簿上の土地価額は1956億円。これまでの利益の蓄積を示す利益剰余金は3316億円である。

株価上昇による売却益獲得といった純投資を目的としない、いわゆる持ち合い株は、トヨタ自動車や新日鉄住金など240銘柄、帳簿価額は1144億円である。

一方で、今回の問題が明らかになる直前に三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が、保有する神戸製鋼株の一部を売却している。今後は持ち合いで保有している神戸製鋼株を売却する動きが出てくる ことが予想される。

神戸製鋼の株式を所有している主な企業の代表は、大株主として名を連ねている新日鉄住金、日本生命、みずほ銀行だ。それに三菱マテリアル、大同特殊鋼、丸一鋼管、淀川製鋼所、関西電力、電源開発なども所有。ゼネコンの大林組、鹿島、西松建設の3社はいずれも、簿価が10億円台に相当する122〜185万株を所有している。

利子をつけて返済しなければならない有利子負債は7969億円。主な借入先は日本政策投資銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行などで、そのほか取引銀行が設定している融資枠の残りとして約1240億円ある。

神戸製鋼は以前から新日鉄住金とは資本業務関係にある。ただし、12年10月に新日本製鉄と住友金属工業が経営統合、新日鉄住金としてスタートするにあたっては、独自路線を歩むことを選択。事業の多角化で企業の継続成長を目指す、とした経緯がある。

事実、赤字に陥りやすい鉄鋼事業や建設機械事業を、アルミ・銅、電力事業でカバー。とくに、自動車用アルミ材は、軽量化を進める自動車メーカーがボンネットやドアに採用を増やす傾向にあり、神戸製鋼の業績アップに貢献すると期待されていた。

■不正発覚で業界再編、事業のバラ売りも

「鉄とアルミ」――自動車の向けの鋼材やアルミ製品の両方を手がける企業は世界でただ1社、神戸製鋼に限られる。半面、それぞれの事業規模となると、ライバル企業に劣る。

神戸製鋼の鉄鋼事業の売上規模は6000億円弱。4兆円強の新日鉄住金や約1兆5000億円のJFEホールディングス(HD)には遠く及ばない。鉄鋼業の指標である粗鋼生産量でも、新日鉄住金とJFEHDとは大差がついている。

鉄鋼メーカーの象徴である高炉を運営する国内企業は、新日鉄住金、JFEHD、神戸製鋼、日新製鋼の4社だが、日新製鋼が新日鉄住金グループに入ったことで、神戸製鋼は国内最小の高炉メーカーになった。今年の11月からは高炉1基休止し、2基体制に移行した。

アルミ板を薄く延ばす圧延品では、UACJに次ぐ国内2位である。ただし、13年10月に古河スカイと住友軽金属工業が統合して誕生したUACJは、米国における自動車用アルミニウム構造材および各種アルミニウム部品製造販売会社を買収するなど規模を拡大し、神戸製鋼の先をいく。そのUACJにしても、世界トップを競う米国勢のアルコアとノベリスに大きく引き離されている。アルコアの売上高は約2兆5000億円、ノベリスは1兆円である。

神戸製鋼も自動車向けなどアルミ板事業の拡大に向けて米国での生産設備増強を決定するとともに、ノベリスとは韓国で合弁会社を設立するなどの動きを見せいているが、世界大手との差は大きい。

油圧ショベルなどの建設機械にしても神戸製鋼の売上高3103億円に対し、世界トップ級のコマツはその5倍規模である。

電力事業では、すでに大型原子力発電1基を上回る発電規模を誇り、着手したプロジェクトなどが完成すれば、大型原発4基相当の発電規模になる。ただし、その電力のほとんどは関西電力への供給であり、あくまでもサイドビジネスという位置づけだ。

今年7月末には、新年度に入って業績が上向きに転じたとして、18年3月期通期の予想純利益を300億円から350億円に上方修正していたが、10月末に撤回。状況によっては、3期連続の赤字も避けられないようだ。

今回の不正発覚で、神戸製鋼が失うものはあまりにも大きい。事態の収拾や全容解明にはまだしばらく時間が要することは確実で、その間、経営の屋台骨が大きく傾き、業界再編や事業のバラ売りといった事態を招く恐れもある。

(ビジネスリサーチ・ジャパン代表 鎌田 正文)