履いた靴下の30倍臭い地獄の缶詰もある!?専門家が説く発酵食品の多彩な魅力

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スーパーやデパートの食品売り場に行けば、醤油や味噌、納豆、ヨーグルト、チーズなど、さまざまな種類の発酵食品を目にすることができる。しかし、なんとなく「体によさそう」なことは知っていても、その具体的な特徴や効能、種類などを聞かれると答えに窮してしまう人も少なくないのでは?そこで「教えて!goo」では、この10月に高島屋日本橋店で開催されたイベント「発酵の学校」の取材を敢行。ここでは、同校の校長であり、発酵デリカテッセン「Kouji&ko」の監修などを務める東京農業大学名誉教授の小泉武夫先生が説く「発酵食品の魅力」を紹介しよう。

■お酒は酵母のオシッコ?

そもそも「発酵食品」とはなんだろうか?小泉先生によると「簡単に言えば、人間のためにいいことをしてくれる微生物が作るものを発酵食品といい、その現象を発酵といいます」。

この世界には膨大な数の微生物がいる(たとえば人間の大人の体には、なんと1人当たり4兆匹もの微生物がいる)が、その中にはさまざまな種類の菌が存在する。その菌を大きくふたつに分けると、人間のためにいいことをしてくれる「善玉菌」と悪いことをする「悪玉菌」(食べものを腐らせてしまう=腐敗菌や病気を引き起こす=病原菌)に分けられる。

「善玉菌には、納豆菌や乳酸菌、酵母などがあります。これらの微生物は人間と同じように、食べ物を自分の体の中に取り入れたあと、それを分解することでエネルギーを得て生きています。たとえば酵母はブドウ糖を分解してアルコールを作りますが、その現象が『発酵』というわけ。ちなみに、酵母は自分の体の中にアルコールをためておくと死んじゃいますから、代謝物としてどんどん外に出していく。だからお酒は酵母のオシッコみたいなものなんですよ」(小泉先生)

少し前に「塩麹」がブームになったが、それに使われる「麹菌」も善玉菌の一種だ。「日本にはお酒や味噌、みりん、お酢などの醸造に利用される黄麹菌のほか、沖縄で泡盛の醸造に使われている黒麹菌がありますが、これらはともに日本を代表する菌ということで『国菌』に指定されています。とくに黒麹菌は沖縄(琉球)にしかないということで、一昨年前に学名が『アスペルギルス・リュウキュウエンシス』に変更されたくらい珍しい菌なんです」(小泉先生)

■発酵食品の4大特徴とは?

こうした微生物によって作られる発酵食品には、4つの大きな魅力があると小泉先生は説く。そのひとつが「保存が効く」ことだ。

「牛乳を常温で放置すると腐ってしまいますが、乳酸菌で発酵させてヨーグルトやチーズにすると常温でも腐りにくくなります。以前、グルジアにクルド族をたずねた際にヤギの乳で作られたチーズを見せてもらったことがありますが、なんと170年前に作られたものでした。NHKの番組で中国の村を取材した時は、40年ものの鯉のなれ鮓(ずし)を出していただいたこともあります。日本にも、和歌山県の新宮市というところに30年ものの秋刀魚のなれ鮓を出す東宝茶屋というお店がありますね。冷蔵庫のなかった時代は、発酵によって保存していた。それくらい発酵食品は保存が効くものなんです」(小泉先生)

もうひとつの特徴が「健康機能性」。近年、アメリカのスタンフォード大学微生物免疫学研究所のジャスティン・ソネンバーグという免疫学者の研究によって、日本の発酵食品に強力な免疫力があることがわかってきたという。

「免疫力が高まると、インフルエンザにかかりにくくなりますし、ガン細胞ができても免疫細胞がそれを叩き潰して体を守ってくれるようになるんですよ。じゃあ、免疫力はどこで作られるかというと『腸』で作られるものが多いです。腸の能力、つまり腸能力を高めることが長生きの秘訣なんですね」(小泉先生)

では、腸能力を高めるための食生活はどうすればいいのだろうか?

「3つのポイントがあります。ひとつ目は食物繊維、つまり野菜をたくさん取ることですね。ふたつ目は、納豆などの生きている微生物が含まれる食品を食べて腸に入れること。そして、3つ目が発酵食品全般ですね。味噌やお酢などは製造工程や調理過程で生きた微生物が失われますが、免疫効果が非常に高いことがわかっています。たとえばマウスに放射線を照射する実験では、餌に味噌を混ぜたかどうかで小腸粘膜幹細胞の生存率や再生率が大きく異なるという結果が出ているんですよ。もちろん、味噌を食べた方が細胞の生存率も再生率も際立ってよかったんです」(小泉先生)

■世界一臭いニシンの缶詰とは

発酵食品の3つ目の特徴が、その「香・味」だ。スウェーデンの世界一臭い缶詰「シュールストレミング」や日本の「くさや」など、発酵食品には独特の匂いや味で知られるものが多い。

「シュールストレミングはニシンを塩で漬けて発酵させるのですが、缶詰にした後も発酵が進んでガスが出ています。だからガス圧で缶が歪んでしまう。その匂いをアラバスターという臭気測定器で測ると、約8000Au(Auは臭さの単位)で、納豆の約20倍、私の使用済み靴下の30倍。まさに地獄の缶詰というにふさわしい強烈な食品ですね(笑)」(小泉先生)。

それだけ臭くても食べられるのが発酵食品のおもしろいところ。

「NHKの番組で小学生に、シュールストレミングと腐敗した鯖の匂いを嗅いでもらい『どちらか食べなきゃならないとしたらどっちを選ぶ?』と聞いたところ、全員がより強い匂いのシュールストレミングを選びました。人間は本能的に発酵と腐敗の匂いの違いがわかるんですね」(小泉先生)

そんな独特の匂いがある発酵食品の4つ目の特徴が「究極の自然食品」であるということだ。

「発酵食品って、化学調味料も砂糖も、何も入っていないんです。たとえば味噌の場合、麹菌と塩を入れて発酵させますが、それ以外に添加物は何も入れない。それがそのままみそ汁などに使われるわけです。だから、究極の自然食品であり、体にもとてもいい。これを食べない手はありませんよ」(小泉先生)

味噌や納豆、ヨーグルトなど、その魅力が見直されつつある発酵食品。普段の食生活に積極的に取り入れてみてはいかがだろうか。

「教えて!goo」では、「あなたの好きな発酵食品を教えて!」ということで皆さんの意見を募集中だ。

●専門家プロフィール:小泉武夫
全国発酵のまちづくりネットワーク協議会会長。特定非営利活動法人発酵文化推進機構理事長。1943年、福島県の酒造家に生まれる。東京農業大学名誉教授。農学博士。専門は醸造学、発酵学、食文化論。発酵デリカテッセン「Kouji&ko」の監修も務めている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)