二流のタクシー空間の特徴とは?(写真:Satoshi KOHNO / PIXTA)

「学歴・頭のIQ」で、「仕事能力」は判断できない。仕事ができるかどうかは、「仕事のIQ」にかかっている。
『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(ミセス・パンプキンとの共著)が合わせて25万部突破の大ベストセラーになった「グローバルエリート」ことムーギー・キム氏。
彼が2年半の歳月をかけて「仕事のIQの高め方」について完全に書き下ろした最新刊『最強の働き方――世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓』は、早くも20万部を突破、翔泳社主催の「ビジネス書大賞 2017」の大賞を受賞し、世界6カ国で翻訳も決定するなど、世界中で注目を集めている。
本連載では、ムーギー氏が「世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ教訓」の数々、および「日常生活にあらわれる一流・二流の差」を、「下から目線」で謙虚に紹介していく。

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「二流の乗客」と「二流の運転手」がいる


「あ、ここで停めてください。メーター切って。うぁー待て待て待て待てっ‼ 今メーター90円上がったやろ? ワシはこの90円、払わへんからな〜〜‼」

世の中には、タクシーに乗った途端、「二流の本領」を発揮する人たちがいる

タクシーに乗ったかと思えば、道順をひたすら指定して運転手さんをイライラさせる二流の乗客たち。さらに、「景気どないでっか」と経済情勢の調査を始めたり、「運転手さん、前はどんな仕事してたの?」と個人的な詮索を始めたりするのだから、はやくも三流エンジン大全開である。

これに対し、一流の人物は、タクシーに乗っても一流である。「ニューオータニガーデンコートまでお願いします」と、行き先も高貴な響きがするのは当然のことながら、自分がいかに偉かろうと運転手さんに丁寧な「ですます調」で敬意をもって接するのである。

降りるときは、90円ほどの小銭をチップにするのはもちろん、支払いが1620円のときも2000円を渡して380円をチップにするのだから、そこに「一流の神髄を見た」といえるだろう。

「学歴の高さや頭のIQ」と「タクシーに立派に乗れるかどうか」は関係がない。世の中には、タクシーに乗った途端、その人の「人間的失格ぶり」「人格的破綻ぶり」がこのうえなくにじみ出てしまうものである。

それでは、タクシーに乗った途端、赤裸々にバレてしまうその人間的欠陥ぶり、人格的故障の実態とはどのようなものなのだろうか?

タクシーでの「二流ドラマ」は、運転手さんと乗客の双方から繰り広げられるため、双方にまんべんなく視点を向けながら、早速、紹介していこう。

まず乗った途端、二流がバレるのが、「とんでもない車内のニオイ」であろう。

タクシーの車内では「ニオイ」や「騒音」に注意する

【1】車内のニオイは乗客も運転手も「要注意」

これは、運転手さんと乗客の「喧嘩両成敗」のことが多い

長時間の勤務を上がる直前だと、社内を閉めっきりにしていて「さまざまなアカン香り」が閉じ込められるのは、いささかやむをえないかもしれない。

しかし、このニオイに、お客さん側の厚化粧や濃すぎる香水、コロンのにおい、そして密室の中で逃げ場を失ったたばこの残り香がミックスされたとき、この世のものとは思えない「異次元空間の異臭騒動」が起こることは周知のとおりである。

おまけに、いくら生理現象とはいえ、車内で放屁する人がいた場合、「くっせー、くさい‼ この車内くさいですよ、運転手さん!」などと自分のニオイを棚に上げて抗議するのは、「タクシーの三流すぎる風物詩」といえるだろう。

ともあれ、タクシーに乗った途端、一流のタクシーほど、レモングラスかミントのさわやかな香りが適切な温度とともに充満しているものだが、二流のタクシーだと乗客側からも運転手さん側からも「異臭騒動」に発展していくと指摘しておく必要があるだろう。

【2】二流の車内空間は「いつも騒音が絶えない」

次に、タクシーで二流がバレる瞬間が「車内がうるさすぎる」ことだろう。

冒頭であげたような、「景気はどうですか」のほかに「政府の横暴、許せねぇよなぁ!」などといった政治談議や、「運転手さん、前はどんな仕事やってたんだい? よかったら俺、聞くよ!」といった迷惑な「にわか人生相談」など、二流の乗客からの攻勢はとどまることをしらない

さらに、車内での会話がうるさかったり、携帯電話の声がやかましすぎたりして、運転手さんの運転の妨げになる「三流すぎる乗客」も大量に存在する

しかし、車内の騒音レベルを二流に転落させるのは乗客だけの問題ではない。

これは私が住むシンガポールなどで顕著なのが、運転手さんから会話を求められ、「どこから来たんだ」「何をやってるんだ」といった世間話から、「シンガポールの国父をみんな尊敬しているなんていうのは、メディアと国がつくりあげた幻想だ‼」といった体制批判まで、とにかく乗客をしんどくさせるのである。

また、大きな声に加え、ラジオの音も最大音量で、もはや何が何だか完全にカオスになっていることが「二流のタクシー空間の二流たるゆえん」であろう。

最後に、その二流っぷりがもろにバレてしまうのが、なんといっても「最後の数秒間に上がるタクシーメーター90円の攻防」であろう。

乗客も運転手も「冷静と自制」が必要

【3】「90円」をめぐる乗客と運転手の暗闇

最近はユーザーの声と技術水準の発達を受けて、あとどのくらいでメーターが上がるのか、サインが出るようになっていることは素直に歓迎したい。

しかしそれでも、二流の運転手さんは最後に牛歩戦術でこの「90円の上乗せ」を確保しようと、往年のプロレスファンなら誰しもがうなずくであろう「ジョー樋口レフェリーの遅すぎるカウント」並みに、ギリギリの微妙な間の伸ばし方で「最後の90円の上乗せ」を狙ってくるのだ。

これに対して、二流の乗客はこの90円の上乗せを避けるべく、まだ目的地に達していないのに「ここまででいいです、降ります」と降りてしまうのだから、開いた口がふさがらない。

なかには、「今、メーターわざと上げただろ‼」などと怒りに火がつき、嫌がらせでタクシー会社に電話をしたりする人までいる。

そういう人に限って、その場でシートを蹴って怒鳴り散らしている「人としての終焉ぶり」がものの見事に録音されていたり、タクシーの中にある小型カメラに完璧に撮影されていて証拠がもろに残っていることも知らずに傍若無人の限りを尽くしたりするのだから、恥ずかしいかぎりである。

私はこのような大騒ぎを繰り広げる、迷惑な二流の乗客および運転手さん双方に「冷静と自制」を求めたい

「これ、たかだか90円ですよ? 人間的高潔さを示すことに、90円を使われてはいかがですか?」と。

これまで「下から目線」で懇切丁寧に、「二流のタクシー空間の特徴」を謙虚に書きつづってきた、「グローバルエリート」の称号をほしいままにする私。それでは、一流のタクシー乗客および運転手さんの特徴は、いかなるものなのか?

変なニオイを出さず、喧(やかま)しくせず、90円よりも優雅さを選ぶ度量を持ち合わせるのは当然のことながら、「一流のタクシー空間」には、以下のような特徴がみてとれる。

「一流のタクシー空間」2つのポイント

【1】急いでいるか、疲れているかを見通す「乗客への配慮」

一流のタクシーの運転手さんほど、乗客の事情に極力寄り添おうとする。お客さんが疲れているときは何も言わなくてもラジオや会話を控える。

また、お客さんが急いでいると知ったなら、赤信号ギリギリのときは法律に違反しない範囲で周囲の安全を確保しつつ、何とか交差点で前進もしてくれる。

そして、90円が上がる直前に自分でメーターを止める。人物像が貴人に達している人の場合は、上がった料金を「これ、最後に上がったから、カットしときますね」と自主的に値引きをしてくるのだ。

一流の運転手さんほど、このように、行き届いた配慮でお客さんに「サービス業としての感動」を与えるのである。

【2】サービス業の人に偉そうにしない「運転手への配慮」

次に、一流のタクシー空間を実現するもうひとりの主役、乗客が一流であるほど、運転手さんに対してホスピタリティを発揮するものだ。

日頃、運転手さんに人生の鬱憤のすべてをぶつける人がたくさんいるこの世知辛い世の中で、自分だけでも運転手さんの心のオアシスになろうと「一流の乗客」としての神対応を繰り広げるのだ。

急いでいるときに赤信号で車が止まっても、渋滞で前に進まなかったりしても、決して悪態をついたりはしない。運転手さんが道を間違って、おまけにそれを「ナビが故障していて……」などと言い訳しても、決して「ち〜が〜う〜だ〜〜ろ〜〜違う‼」などと、叫んだりはしないのだ。

心の中で平常心と世界平和を念じ、スマートに携帯電話でミーティング相手に電話して、「30分遅れます。タクシーが悪いのではなく、自分の出発が遅かったんです」と先方に謝りの電話を1本入れて、「運転手さんも、新しく始められて不慣れなんですよね。仕方ないですよ。頑張ってください!」と逆に激励の言葉をかけるのだから「一流の人間の完成形、ここに見た」という感じであろう。

これまで、タクシー空間を演出する2大キャストである、「運転手さん」と「乗客」が織りなす車内の一流、二流の差について、その高いグローバルな見識を披露してきた、一流の「グローバルエリート」であるこの私。

しかし、ここまでお読みになられた方で、まさか本コラムの結末が、「二流の乗客は自分」であることを白状して終焉を迎えると想像された方が、はたしてひとりでも、いらっしゃったことだろうか。

二流のタクシーの乗客は、やはりこの私


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港区から羽田空港までタクシーで向かおうとしていたら、チケットが「成田空港発」であることに気づいてタクシーの中で狼狽をしはじめた私。

「どないしてくれるんや、どないしてくれるんや、あと50分でなんとか成田着いてくれへんかったら、香港の会議に間に合わず、絶対クビや‼ それはアカン、それはアカンのや……はよはよ! はよ行ってくれ〜〜〜‼」と自らの大ポカを棚に上げて、運転手さんに泣きすがる、恥ずかしすぎる私。

おまけに、「ちょっとちょっと、今、高速道路の出口、間違ったでしょ? これ、オタクのミスやからメーター止めてくれるか? いつもは4000円で着く距離なんや。すでに6000円オーバー、時間も2倍くらいかかっとる!」などと車内で狼狽しているのも、この恥ずかしすぎる二流に転落した、グローバルエリートの仕業なのだ。

しかし、この世の中から、私のような二流のタクシー乗客が消滅しないかぎり、この世に太平天国は訪れない。

日常生活の基本であるタクシー車内で、居心地のいい礼節あふれた「一流の密室空間」をつくれないようでは、生活や仕事のすべてに、その人の基本的言動パターンがにじみ出るのは、致し方がない事実なのである。

本コラムを契機に、ひとりでも多くの二流のタクシー乗客が世の中から消えうせ世界平和が実現することを祈念しつつ、シンガポールのボタニックガーデンのカフェから、本コラムを締めさせていただきたい。