北朝鮮の教化所(刑務所)における人権侵害の実態を伝える報告書が、衛星写真とともに公開された。

26日に報告書を発表したのは、米国の人権団体「北朝鮮人権委員会」(HRNK)だ。報告書は、全国にある25ヶ所の教化所のGoogle Earthの衛星写真と、韓国の北韓人権情報センター(NKDB)や統一研究院が収監経験のある脱北者を対象に行なった聞き取り調査などで得られた情報を合わせて、教化所の人権状況の実態に迫ったものだ。

外国人も無慈悲に

例えば、平安南道(ピョンアンナムド)价川(ケチョン)の東の郊外にある1号教化所(价川収容所と呼ばれる14号管理所とは別の施設)については、30人以上の元収監者の証言と、衛星写真を照らし合わせて確認作業を行った。

それによると、1号教化所は非常に大規模で、女性2000人を含む4000人から6000人が収容されていると思われる。建物は男性、女性、有期刑、無期刑などで分かれており、収容者が施設の全貌を知ることは不可能になっている。

(参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

ここには韓国のK-POPを歌ったという「罪」から、窃盗、詐欺、麻薬、殺人に至るまで様々な罪を犯した人が収監されている。中には、日本から帰国した200人から250人の在日朝鮮人がいるとの報告もある。

施設の衛生環境は劣悪で、食糧も不足し、栄養失調による死亡率が高い。家族からの差し入れが得られない人の死亡率はさらに高い。これはつまり、北朝鮮国民はK-POPを歌ったのがバレただけで死の恐怖に直面するということだ。

この報告書は、黄海北道(ファンヘブクト)沙里院(サリウォン)にある6号教化所についても触れている。最近、米大学生のオットー・ワームビアさんが北朝鮮で1年以上にわたり拘束され、釈放後に不可解な死を遂げた出来事が関心を集めたが、外国人に対する北朝鮮当局の無慈悲な取り扱いは昔からのものだ。

6号教化所は、平壌の出版社で勤務していたベネズエラの著名な詩人、アリ・ラメダさんとフランス人の同僚ジャック・セディヨ氏が、体制批判を行った容疑で逮捕され、1967年から1975年まで収監されていたことで知られている。アムネスティの救援運動で釈放されたラメダさんの証言で、北朝鮮の収容所における人権侵害の実態が世界に知られるようになった。

この教化所は現在でも運営されており、2011年の時点で3000人から4000人が収監され、靴、衣服などの製造にあたらされている。

今回、対象となったのは25ヶ所だが、所在地がわからず衛星写真が存在しないところとして19ヶ所が挙げられている。江原道にある5号教化所、10号教化所などについては、統一研究院のリストに掲載されているものの、全く何の情報もないとしている。また、両江道(リャンガンド)については、教化所や管理所(政治犯収容所)についての情報そのものが存在せず、全くの闇に包まれている。

なお、韓国の統一省は2012年10月に行われた国政監査で、政府関連機関が確認した資料による情報として、北朝鮮には70余りの教化所、管理所が存在し、うち30ヶ所が平壌周辺、黄海道(ファンヘド)と咸鏡道(ハムギョンド)に10ヶ所ずつ、残りは両江道、慈江道(チャガンド)、江原道(カンウォンド)にあると明らかにした。

HRNKのグレッグ・スカラチュー事務総長は、米ワシントンポストのインタビューに、国際社会は北朝鮮の核の脅威にばかり目が行きがちだが、一般の北朝鮮の人びとは日常的に政府による脅威にさらされているとし、北朝鮮の人権問題に関心を払うよう訴えた。

また、報告書の執筆者の一人、デービッド・ホーク氏は、収監されている多くの人は、他の国では罪にならないような罪で収監されていると述べた。

国連や国際機関は北朝鮮に対して教化所、管理所に対するモニタリングを何度も要請したが、北朝鮮が拒んでいるため、今回の報告書は北朝鮮の人権侵害の実態を示す重要な証拠となる。