米国では、ここ近年、従来のケーブルTV(CATV)契約をやめ、インターネットを介して映像を配信する、より安価なオーバーザトップ(OTT)と呼ばれるサービスを好む人が増えている。

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アマゾン、番組制作事業を拡大

 そうした中、テクノロジー各社は、最近、この分野の事業に力を入れている。米アマゾン・ドットコムは10月30日、同社のオリジナル番組制作部門「Amazon Studios」の規模を拡大し、その拠点を米ハリウッド近くの伝統的な映画・テレビ番組制作施設に移すと発表した。

 その施設とは、カリフォルニア州カルバーシティーにあるカルバースタジオ。サイレント映画の名監督トーマス・H・インスによって作られたスタジオで、「風と共に去りぬ」や「市民ケーン」といった作品もここで生み出されたという。

 アマゾンのオリジナル番組制作のスタッフは現在、カリフォルニア州サンタモニカに700人以上いるが、これらの全員が、年内にカルバースタジオに移る。

 アマゾンの狙いは、会員制有料プログラム「Prime(プライム)」の特典として提供する見放題の映像配信サービス「Prime Video」のコンテンツ拡充だ。英ロイター通信によると、アマゾンはこうして特典を魅力的なものにし、Prime会員の保持や新規獲得に努めている。しかし、同社のオリジナル作品は、より広範な消費者に訴求できていないといった批判があるという。

 そうした中、アマゾンは2017年の1年間で、オリジナル作品の制作に45億ドル(約5120億円)を費やす。来年はその予算をさらに増やす計画だ。

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限定的だったYouTube TVをあらゆる機器に

 一方、米グーグル傘下の動画配信事業、ユーチューブ(YouTube)は同じく10月30日、月額制番組配信サービス「YouTube TV」を、より多くの機器で見られるようにすると発表した。

 こちらは、ユーチューブが今年4月に米国で始めたサービス。YouTubeのオリジナル映画やドラマのほか、「ABC」「CBS」「FOX」「NBC」「ESPN」「Fox Sports」「NBCSN」といった全米ネットワーク、スポーツチャンネル、主要ケーブルテレビ局でも配信される人気チャンネルなど、合計40ほどのチャンネルを月額35ドルで提供している。

 YouTube TVは、これまで、スマートフォンなどのモバイルアプリや、パソコン、グーグルの映像配信端末「Chromecast」と接続したテレビで視聴できた。しかし、今後は、さまざまな機器に対応した専用アプリを提供する。

 その中には、グーグルのスマートテレビソフトを組み込んだテレビやゲーム機なども含まれる。例えば、ソニーや韓国LGエレクロニクス、韓国サムスン電子のテレビ、米マイクロソフトのゲーム機「Xbox One」といった具合だ。さらにユーチューブは、米アップルの映像配信端末「Apple TV」向けYouTube TVアプリも提供する計画だ。

「コードカッター」と「コードネバー」の需要

 前述したとおり、YouTube TVの月額料金は35ドル。これは、60ドル以上するケーブルテレビの半額程度。ケーブルテレビのチャンネル数は数百あるものの、米国では最近、好みのチャンネルだけを利用でき、料金が安い、オーバーザトップサービスが若者を中心に人気を博している。

 アマゾンも昨年4月、Prime Videoだけを利用できる月額8.99ドルのプランを米国で開始。その狙いは、「コードカッター」と呼ばれるケーブルテレビ契約をやめる人、あるいは「コードネバー」と呼ばれるケーブルテレビ契約を一度もしたことがない若者の需要だ。

(参考・関連記事)「アップル、オリジナル番組の制作で10億ドルの予算」

筆者:小久保 重信