自分の子どもたちのために際立った思い出を作ってあげたいとの思いが先行し…(写真:FamVeld / PIXTA)

たとえかわいいわが子とはいえ、バースデーパーティのために10万ドル(約1100万円)を散財するのは信じられないだろう。が、伝えられているところによると、これはケイティ・ホームズとトム・クルーズが、愛娘スリのパーティのためにかつて使った額なのだ。

ニューヨーク・デイリーニュースによると、これには、著名カリフォルニア料理、ウルフギャング・パックのケータリング4万0500ドル(約510万円)、新鮮な花々と1000匹の蝶々がいる部屋代1万7000ドル(約190万円)が含まれている。ちなみに、その当時スリはわずか2歳だった。

が、この「記録」は、ビヨンセとジェイ・Z夫妻に追い抜かれることになる。ハフィントンポストによると、2人は娘のブルー・アイビーのバースデーパーティに、20万ドル(2280万円)を使ったというのだ。

「誕生日パーティ」はビッグビジネス

確かにこれはセレブのことで、一般人の基準で見るべきではないだろう。が、もし、テキサスの一般家庭の女性が8歳になる娘のパーティに10万ドル(約1100万円)近く使ったと聞いたらどうだろうか? 今や放映打ち切りになってしまったが、この女性、キムさんのことは米国のリアリティ番組「Outrageous Kids Parties(とんでもないキッズパーティ)」で紹介されていた。

同番組では毎回、子どものための手の込んだパーティが紹介されており、中には「身分不相応」とも思える出費をしてしまう親たちも出てくる。たとえば、ある親が子どものために開いた1980年代をテーマにしたパーティでは、ローラースケートのリンク、泡の出るプール、DJ、写真撮影ブース、チアリーダー一団、似顔絵アーティスト、ビンテージカーをすべてレンタルして用意。もちろん、これとは別にプレゼントも用意されていた。

資産運用会社のティー・ ロウ・プライスが行った子どもにかかる費用に関する調査でも、誕生日パーティに注目。調査の回答者1014人の平均パーティ費用は、およそ500ドルだった(誕生日プレゼントは含まれていない)。また、ベビーセンター・ドット・コムの調査でも、回答者の26%が、自分の子どもの最初の誕生日会に500ドル以上使っていることがわかった。

今や米国では、誕生日パーティはビッグビジネスだ。MSNマネーによると、過去数年間であらゆる収入レベルにおいて、誕生日関連の支出は増えており、関連企業も潤っている。たとえば、関連グッズと販売するバースデー・エクスプレスの注文額は、年率5〜7%増えているという。

2児の母で、専業主婦のクラリッサ・ウェイルさんも子どもの誕生日パーティへの出費を惜しまない親の1人だ。「会場、マジシャン、食事、装飾を付け足し始めたら、最低でもすぐ合計500ドルに達してしまう」と語る。

「親として、子どもには楽しい思いをさせてやる必要があると思う」と、ウェイルさん。この思いは特に、子どもが小さかった頃、強かったという。子どもにとって特別な日に、「自分は特別なのだ」と感じさせてあげたい――。それゆえ、自分の子どもたちのために際立った思い出を作ってあげたいとの思いが先行し、費用は二の次になってしまうという。

映画の世界観を再現したパーティ

イベントプランナーが必要となるような、さらに高級な誕生日パーティの場合、その費用は5000〜2万ドル程度にまで膨らむ。

ニューヨークを拠点に活動するイベントプランナー、ケリ・レヴィット氏は、こうした誕生日パーティの「ぜいたく化」は、ソーシャルメディアによって拍車がかかっていると指摘する。たとえば、画像共有サイトのピンタレストには、「ベスト・キッズ・パーティ・アイデア」という項目だけで、子どもの誕生日パーティ関連の写真2400枚以上が掲載されている。

SNSで人気のお騒がせセレブ、カーダシアン一家のキムとコートニー・カーダシアンは、それぞれ4歳と5歳になる娘たちのために、ディズニー映画『モアナと伝説の海』をテーマとした誕生日パーティを開催し、その様子をSNSに投稿。そこには、衣装から食事まで映画の世界を再現した写真が数多く掲載されていた。

「私たちはとても特殊な世界に住んでおり、ネット上には信じられないようなインスピレーションや、目を楽しませてくれるコンテンツがある」と、レビット氏はニュースサイトMoney-ishに語っている。「大規模で豪華なパーティからポップスターが開くパーティまで、(SNSでは)子どもが興味を持ちそうなありとあらゆるパーティを探すことができる。しかも、どれも詳細まで調べることができる」。

SNSを通じてパーティを公開するようになった今、親たちは「周りに負けないように」という意識すら持ち始めている。自分の子どものパーティはもはや小規模でも、シンプルでも、個人的なものでもない。こうしたパーティを、出席者やほかの地域の友人などから見ているからだ。多くの人々が、子どものみならず、出席者や友人に好印象を持たれたいと思っていることに説明はいらないだろう。

ミネソタ大学家族社会学のウィリアム・ドハーティ教授が、『Birthdays Without Pressures(プレッシャーのない誕生日)』と呼ばれる同大と地域の共同プロジェクトを始めたのはこうした理由からだ。ドハーティ教授の目的は、誕生日パーティを「さらに大きく、格好よく、完璧に」しなくてならないというプレッシャーを感じている親に対して、冷静になることを促し、シンプルだが意義のあるパーティを開くための代替案を提供することだ。

同教授は、誕生日パーティは開かなければならないものだと親たちは感じているが、大規模で手の込んだパーティは子どもたちが絶望感やねたみ、ストレスといった感情を抱くきっかけになりうる、と指摘する。

「また、子どもたちは自分が必要なものではなく、自分が求めるものを得る権利が与えられていると誤解するようにもなる。長期的に見ると、より多くのものを求める意識は、物質主義的な価値観を形成することになる」

1人だけ招待したお泊まり誕生日会

こうした中、同教授は豪華なパーティの代替案を考えるうえで、親が自らに次の質問を問うよう勧めている。「子どものパーティであなたが最も大切にしたいことは何か」。大事なのは世間の基準や目ではなく、子どもを含めた家族が大事にしている価値観であり、それに忠実になればいいのだ。

ロンドン在住の2児の母、スーザン・ヘンプソールさんも、かつて豪華な誕生日パーティを開いていた1人。かつて香港に住んでいた頃は、子どもたちのパーティのために毎回1000ドル以上使っていたという。同じクラスの子ども約30人とその親たちを招待しなければならず、会場費や食事代などの負担が重かったからだ。

が、今年ロンドンに引っ越した後、ヘンプソールさんは10歳の娘と話し合ってシンプルなパーティを開くことにした。今年の誕生日では、娘は友人1人を「お泊まり会」に招待することを選んだという。ドハーティ教授が指摘するように、最後は家族の価値観に行き着いた、とヘンプソールさんは言う。「社会的なプレッシャーはもう感じないし、私は自分のしたいようにしている」。

蝶々がいっぱい飛んでいる部屋だろうが、自宅の裏庭でやるアウトドアパーティだろうが、パーティにかかる費用に関係なく、親たちはすべての子どもに本人が特別であると感じてもらおうとしているのだ。子どものパーティにおカネを使うことは必ずしも悪いことではない。ただ、それが文化的な基準になることは、子どものためにもならないだろう。