「イルミナティの儀式」ラスベガス乱射の陰謀論が横行 事件被害者も標的に

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 先月1日、アメリカ・ラスベガスで米史上最悪の乱射事件が起きた。野外コンサートの観客を狙い、58名の命を奪い、500人以上を負傷させたスティーブン・パドック容疑者だが、彼の動機についてネット上で陰謀論が飛び交っている。そしてそれが無実の被害者をも攻撃するという思わぬ事態になっている。

◆イルミナティかテロか
 Metro USA誌は、この事件は「イルミナティの”血液犠牲”儀式によるもの」ではないかという陰謀論について伝えている。この説は、ウェブサイトWeekend Vigilanteのシイラ・ジリンスキー氏によるもので、乱射事件は、暴力団から腐敗した政治家まで、世界を支配しようとする「deep state(闇の国家)」の秘密結社イルミナティによる計画だとしている。この理論を説明する動画は、ユーチューブとツイッターに投稿されている。

REVEALED! Was VEGAS Shooting ILLUMINATI "Deep State" OCCULT Sacrifice? https://t.co/RVSXsCzWac

— Sheila Zilinsky (@weekndvigilante) October 9, 2017

 ジリンスキー氏はこう言う:「皆さん、ラスベガスで起きたこと。この殺害現場はこのスフィンクス、ピラミッド、オベリスクの前にあります。これは偶然ではありません」「これは、戦略的に配置された血液犠牲の儀式以外の何物でもなく、ピラミッドからの死の儀式です」。

 また、マザー・ジョーンズ誌は保守派のコラムニスト、ウェイン・アリン・ルート氏の主張について取り上げている。ルート氏は、この襲撃事件はFBIとラスベガス警察によって事実が隠されていると述べた。またツイッターで、事件はイスラム教徒のテロリストによるものだとつぶやいている。

This is real thing. Clearly coordinated Muslim terror attack. PRAY for our Vegas police. PRAY for victims. VERY bad. Awful.

— Wayne Allyn Root (@WayneRoot) October 2, 2017

「これは本当のことです。明らかにイスラム教徒によるテロ攻撃。私たちのラスベガス警察のために祈りましょう。犠牲者のために祈りましょう。ひどい」

 いずれの陰謀論も証明されていないが、特に陰謀論者が多くのフォロワーを持っている場合など、読んだことをそのまま信じる人もいる。

◆支持を集める陰謀論者
 ネットメディアを中心に様々な陰謀論が煽られる中、ウェブサイト「インフォウォーズ」を主宰するアレックス・ジョーンズ氏の陰謀論が多大な支持を得ている。ジョーンズ氏のような右翼メディアのパーソナリティたちのアイデアは、しばしば乏しい確証に基づいたものである。しかし何百万人ものアメリカ人が耳を傾けている(ニューヨーク・タイムズ紙)。

 ジョーンズ氏は、2012年のサンディフック小学校銃乱射事件と2001年9月11日のテロ攻撃に関する陰謀論を広めてきた人物である。彼はパドック容疑者をイスラム国家の代理人、左派活動家、反トランプの過激派、民主主義を混乱させることを意図した広範な陰謀の共犯者などと呼んできた。

 ジョーンズ氏は自身のフェイスブックに「ラスベガスの単独襲撃者、スティーブン・パドックは、アメリカの街で左翼の戦争を始めるのに利用されたのか」と書き込み、「ラスベガスの大虐殺に第2の襲撃者がいることを証明するビデオ」というタイトルの動画と同時に投稿した。動画は数日で約110万回再生された。ジョーンズ氏は、パドック容疑者以外にも狙撃者がいたはずだと主張している。

 インフォウォーズが国家の悲劇に関する根拠のない理論を広めたのは、これが初めてのことではない。大統領選挙中には、首都ワシントンのピザ店で児童売春組織が活動しており、民主党候補者のヒラリー・クリントン氏が関わっているという「ピザゲート」陰謀論を作り上げ、ノースカロライナ州に住む男が店内で発砲するという事件を引き起こしている。

 ウェブトラッキング会社コムスコアによると、ジョーンズ氏のウェブサイトの今月6月のユニークビジターは140万人以上を記録したという(8月には68万9000人に減少。昨年11月には約400万人が訪れた)。

◆無実の犠牲者がさらなる被害に
 ガーディアン紙によると、襲撃事件で頭蓋骨を打たれたが、すんでのところで死を逃れた30歳の犠牲者が思わぬ被害にあっているという。回復中のため仕事を休まねばならないブレーデン・マテイカさんのために、兄テイラーさんと友人たちがフェイスブック上で募金活動を始めた。するとまもなく、被害者の役をするために雇われたまわしもの、といった悪意のあるコメントが陰謀論者から書き込まれるようになった。陰謀論者らは生存者と被害者の愛する家族や友人を標的にし、あらゆるソーシャルメディアプラットフォームに誤った情報を吹き込んでいる。

 被害者は、激烈なオンライン虐待と嫌がらせに直面し、アカウントを閉鎖して、インターネットから消えるようになったという。「彼ら(陰謀論者)が言っていることに圧倒されてしまった」とテイラーさんは語った。

 陰謀理論家こそが世の中を不幸にしているのかもしれない。