文/中村康宏

「肉を食べる人は長生きする」とか「高タンパク食が健康にいい」というのをどこかで聞いたことがあるでしょう。しかし、これらは本当に効果をもたらしているのでしょうか?

今回は「タンパク質」の役割と、その効果的な摂り方について解説しましょう。

■「タンパク質」の役割は体を作ること

「タンパク質(protein)」の語源は、ギリシャ語の「protos」に由来し、「一番」という意味です。つまりタンパク質は人間の栄養において一番大切なものという意味を反映しているのです。

タンパク質は、人間の体内で筋肉や髪の毛、血液、結合組織、免疫抗体、酵素などになる、人間にとって必須の栄養素です。タンパク質には体を作る働きがあり、主にエネルギー源として働く脂質や糖質と異なる役割を持つのです。

米国の栄養ガイドラインによると、一日の摂取カロリーの10〜35%をタンパク食から摂取することを推奨しています(U.S. Dietary Guidelines. 2015)。タンパク質の摂取比率を高める「高タンパク食」とは、35%以上のカロリーをタンパク質から摂取することです(Phillips SM, Appl Physiol Nutr Metab. 2006)

■高タンパク食の効果と特徴

高タンパク食の有効性については、多くの研究結果が報告されています。

(1)心臓病や糖尿病の予防
高タンパク食はコレステロールなどの血中脂質を改善させ、糖尿病や心臓病の予防に役立ちます (Appel LJ, JAMA. 2005) 。ただし牛肉や豚肉の取りすぎは、逆に心臓病や糖尿病、大腸ガンのリスクを高める可能性があるとされており、上手なタンパク質の摂り方が大切です(Pan A, Am J Clin Nutr. 2011)

(2)体重減少効果
高タンパク食は体重減少を期待することができます。とくにこの効果は短期間で顕著であったとされています。(Sacks FM, N Engl J Med. 2009)

(3)満腹感
タンパク質を摂ると、脂肪や炭水化物を摂るより少ないカロリーで人は満腹感を感じやすくなります(Halton TL, J Am Coll Nutr. 2004)。つまり、高タンパク食は少ない量で満腹感を得られやすく、総カロリー減少を期待できるのです。

(4)体温上昇効果
高タンパク食には体温上昇効果があります。体温が上がると、より多くのエネルギーが消費され、またタンパク質が体に貯留されやすくなります。これは消費カロリーを増やすといった利点があります。(Westerterp-Plantenga MS, Annu Rev Nutr. 2009)

(5)体組成を改善する
高タンパク食は体の近骨格筋率をあげ、エネルギーを消費しやすくします。(Westerterp-Plantenga MS, Annu Rev Nutr. 2009)

■タンパク質の源は肉のみにあらず

タンパク質といえばお肉、と考えがちですが、それだけではありません。肉さえ食べればよいというのではなく、他の栄養素とのバランスを考えながら、バランスよく上手に摂取しなければなりません。

【魚・鶏肉】
米国の心臓病学会は、タンパク源としてナッツや鶏肉、魚を推奨しています。牛肉や豚肉、皮付き鶏肉、ひき肉はタンパク質も含みますが、同時にたくさんの飽和脂肪酸(不健康な脂質)(詳細は脂肪の摂り方)を含むため、飽和脂肪酸の摂取は1日100kcal程度にした方が良いと推奨しています。

これは牛肩ロース100g、豚ロース肉180gに相当し、牛肉や豚肉ではすぐに推奨量をオーバーしてしまいますが、鶏胸肉なら4.3kg、マグロなら5.3kgに相当します。さらにこれらは低炭水化物食品(ほぼ0g)としても知られており、推奨される理由がわかります。

【ナッツ類】
ナッツは小粒の中に多くのカロリーを蓄え、脂肪分も多く、ダイエットしている人にとっては避けた方が良いと思われがちです。しかしナッツはタンパク質と良質な脂質(詳細は脂肪の摂り方)と食物繊維を多く含んでおり、体重増加を起こさず、体重減少に寄与することが知られています(Mozaffarian D, N Engl J Med. 2011)。

また定期的にナッツを食べている人は心臓病になりにくいという結果も出ています(Mente A, Arch Intern Med. 2009)

【ヨーグルト】
乳製品は身近なタンパク源ではありますが、注意が必要です。乳製品やカルシウムの摂取は体重減少に関与しない、または体重増加したという報告があります(Snijder MB, Obesity 2008)。しかし一方で、ヨーグルトの摂取は体重減少に関与したといいます。これは効果的な腸内細菌が体重減少に関与したためと考えられています(Mozaffarian D, N Engl J Med. 2011)

■高タンパク食で気をつけるべきこと

吸収されたタンパク質の処理は腎臓と肝臓で行われるため、肝機能や腎機能に問題がある場合は高タンパク食は推奨されません。もちろん問題のない人であっても、高タンパク食をされる場合は定期的な血液検査をお勧めします。

また、タンパク質の処理には上限があります。通常の推奨量は0.8g/kgですが、2g/kgのタンパク質摂取までは長期的にも安全であると報告されています(Cuenca-Sánchez M, Adv Nutr. 2015)

例えば、体重が60kgの方であれば1日120gまで、つまり480カロリーまでタンパク質から摂取していいことになります。これを超えたタンパク質は体内で脂肪に変換され蓄積されるので注意が必要です。

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以上、今回は「タンパク質」の役割と、その効果的な摂り方についてご紹介しました。高タンパク食が体重減少や心臓病や糖尿病といった病気の予防に役立つ一方、注意すべき点があることもお伝えしました。

「タンパク質=肉」と短絡的に考えたり、間違った知識で高タンパク食を実践しても、期待する効果は得られないことに注意してください。その上で、ぜひ他の栄養素とのバランスを考慮した、健康的なタンパク質の摂取を実践してくださいね。

文/中村康宏
関西医科大学卒業。虎の門病院で勤務後New York University、St. John’s Universityへ留学。同公衆衛生修士課程(MPH:予防医学専攻)にて修学。同時にNORC New Yorkにて家庭医療、St. John’s Universityにて予防医学研究に従事。