昨年「ポケモンGO」ローンチ以来、AR技術はより身近なものになりました。さらに、Appleの「ARKit」が発表されたことを考えると、それは間違いなく僕たちの生活の一部にある、と言えるんじゃないでしょうか。

だって、もうすでにIKEAは家具のレイアウトを試せるアプリを開発。教育分野にだって、影響があると考えられます。

ここでは、未来の歴史教育を示唆するプロジェクトとして、アーティストAsad Malikの取り組みを紹介します。

いるはずのない被害者たちが
“手の届く距離”に現れる

Malikのアートは、AR技術を使って、シリア内戦をよりリアルに体感してもらおうというもの。このプロジェクトには、彼のバックグラウンドが多分に影響していました。

パキスタンで育った彼は、当時の生活を「いつもテロに怯えていた」と語ります。でも、アメリカに移住したときから、違和感を覚えるように。

「可愛いネコのビデオやトランプ大統領をバカにした画像、このマットレスは寝心地がイイと謳う広告が流れるタイムライン。そして、そこに紛れるシリア内戦のニュース。戦争に加担している国なのに何か違う。アメリカに暮らしている人は、どこか遠い国の揉め事くらいの感覚なんだ」

アメリカ社会をこう表現するMalik。「Holograms from Syria」制作のモチベーションはここにあったようです。

映し出されるのは、傷ついた息子を抱える父親や銃を持っている兵士、倒れている子ども。最新技術とまでは言えませんが、非常に強いメッセージ性があります。

AR技術で大きく変わる
僕たちの”見る”という感覚

おそらく、Malikのプロジェクトは教育分野に大きな影響を与えるものとなるでしょう。

確かに、彼の言うようにニュースだけでは実感がわかない。だから、このように戦争を“見る(見せる)”ことの重要性もわかる気がします。あの第二次大戦のことさえ、教科書をスマホを通して見ることで、概要を表す文章の代わりに、戦々恐々とした当時の様子を体感できるとしたら…。

必ずしも、リアルを知ることばかりが良い訳ではありません。何をどこまで見せるべきなのかという線引きは必要になるだろうし、全てを知った気になってしまっては本末転倒。それでも、僕たちの“見る”という感覚や考え方、ひいては日常生活を大きく変えることは、間違いないんじゃないでしょうか。

Licensed material used with permission by Asad Malik