ソーシャルメディアで有名人だったカンディール・バローチさんを「名誉殺人」で殺害し、連行される実の兄(右)といとこ(2017年10月17日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】保守的な慣習が根強いパキスタンで、頻発する「名誉殺人」の流れを断ち切ろうと新たな法律が施行されて1年になるが、いまだに大勢の若い女性が、家族に恥をもたらしたという理由で親族に殺害されている。

 ソーシャルメディア上の有名人だったカンディール・バローチ(Qandeel Baloch、本名ファウジア・アジーム、Fauzia Azeem)さんが7月に実兄によって殺害された衝撃的な事件は、いわゆる名誉殺人のまん延を浮き彫りにし、殺害者を野放しにしている法の抜け穴をふさぐべきだという要求に拍車をかけた。

 ようやく3か月後に待望の法律が通過し、女性の権利活動家らは歓迎はしたものの慎重に見守った。そして弁護士や活動家らは、その後1年以上を経ても、今も警戒すべきペースで名誉殺人が起きていると言う。

 独立系人権団体「パキスタン人権委員会(Human Rights Commission of Pakistan)」の記録によると、2016年10月から今年6月までの間に少なくとも280件の名誉殺人が発生した。だが、この数字は過小評価で不完全だとされている。

 新法では名誉殺人に対し、終身刑を科している。だが、ある殺害を名誉殺人と定義するかどうかは裁判官の判断による。つまり実行犯は、別の動機を主張しさえすれば罪を免れる可能性があると、首都イスラマバードにあるカーイデ・アザーム大学(Quaid-i-Azam University)ジェンダー学部・学部長のファルザナ・バリ(Farzana Bari)博士は指摘する。

 パキスタンでこれを可能としているのは、キサース・ディーヤ法(同害報復・賠償法、Qisas and Diyat Ordinance)と呼ばれる法律だ。同法の下では加害者が犠牲者の親族に許しを求めることが認められており、特に名誉殺人では便利な逃げ道とされている。

 また裁判制度が入り組んでいるため、警察がしばしば当事者らに賠償金支払による和解を奨励し、複雑な司法制度を一切回避するよう仕向けることもある。

■名誉殺人の矛先は圧倒的に女性へ

「名誉」殺人のルーツは部族社会の規範にあり、今も南アジア一帯で広くみられ、特に女性の行動を支配し続けている。

 女性たちは縁談を断った、「間違った」男性と結婚した、友人の駆け落ちを手助けしたなどあらゆる理由で自分の家族に「恥」をもたらしたとして、射殺され、刺殺され、石で打たれ、火あぶりされ、首を絞められ、殺されている。男性も犠牲者となることはあるが、暴力の矛先は圧倒的に女性へ向く。

 名誉殺人の捜査を指揮するあるベテラン警官は匿名でAFPの取材に応じ、大抵のパキスタン人はレイプを犯した男は許すが、女性の場合は不倫を疑われただけでも家族に恥をかかせたとして、許されることがないと語った。むしろ名誉のために自分の妻や娘、姉妹を殺害する男性には、同情や称賛が集まるとさえ言う。

 弁護士で、女性の権利擁護団体「アウラ基金(Aurat Foundation)」で活動するベナジル・ジャトーイー(Benazir Jatoi)氏は、パキスタン社会は古い「名誉」の意味を越えることができていないと指摘する。「私たちが広く名誉殺人を非難するようにならない限り、誰も理解する者のいない時代遅れで独断的で家父長的な『名誉』の規範を女性たちが破ったと言って、彼女たちを殺して自慢する殺人者はいなくなりません」
【翻訳編集】AFPBB News