バンコクはタイ人だけでなく、日本人やフィリピン人、アフリカ系、アラブ系などによる詐欺事件も頻発している

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 前国王の崩御や政情不安、洪水などの自然災害で揺れ続けるタイだが、観光や短期出張、移住などで100万人を超える日本人が毎年訪れる。在住日本人も増え続け、2016年10月時点で外務省が把握する在留邦人が7万人を超えた。

 多くの日本人に好まれるタイではあるが、一方で犯罪被害に遭う日本人も少なくない。在タイ日本大使館の邦人援護件数は2015年で1028件。一時期は1位から外れたものの、長きに渡ってワースト1位であり続ける、悪名高き地域でもある。

 タイで日本人が巻き込まれる事件としては、稀に殺人被害者も出るが頻発するほどではなく、詐欺や窃盗が多い。命には関わらない、金銭などを奪われるケースが頻発している。外務省の統計では2015年は全世界で406人の日本人が詐欺に遭ったとしている。そのうちアジア地域だけで261人にもおよぶ。

 タイで被害に遭う詐欺は大きく分けて2種類ある。ひとつは長期滞在者や移住者がビジネス関係の契約で金銭を騙しとられるもの。もうひとつは観光客が飲食店やショッピングで欺されるものがある。前者の方はタイ人よりも跋扈する日本人詐欺師に商売用の資金を奪われることが多い。後者は小額ではタイ人のケースもあるが、高額になる場合は犯人はフィリピン人と見られることがよくある。

 観光ガイドブックや外務省の注意喚起で紹介されている古典的な詐欺にブラックジャック詐欺などがある。これはいろいろと口実をつけて日本人に近づき、民家でブラックジャックの賭けごとに誘い込み、賭け金を奪っていく。タイだけでなくベトナムでもよくあるようだが、犯人はフィリピン人グループの場合が多い。

 タイ人はブラックジャックのような手の込んだ詐欺はあまりしない。飲食店や物販店がボッタクリをしたりなどの単純な犯罪をよく耳にするくらいだ。ブラックジャック詐欺にせよ、多くが手口自体は判明しているので、本来は気をつけてさえいれば欺されることはそうそうない。

 そんな中、新手と思われる詐欺があったとある日本人から聞いた。誰にでも起こりうる、といった詐欺である。

◆店のマネジャーかと思ったら!?

 その話をしてくれたのは、日本人も多く訪れる巨大商業施設に勤める佐野勇介さんだ。バンコク都内のある中華料理店で起こったことだった。概要は以下のようになる。

 ある日、日本人団体客――60代と見られる男女8人が食事を楽しんでいた。個室でウェイトレスが専属でついたが、ほかに店のマネージャーらしき片言の日本語を話す男性が世話を焼いてくれていたという。そして、最後にその男性が「ビールなどこのまま飲んでいてもいいが、食事分だけ先に支払ってほしい」と言い、団体客は素直に応じた。ところが、最後に飲みものの精算をしようとすると、ウェイトレスは食事代ももらっていないと言い、団体客と店側が揉めることになった。

 佐野さんはある会合で偶然隣の個室を利用しており、入り口近くに座り、かつタイ語を話せる日本人だということでウェイトレスからヘルプ要請があったのだという。

「団体客はその男性を店の人だと思い、店側は団体客のガイドだと思っていたようです。実は私も通路で何度かその男性とすれ違っているのですが、上は緑のワイシャツ、下はスラックスのタイ人風の男でした。8000バーツ程度(約24000円)の料金を受け取り、ウェイトレスには食事に行ってくると告げて出て行ったようです」

 タイは多民族であることと、地方性が強いことからタイ語の方言は外国語と同じくらい発音や単語そのものが違う。そのため、必ずしも共通語としてのタイ語を流暢に話す人ばかりではない。また、先にも述べたように手の込んだ詐欺はタイ人はあまりしない傾向もあり、本人を目の前にしているウェイトレスや、カスタマーサービスでトラブル処理の経験も豊富な佐野さんから見ても、タイ人だとは断定できないそうだ。