武井壮

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 タレントの武井壮が、プロボクシングでWBA世界ミドル級のチャンピオンとなった村田諒太に「俺はまだ全然、喜べない」とコメントしたことに、批判が渦巻いている。さらに、ボクシングの関係者からも「同じことを亀田興毅にも言え」という声が飛んでいる。

 村田は10月22日のタイトルマッチで、王者アッサン・エンダムを下して王座奪取。これについて武井は、翌日放送のTOKYO MXの出演番組で「まだ本当のチャンピオンを倒してないと思うんで、ここで喜んだら村田の先がない」と厳しい見方を示した。

 武井は同じミドル級で世界タイトルを12度防衛したマービン・ハグラーや、そのハグラーを下している5階級制覇シュガー・レイ・レナードの名を出し、「そこらへんと比べるとまだ格下だと思うんで、ゲンナジー・ゴロフキンとか(ビリー・ジョー・)サンダースとか、タイトルを持ってるチャンピオンを倒して、何回か防衛したぐらいでやっと喜べる」と語った。

 これには「何様だ」と視聴者から反発が続出したのだが、武井の言い分は当たっているところもある。村田が獲ったWBAベルトは決して「世界の頂点」でも「WBAの頂点」でもないからだ。それは村田自身が試合後のリング上で「ボクシングファンは、自分より強いチャンピオンが上にいることを知っている」と言っていたことでもわかる。

 WBAは、タイトルマッチに支払われる承認料をより稼ぐため、インチキなタイトル水増しをしてきた団体として知られる。まず世界チャンピオンを「スーパーチャンピオン」に格上げし、チャンピオンが空位になったことにして王座決定戦を実施し、もうひとりのチャンピオンを作り、さらに「ランク1位と同等」などという理由付けで暫定チャンピオンも別に設置。3人が同じ階級の“王者”として並び立っていた。そのため、ほかのWBC、IBF、WBOの世界3タイトルの団体は、WBAのチャンピオンを「スーパー」のひとりしか王者と認めず、統一戦の話に応じないこともあったほどだ。

 村田の持つWBAベルトは、いわば“2番目”だが、3月まで3人のチャンピオンが並立していた。スーパーチャンピオンがゴロフキン、チャンピオンがダニエル・ジェイコブス、暫定チャンピオンがエンダムだったのだ。その後、ゴロフキンとジェイコブスが統一戦を行って王座は一本化されたのだが、WBAは懲りずに王座決定戦を組み、村田と暫定チャンピオンのエンダムに試合をさせたのである。

「本来なら、WBAチャンピオンはゴロフキンひとりでいいはずです。ただ、4団体のうち3つのタイトルを無敗の超大物ゴロフキンが持っていて、ミドル級は非常に狭き門だったんです。村田陣営は、もうひとつWBOタイトルを持っているサンダースと交渉をしていたんですが、まとまらず、苦肉の策でこぎ着けたのが5月のWBA王座決定戦でした」

 こう話すのは、ボクシングに詳しいジャーナリストの片岡亮氏。村田がWBAの“2番目”のベルトの決定戦に出ることは、片岡氏が正式発表の約2カ月も前にその動きをキャッチして、夕刊フジで書いていた。しかし、その試合は、まさかの判定負け。

「採点は物議を醸すものでしたが、八百長とまでは言えないもので、結果は覆っていません。でも、WBAは承認料のためだけにベルトを増産しているので、あっさり再戦を認めたんです。こういうのは、熱心なファンは“特別待遇”と見るんですが、村田は一流ボクサーでありながら大のプロボクシング通でもあって、ファンの気持ちがわかるので、リング上でああいう発言をしたんでしょう」(同)

 そうなれば武井の指摘も「もっともだ」となるわけだが、片岡氏は「『喜べない』というのは意地悪すぎる」と反論する。

「ベルトだけにこだわれば、その価値について説明する必要がありますが、村田が名のある有力選手に圧勝したのは事実。これでゴロフキン戦とか本当の頂点を目指せる立ち位置まで来たのですから、喜んで当然ですよ。日本人で、ほかに誰がこんな偉業を達成できるかと」(同)

 一方、武井が亀田興毅と親交を持つことで知られているため、ファンからは「同じことを亀田に言え」という声も聞かれる。3階級で世界チャンピオンになった亀田だが、バンタム級ではWBA“2番目”チャンピオンだった2013年、WBAからスーパーチャンピオンだったアンセルモ・モレノとの統一戦を指示されるや、王座を返上して逃亡したことがあるからだ。当然、この話はファンの大ヒンシュクを買っており、その後にWBAフライ級チャンピオンになった井岡一翔も、スーパーチャンピオンと統一戦をやらなかったことから批判を浴びている。

「亀田も井岡も軽量級で、村田のミドル級よりずっと競争率が低いクラスなのに、スーパー王者と試合をしなかった。村田のミドル級は欧米人の強豪がひしめき合い、ランク15位までに入るのも難しい階級です。エンダム戦の勝利だけでも、十分快挙。レナードとか、時代も違う超大物の名を出して比べるのもナンセンス」(片岡氏)

 武井の理屈で村田の勝利を「喜べない」とするのは、一定の根拠こそ認められるが、村田だけに当てはまる批判ともいえないようだ。
(文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)