先輩からの誘いということで、判断基準が不明確になってしまっているのかもしれない(写真:ABC / PIXTA)

→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

はじめまして、社会人4年目、26歳の男です。プロ経営者として転職した先輩についていくか悩んでいます。大学時代より付き合いがある会社の先輩がプロ経営者として転職しました。転職先は、売り上げ規模が3ケタ億円以上、グローバルに展開しています。そんな先輩から、直下のポジションで誘われて悩んでいます。
ご回答いただくにあたって、以下に、私事を記載します。私は新卒入社した会社を2年で退職し、社会人3年目に現在の大手メディア企業に転職しました。職種は、管理会計を3年間担当し、この春からコンプライアンス分野の企画職を担当しています。
これは、『論語と算盤』の「論語」の部分における経営者の考えに触れたい、グループのこの分野における方向性を策定したいと思い、希望した結果です。
将来の目標は、東南アジアにおいて事業経営を行い、日本とアジアの経済発展に寄与したいと思っています。今の会社に大きな不満はなく、当初は、現在の部署で仕事をした後、事業企画を経験し(異動の確約はありません)、海外の大学院に行くことをプランAとして考えていました。
そのような中で、経営者になった先輩のそばで事業運営に携わることは、大企業の中で事業運営を行うより、人数も少なく責任範囲が大きいため、成長できる環境があるのではないかと思っています。
しかしながら、2社目が短期間の在籍となること、先輩個人にキャリア形成を依存しすぎること、業務内容が不透明かつ自分の能力以上のことを求められている気がして悩んでいます。以上の状況において、安井様でしたらどのような判断をしますか。
20代に転職を経験され、今回経営者として前職に戻られた安井様から、転職する際の判断軸や、経営者として転職した方が、知り合いを引っ張りたいと思う気持ちの背景などを含めて教えていただきたいです。ご回答のほど何とぞよろしくお願いします。
会社員 わたる

まず、転職するか否かを考える前に、きちんと求められているミッションや業務内容を明確にしましょう。そうでないと、判断できないはずです。

判断材料をキチンと把握しましょう


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転職とはつまるところ現職を含めた自分にとっての選択肢の比較検討です。比較検討をするにあたっての材料をキチンと把握しましょう。

わたるさんの今回の場合は、先輩からの誘いということで判断基準が何かと不明確になってしまうかと思います。しかしながら、先輩後輩に関係なく、転職とはご自身のキャリアと人生にとっての重要な分かれ目であり、重要な意思決定ですから、意思決定するための判断材料を明確化することが何よりも大切です。

そしてそのうえで、今回の転職で求められていることが、わたるさんご自身が今後やっていきたいと思えることと方向性が合致しているか否かを確認すべきなのです。

先輩から誘われた、というのはきっかけにすぎません。きっかけをもとに、何を求められているのかをほかの選択肢とともに冷静に判断するべきです。

さて、この先輩氏。会社の先輩ということで、ある程度はわたるさんの仕事ぶりを理解されている方なのでしょう。そのうえで誘っているということは先輩氏にも何か思うところがあるはずです。

私自身も前職時代の部下に現在の会社に入社してもらったりしていますが、やはりそれは既存の会社メンバーでは足りない能力やファンクションをその人のスキルと経験で埋めることができる、つまり既存メンバーにない具体的な付加価値をその人が提供できると判断してのことです。

加えて、お互いにお互いの仕事ぶりや性格を理解していますから、「やりやすい」というのもあります。これは仕事をスムーズに進めるうえでの相性の問題ですね。

そういった仕事ぶりと性格なりを理解し、まったくの第3者を外からリクルーティングしてくる以上の安心感があるため、つまり採用に伴う不確実性を大幅に軽減できるがゆえにそういった行為に及ぶわけです。そして、現状の会社に足りない部分と候補者の仕事ぶりの両方を理解している状況の中、その両者が補完しうることを確信したからこそ声をかけたわけです。

今回のわたるさんのケースでも、先輩氏は必ず何かしらの思いがあって声をかけているはずです。そのような先輩氏がわたるさんに対して期待していることと、わたるさんのやりたいこととのギャップがあるのか否か、そしてなぜわたるさんなのか、そういったことを真摯に話し合うべきです。そしてそのうえで、悩むべきなのです。

ちなみに、転職における私のいちばん重要な判断基準は、その転職をすることによって、その先の自分にとってのキャリア上の選択肢が広がるか否か、です。

そのような判断を下すにあたっても、具体的な業務内容や求められていることを明確化しないと判断のしようがありません。

先輩ということで、一般の転職面接よりも突っ込んだ話ができる間柄でしょうから、ここはぜひ納得のいくまで話し合ってみましょう。

私自身も、特に知り合いに声をかける場合は、知り合いであるがゆえに明確化せずになぁなぁになってしまうことを避けるべく、通常の面接よりも多くの時間と機会を設けます。実際にそのような場合には、会社の会議室のほかに食事などをしながら、雰囲気と場所を変えてお互いが納得するまでとことん毎回話し合います。

知り合いであるがゆえの甘えで自分自身の判断が濁らないためもありますが、やはり候補者の方にも納得して入っていただきたいからという理由が大きいのです。

「誘われたからついていく」では自分自身の判断が不在

転職判断とは、つまるところ双方向の判断が求められますから、お互いが理解し合って、納得し合っていることが大切なわけです。

わたるさんもそういったことを通じてお互いを本当に理解したうえで、わたるさんの今後のキャリアにとって現在の会社に残るのがよいのか、それとも転職をするのがよいのかを判断するべきです。

往々にして、先輩や上の立場の人はより大所高所の視点から客観的に部下を見ているものです。

今回転職をするしないにかかわらず、先輩氏のわたるさんに対する評価などを聞くことで今後のキャリア形成上の大きなヒントを得られるかもしれませんから、ぜひここはゼロベースでとことん話し合ってみてください。

「誘われたからついていく」では自分自身の判断が不在ですから、熟慮したうえでの転職ではありません。人生の大きな判断であるがゆえに、転職には熟慮が求められますから、納得するまで情報収集と協議を重ねましょう。

わたるさんが納得したうえで、大きなキャリア上の判断をされることを応援しております。