台風の影響もあって、事前準備には普段以上に苦心。様々な状況を想定してシミュレーションを重ねた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第30回。テーマは「悪天候」だ。今節では台風の接近によって試合開催のためのいくつかのプランを提示され、様々なシミュレーションをしたという。
 
 先にスタジアム入りしたマネージャーから「ピッチは水浸し」だという報告を受け、準備してきた対G大阪対策の放棄を一時は決めたが……。ゲーム開始前から頭を悩まされた一戦を振り返ってもらった。
 
 
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[J1リーグ31節]G大阪 1-1 仙台/10月29日(日)/吹田S
 
 今節は台風の影響もあって、ゲームそのものだけでなく事前準備にも苦心した。前日にマネージャーと強化部から、試合開催に対してのいくつかのパターンが提示された。
 
 まずひとつは、通常通りにキックオフをする。もうひとつは時間を遅らせる。次に翌日の月曜日に行なう。それだけではなく、ルヴァンカップ決勝戦の前日、11月3日に試合をする案も出ていた。
 
 その一つひとつに対して、どう対処するかのシミュレーションをした。キックオフ時間が大幅に後ろ倒しとなるならば、合わせて試合食の時間をズラさなければならない。もし月曜日開催ならば、もう1泊することになるが、身体を動かす場所は確保できるのか。
 
 11月3日になるならば、1日オフを作って、再びコンディションを整え直さなければならない。決断は当日の朝10時、ガンバ側もリリースを出すという話だったので、それまでにできる限りの用意をして、その決断を受け入れようと考えていた。
 
 予定通り、16時キックオフとなった。スケジュールは変わらないが、ピッチ状態によってはキックオフ時間が少し遅れる可能性も残っていた。そのため、先にスタジアム入りしているマネージャーに「ピッチを確認してほしい」と連絡をしておいた。
 
 すると、「どの箇所に水が溜まっているとかではなく、水浸しです」と。ボールが転がる状況でないのはそれだけで想像できたし、しかも雨は降り続いている。市立吹田サッカースタジアムは水捌けが抜群というわけではないので、「ゲームプランを変えないといけない」と考えた。
 
 試合前のミーティングでは準備してきたG大阪対策をサラッと流して、その後に「今日はボールが走らない。それならば、相手ゴールに向かうことだけを考えよう」と話した。細かい部分はゲーム前までにもう一度整理して指示するつもりだった。
 ピッチ状態が悪い、ボールが走らない試合になった時に大切なことは、とにかく“闘う”ことだ。相手よりも多く走る、球際で勝つ。それは我々が普段から強調していること。その部分で相手をどれだけ上回れるかが勝敗を決める。
 
 その指示には、天候が天候だけにそうせざるを得なかったということ以外に、私自身のなかで狙いがあった。ルヴァンカップも天皇杯も敗退し、リーグ戦では優勝争いやACL出場権、残留争いにも絡んでいない。シーズン最終盤に入ったが、どうしても目標を見失いがちだ。
 
 それを払拭するには、「とにかく目の前のゲームに必死になる」こと。開催すら危ぶまれる悪天候のなか、大阪まで駆け付けてくれたサポーターにも、そういう姿を見せなきゃいけないという気持ちがあったので、グラウンド状態が悪いのも、ある意味で良い機会だなと思った。
 
 試合開始直前にはだんだん雨が上がってきたのだが、「いつも通りで大丈夫」という指示を出して、想定外のところでボールが止まってしまうのも困る。そのため、最初は割り切って、「蹴って走れ」と選手たちを送り出した。
 
 だが、蓋を開けると思いの外ボールが走った。それを確認してから、積み上げてきた仙台のサッカーを選手たちが自主的に選択してくれたのは良かった。「監督に言われたから前に蹴り込むんだ」とはならずに、ピッチ内の判断で戦い方を変更してくれた。