食べ方によって表現が変わります(写真:oksix / PIXTA)

近年、四季があいまいになってきた気がするのは筆者だけでしょうか。特に春や秋のほどよい気温の季節がやけに短くないですか?

今年も「つかの間の秋」になるのかどうかはわかりませんが、先週、ある企業で研修生のハナコさんが秋の味覚、ナシとザクロを筆者に持ってきてくれました。These are for your wife. (奥様にあげてください)と言われたので、Why are they not for me? (なんで私にではないの?)と聞くと、そこには答えず、「えーと」と悩んでから日本語で「ザクロって英語でなんて言うんですか?」とハナコさん。

このやりとりから、この日はフルーツの話のまま研修に突入することになりました。

秋のフルーツは難題!ザクロ、カキ、イチジク、アケビ


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英語でザクロはpomegranate/ˈpɑməˌgrænɪt/と言うのですが、長くて発音が難しいかもしれませんね。「パムグレネットゥ」のような感じで言ってください。昔のフランス語のpomme(リンゴ)+grenate(種の多い)が語源のようです。「種の多いリンゴ」なんて面白いですよね。実際に種がたくさん入ってますもんね。

ハナコさんに教えると、何度かpomegranate、pomegranateと発音練習してからPomegranates are good for women.(ザクロは女性によい)と説明してくれました。ああ、だから「奥様に」だったのですね。「特に種がよい」と言うのですが、ザクロの種って食べますか? 筆者はスイカの種のようにプップッと吐き出しますが……。

すると、それを聞いていたカナコさんが、The other day, I saw…(そういえば、この前見かけたんですが……)と言葉を詰まらせてから、「イチジクはなんて言うんですか?」と聞いてきました。イチジクも秋のフルーツですよね。英語でイチジクはfig/fɪg/ 「フィグ」と言います。よく聞き取れなかったのか、タロウさんがwig?(かつら?)と驚いた顔をすると、クラスメートたちが口をそろえてfig!と叫んでいました。

タロウさん、バツが悪く話をそらそうとしたのか、イチジクのことは無視してHow about “kaki”?(「カキ」は?)と聞くのでpersimmon/pɚˈsɪmən/「プースィムン」と答えると、possum?(フクロネズミ?)と、また聞き間違えていました。

pomegranate ザクロ
fig イチジク
persimmon カキ

確かに秋のフルーツは、パッと英語で思いつかないものばかりですね。もちろんapples(リンゴ)やgrapes(ブドウ)のように、みんながよく知っているものもありますけど。

本気か悪のりかはわかりませんが、今度はジロウさんがWhat do you call “akebi” in English?(アケビは英語でなんて言うんですか?)と質問してきました。筆者は、米国でも英国でもアケビを見たことがないので、なんと言うのかわかりませんでした。たぶん、米英にはアケビはないと思います。

後で調べたら、akebiaとかakebiと言うみたいです。ただ残念なことに、これらの単語を言っても、そもそもアケビを知らないネーティブには通じないでしょう。ネーティブどころか、タロウさんとカナコさんは、「アケビって見たことない」と言っていました。確かに、最近見かけないですね。子どもの頃、筆者の田舎では山になっていたのを覚えていますが……。タロウさんにいたっては「ザクロって初めて見た!」と、筆者がもらったザクロを興味深そうに360°グルグルとまわしながら、まじまじと眺めていました。Have you seen a fig?(イチジクは見たことあるの?)と彼に聞くと、上の空でうなずきながら、ザクロに夢中。

それはそうと、ハナコさんにThen the pears are for me, right?(じゃあ、ナシのほうは私へのプレゼントでいいよね?)と言ったら、仕方なさそうな顔でSure.(どうぞ)と言われてしまいました。スーパーでザクロを見つけて、珍しいので買ってきてくれたようなのですが、「ナシはオマケで買ってきたのだから、そっちは先生でいいです」って。かしこまりました、私はオマケで十分です(笑)。

食べ方によって表現が変わる?!

フルーツ談義で盛り上がっているうちに、研修開始時間をとっくに過ぎていたことに気づいた筆者と研修生。せっかくフルーツの話をしていたので、Favorite fruit(大好きな果物)という話題でウォーミングアップをすることに。ペアになって好きな果物の話をしてもらいました。

I like 〜.と言うときには、基本的に数えられる名詞は複数にすると学校では習いましたよね。それでも間違えてしまう方が多いのですが、こんな笑い話は聞いたことがありますか。

動物の話をしているときにI like dogs.(イヌが好きです)と言うべきところで、I like dog. と言ってしまうと、「イヌ」が不可算名詞になり、「イヌの肉」が連想されて「イヌを食べるのが好きです」のように聞こえてしまいます。

I like dogs. (イヌが好きです)
I like dog. (イヌ肉が好きです)

研修生たちはこれをきちんと理解していたようで、しっかりと複数形を使って好きな果物の話をしていました。こんな声が聞こえてきました。

○ I like grapes. (ブドウが好きです)
○ I like apples. (リンゴが好きです)
△ I like melons.
○ I like strawberries. (イチゴが好きです)

「メロンが好き」なジロウさんも、みんなと同じようにI like melons.と言っていました。ですが実はこれ、間違いなのです。いや、間違いと言うと言いすぎかもしれませんが、通常ネーティブは、

○ I like melon. (メロンが好きです)

と言います。

なぜかというと、メロンはふつう丸ごとひとつ食べることはないので、「切り分けた」イメージが強いのです。ですから、食品としては不可算名詞(数えられない名詞)で扱うんです。以前話した、a chickenchickenの違いと同じイメージですね。ですから、I like melons.と言うと、文法的には間違っていないのですが、「丸ごとメロンを何個も食べる」ようなニュアンスになってしまいます。

また、スラングでmelonsは女性の胸のこと(特に大きめなもの)を表すので、まったく違う話をしているようにも聞こえてしまいます。男性のみなさんは、女性に向かってI like melons.なんて言ったら、「セクハラ!」と言われてしまうかもしれませんので注意しましょう。

△ I like melons. (メロンを何個も丸ごと食べるのが好きです)

メロンに限らず「大きいフルーツが好き」と言うときには、sを付けずに不可算名詞で言うのが自然です。

I like melon. (メロンが好きです)
I like watermelon. (スイカが好きです)
I like pineapple. (パイナップルが好きです)

境界線を求めて…

するとカナコさんから「素朴な疑問なのですが……」と質問されたのが、どの大きさの果物からsが付かなくなるのかということ。考えたこともありませんでした……。確かに中間にあるものは、丸ごと食べる人もあれば、切って食べるのが当然という人もあって、その個人差が微妙かもしれませんね。orangesapplesは明らかにsを付けますが、mangograpefruitあたりはどちらでもいけそうです。

とりあえず「中くらいの大きさのフルーツはsを付けても付けなくても、どちらでもOKだと思う」と答えました。ただ、筆者も確信まではなかったので宿題にさせてもらって、オフィスに戻ってから同僚のジョンに聞いてみました。

ジョンいわく、mangoは「sを付けても付けなくてもまったく変じゃない」とのこと。grapefruitは「自分は付けないけど、誰かがsを付けて言っても『おかしい』とは思わない」とのことでした。

○ I like mangoes / mango. (マンゴ―が好きです)
○ I like grapefruit. (グレープフルーツが好きです)
△ I like grapefruits. (グレープフルーツが好きです)

近くにいたジョージにも聞いてみたら、同意見でしたが、「grapefruitsと言うと、丸ごと食べている感じがする」と、やっぱりmelonsの印象と同じですね。だからといって、リンゴだっていつも丸ごと食べる人ばかりではないと思いますが、小さい果物は実際に「丸ごと食べるか、食べないか」は意識せずに複数形を使うのでご心配なく。

フレーバーの話のときは?

逆に、本来複数で言うべき果物を不可算名詞にすると、ニュアンスが変わってフレーバーの話に聞こえます。

I like apple. (リンゴ味が好きです)
I like grape. (グレープ風味が好きです)
Do you have blueberry? (ブルーベリー味はありますか?)
Do you have mango? (マンゴ―風味はありますか?)

ぜひ覚えておいて、ジュースやキャンディ、ガムなどのフレーバーの話のときには、その果物のサイズにかかわらず不可算名詞にしましょう。

よほど珍しかったのか、ウォーミングアップの最中、ずっとザクロを握りしめていたタロウさん。ハナコさんがくれたザクロは2つあったので、「研修のあとで、1つタロウさんにも食べさせてあげよう」と提案すると、ハナコさんも「先生がよければぜひ」と言ってくれました。

研修が終わるやいなや、心待ちにしていたタロウさん I want to see the inside of the pomegranate!(ザクロの中身見てみたい)と筆者のもとにやってきました。ザクロを渡すと、うれしそうに席に戻って、どうやってむこうかと迷っています。ハナコさんが「包丁がないから、上の部分から手でむくしかないよ」と言うと、Okay!(了解!)と言ってむき始めたのですが、なかなかうまくいかずに苦戦。ようやく実が出てきて、数粒食べてから「労力に見合わない!」と文句を言っていました。

ほかのクラスメートも一緒につまみ始めたのですが、気づいたらみんなザクロの赤い汁がスーツに飛び散って、細かい水玉模様のようになっていました。

We’ve learned you’d better not eat pomegranates at work. (職場でザクロを食べるととんでもないことになるということがわかりました)