非行に走る子ども達にご飯を。83歳「ばっちゃん」が大反響

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 その人は、広島市に住む中本忠子(ちかこ)さん、83歳。

 現在は引退していますが、30年以上にわたり保護司をつとめていました。

 保護司とは、保護観察官とともに、非行に走った子どもたちの生活指導や更生の手助けをするボランティアです。

◆子どもたちに無償でごはんを振る舞い続ける

 中学校が荒れていた1980年代。PTAの活動中、「不良少年のあしらいが上手だから、保護司をやってみたらどうですか?」と警察官から言われ、「やってみようかね」と気楽に引き受けたのがすべての始まりでした。

 保護司をするうち、万引きやカツアゲ、暴走行為、シンナーなど、非行に走る子どもたちの中に、満足に食事をしていない子どもがいることに中本さんは気づきました。

「シンナーを吸っている間はお腹が空いていることを忘れられる」

 ひとりの少年の言葉をきかっけに、中本さんは子どもたちに無償で手料理を振る舞うようになりました。

 その少年の学校には給食がなかったので、中本さんがお弁当を作って学校まで持って行く。

 その少年が「友達でもごはん食べられてないやつがいるから連れて行っていい?」と友達を連れてくる。その友達が友達を連れてくる。

 そうして中本さんの自宅は子どもであふれかえるようになっていました。

◆お腹がいっぱいになれば、子どもは悪さをしない

 毎日何人分ものごはんを作り、1日に3升のお米を炊くこともありました。スーパーで事務の仕事をしていたので、上司に事情を話して売れ残った食品を持って帰ることができたのはとても助かったそうです。それでも足りないときは自分の貯金を切り崩してご飯を作り続けました。

 お腹がいっぱいになれば子どもは悪いことはしないと中本さんは言います。

「お腹が空いたときといったら、悪さをすることしか頭にない。子どもらっていうのは。男の子なら、万引き、カツアゲ、ひったくり。女の子じゃったら売春。お腹が空いたときに考えるいうたら、それしかない。これは、10人中、10人がみんな!」

 ご飯を食べに来るのは、さまざまな境遇にいる子どもたちです。しかし「ウチに来る子で、貧困の子どもはいない」と中本さんは言います。

「子どもの親はたいてい生活保護をもらっていて、ウチの年金より多い」というのがその理由です。問題の本質は、お金がお酒やクスリ、ギャンブルなどに回って、子どもの食べ物にまわっていないことなのだそうです。

◆居場所のない子どもたちが、ばっちゃんの家へ

 中には、親から虐待を受けたり、家から閉め出されたりなど、家に居場所がないこどもたちもいます。「どっこも行くところないときは、ここに帰ってくるじゃろ?」と子どもたちに言い聞かせ、子どもを家に泊め、あるときは中学生の男の子6人が半年も家にいたこともあったそうです。

 子どもが補導されれば、警察まで身元引き受けにゆき、警察の取り調べが不当だと感じれば警察署へ怒鳴り込み、子どものためなら土下座も辞さない……。

 365日24時間子どもたちと向き合う中本さん。

 このような大変なことをなぜ続けてこられたのでしょうか?

「私が手を引いたら、この子たちはどうなる? 誰も見てくれないということになったら、やっぱり私がせんにゃいけん。子どもたちの顔を見てごらん? かわいいじゃろ。子どもの顔を見よったら、せんにゃおれんようになる」

◆NHKスペシャルで大反響、書籍にも…

 子どもの貧困がたびたび報じられ、「子ども食堂」などの地域活動も盛んになってきましたが、中本さんは40年近く前から、誰に喧伝することなく活動を続けてきました。

 今年1月にNHKスペシャルで「ばっちゃん 〜子どもたちが立ち直る居場所〜」が放映され大反響を呼んだので、ご存じの方もいるでしょう。番組は好評につき、11月3日に再放送されることが決まったそうです(午前11時〜)。1月の放映を見逃した方は是非ご覧ください。

 また、この番組を作ったNHKのディレクターは、8年にわたり中本さんを取材しています。このたび、中本さんの活動をまとめた本を上梓しました。

『ばっちゃん 〜子どもたちの居場所。広島のマザー・テレサ』

 先の選挙では「排除」という言葉がキーワードとなりましたが、世間からつまはじきにされそうな子どもたちに手をさしのべ続ける中本さんの姿に、私たちも大きな気づきを得られるでしょう。

<TEXT/女子SPA!編集部>