勝利の方程式は「ポジティブ予測x目的地の意識」

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10年ぶりの”バブル”とも呼ばれる半導体装置業界の中でも好調な東京エレクトロン。その背景には経営者の「ポジティブ思考」と「長期的視点」によるいい相乗効果があった。

「『ほらね。想定通りになったでしょ』と決算説明会で伝えたんですよ。皆様、苦笑いされてましたけどね」

東京エレクトロン社長の河合利樹のその言葉こそ、2016年1月の社長就任以降の軌跡を物語っている。

半導体製造装置メーカー最大手の同社の業績は、活況な半導体業界の恩恵を受けて絶好調。ただ、市場のビッグウェーブをつかまえただけの僥倖と受け止めるのは間違いだ。17年3月期の売上高は前年比20.4%増と、WFE(半導体前工程製造装置)市場の成長率11.5%増を大きく上回った。市場の成長率以上の伸びを見せている背景には、河合ならではの”ポジティブな見方”があった。

─社長に就任した当時、市場をどのように見ていたか。

15年当時は、半導体製造装置市場の成長性に危機意識を持つアナリストが多かった。18─24カ月で半導体の集積度が倍になる”ムーアの法則”が鈍化したため、半導体メーカーは多大な研究開発や設備投資費を要する技術的なチャレンジを抑え、我々はコスト競争にさらされる。15年3月期のWFE市場は319億ドルだったが、成長は止まるという見方が大半だった。

一方、私は”エキサイティングな市場予測”をしていた。20年3月期のWFE市場を370億ドルと想定。300億ドルでも利益を確保できるビシネスプランもつくったが、17年3月期は350億ドルで、現実はポジティブなシナリオのほうに近づいている。

─なぜポジティブな予測ができたのか。

もともとポジティブ思考だが、市場を中長期的に見ればわかる。具体的には、IoT時代の到来とそれに伴う市場の広がりが大きい。接続機器が増え、データ通信の総合量は年率24パーセント増える。クラウドコンピューティングも盛んになり、サーバーの高機能化は不可避だ。さらにAR(拡張現実)やVR(仮想現実)など新しいアプリケーションも登場している。

短期にはいろいろ起こりうるが、まっすぐ伸びている竹の小さな節のようなものに過ぎない。

IoT時代は装置メーカーに求められる技術水準も高まるが、そのことも成長への自信につながっている。今後、半導体産業における技術革新は2つの観点で相乗的に起こるだろう。ひとつはデバイスに求められる高性能化。大容量化や高速化はもちろん、自動運転の普及などには高信頼性が欠かせず、低消費電力化も必要だ。

もうひとつは新構造などプロセス性能への技術革新だ。具体的には3D化や新材料の採用、新デバイスの登場、新しいパッケージング技術の開発だ。市場からの技術要求が高まるほど、技術力や経験、豊富なプロダクトラインナップを持つわが社が活躍するチャンスが広がるだろう。

─中長期的な視点をどう身につけたか。

デスティネーション(目的地)の意識が重要だ。街を歩く人に「何をしているのか」と尋ねて、「歩いている」と答える人はいない。普通は「駅に向かっています」とデスティネーションを意識しているはずだ。

ところが仕事になると、「キーマンは誰だ、この機種を売る」といった方法論が主になり、「どんな果実(成果)を得たいのか」といった最終的なゴールが忘れられがちになる。近視眼的に目の前で起きることに一喜一憂する傾向になる。中長期的な目的地を明確に持つことが大事だ。車の運転でも、安全運転のために、直前の車のみを見ないようにするのと同じだ。

─370億ドル市場で勝つための方法論を聞きたい。

強いネクストジェネレーションプロダクトを持ちたい。そのためには伸びるセグメントへのフォーカスが必要だ。弱気な予測だとリスク分散で複数のセグメントに投資したくなるが、必ず伸びる確信があるので、半導体とFPD(フラットパネルディスプレー)に投資を集中させた。研究開発のリソースを共有するため、ビジネスユニットも6つから4つに再編した。技術的なシナジーが見込めるうえに、重複した開発が回避できて効率化にもつながる。

一方、コモディティ化への対応も急務だ。じつはIoTで求められるのは付加価値の高いものばかりではなく、むしろコストの低い汎用製品のニーズも高まっていく。一般的にコモディティ化はネガティブ要因とみなされるかもしれない。

しかし、そこにもオポチュニティがある。当社の出荷済み装置台数は業界最大規模。メンテナンスなどのスマートサポートサービスを展開して、お客様の装置の稼働率を最大化していくフィールドソリューション事業は将来性が高く、大いに期待している。

かわい・としき◎1963年、大阪府生まれ。86年明治大学経営学部卒業、東京エレクトロン入社。2015年代表取締役副社長、最高執行責任者、事業推進統括本部長、事業推進統括本部ビジネスユニット本部長。16年より現職。