幕末志士の名言を乱用するおっさんに菅野完が苦言「現実とファンタジーを区別できないアホ」

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 世に多くの名言集があふれ、SNSでは日々意識の高い気付きの言葉がシェアされる昨今、言われると思わずイラッとするフレーズがあるのも事実。人心を掴むのに有効な「使える名言」と「イラつく名言」にはどんな差があるのだろうか?

◆幕末の志士の名言に心酔する司馬遼太郎ファンにご注意

 数ある名言のなかでもアラフォーサラリーマンが大好きなのが、坂本龍馬をはじめとする幕末の志士たちの名言。彼らの多くが、子供のころに出会った司馬遼太郎作品を基に英雄像をつくり上げている。

「衆人がみな善をするなら、おのれ一人だけは悪をしろ。逆も、またしかり。英雄とは、自分だけの道を歩く奴の事だ。」(司馬遼太郎『竜馬がゆく』より)など、新しい時代を夢見て幕末の動乱を駆け抜けた男の言葉は、確かに現代を生きる我々にも力を与えてくれる。

 だが、こうした言葉を盲目的に信奉するサラリーマン諸兄に苦言を呈するのが、週刊SPA!巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」でもおなじみの著述家・菅野完氏だ。

「『竜馬がゆく』で描かれる坂本龍馬をはじめとして、司馬遼太郎作品では男の誕生、成長、苦難、変身、成功が非常にわかりやすい等身大の物語として描かれるため、感情移入がしやすい。でも、あくまで司馬作品は史実ではなくファンタジーです。今まで歴史上注目されてこなかった人物に新たな解釈を加え、達者な文章で描いたのだから、魅力的なのは当たり前。それをリアルな人物像として捉え、自分と重ね合わせて陶酔しているのは、現実とファンタジーの区別ができないただのアホですよ。現実の仕事の世界に勝手なヒロイズムを持ち込まれたら迷惑でしかない。いわんや政治の世界をや、です」

 ファンタジーのなかの名言だと理解したうえで参考にするべきなのだ。

【菅野完氏】
著述家。’74年生まれ。サラリーマンの傍ら執筆活動を開始。『日本会議の研究』は、第1回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞受賞

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