Tシャツなどをセットしたカセットをプリンターに差し込むだけで、簡単に印刷できる(「リコー Ri 100」)

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芸術の秋―。スマートフォンは多くの“写真家”を生み出した。作品をスマホの外に出し、手軽にTシャツやバッグなどの布製品に印刷できれば、写真の楽しみ方が広がる。子どもの絵も違う形にできる。リコーは低価格で簡単に使える布用プリンターを開発し、新しい印刷市場づくりに挑む。CIP開発本部の森田哲也本部長に戦略を聞いた。

―秋に国内発売する「リコー Ri 100」は、オフィス用小型プリンターと同等サイズで、50万―60万円という低価格を見込んでいます。

「開発当初から、競合の3分の1程度で、驚異となる価格を目標にした。オフィス用プリンターの技術を応用し、安く、コンパクトな製品を実現した。初心者でも、狭い店頭でも、簡単に安全に使えるように考えた」

―使い方は。

「まず位置決め用の透明トレーをTシャツなどの上に重ね、これを目安に“フリクションペン”で印を付ける。この印が四隅になるように、カセットに取り付ける。装置は、インクジェット(IJ)プリンターと、熱をかけてインクを定着させる仕上げ機の上下2段重ね。まず仕上げ機にカセットごと入れて布にアイロンをかけ、順番にIJ印刷と仕上げを行う。カセットの挿入場所を変えるだけ。数分で完成する」

―どこでの利用を想定していますか。

「アイデア次第だ。テーマパークの物販ワゴンや観光地の土産物店などに置けば、現地の体験をそのまま持ち帰れる。アパレルショップでは、好きなデザインのTシャツをその場でつくれる。また、個人事業者が少量多品種の受注生産もできる」

―音楽フェスや芸術祭など、体験型消費と相性が良さそうです。

「マーケティング活動で、ゴルフの全英リコー女子オープン会場にプリンターを持ち込み、大会トロフィーとの記念写真をTシャツにプリントしたところ、人気が集まった。実際に使ってみると、印刷する間にお客さんと会話が弾むという利点も分かった。高温部分が露出していない安全設計のため、いろいろな場所に持ち出せる」

―販売地域は。

「日本やアジアから始めるが、Tシャツ文化のある米国も商機がある。欧州はデザインや芸術が好きな人が多い。地域ごとに違うニーズがある。複写機の顧客は管理部門だが、この製品は実務部門へ売りに行ける商材だ」

―IJの用途拡大に取り組んでいます。

「IJ技術には40年以上取り組んでいる。耐久性の高いIJヘッドが強みだ。このプリンターだけでなく、建材やインテリア、包装材への印刷、プリンテッドエレクトロニクスなどにも広げたい」

【チェックポイント/一点物のモノづくり後押し】
今、個人消費のトレンドはじわじわ変化している。大量生産の安い商品を求める一方、自分だけの一点物を持ちたいというニーズも着実に増えている。また、情報通信技術(ICT)によって個人や小規模事業者による販売も簡単になり、ハンドメイド品を取り扱うスマホ用アプリケーションも複数ある。リコーの布用プリンターは布へのプリントを簡単にし、この消費トレンドの波に乗れる可能性がある。個人による一点物のモノづくりを後押しできそうだ。
(聞き手=梶原洵子)