民進党代表は、混乱で引き受け手がいない中、参院議員の大塚耕平氏でとりあえず収拾(写真:日刊ゲンダ/アフロ)

自民圧勝だった衆院選を受けた11月1日の特別国会召集を前に、民進党系野党の右往左往と、それにつけこむ政府・自民党の驕り(おごり)が復活し、それぞれが永田町政治の醜態を露呈している。

党分裂の後始末で揺れる民進党は選挙後の一連の両院議員総会での「党存続」決定と前原誠司氏の代表辞任を受けて、10月31日午後受付の代表選に唯一人立候補した大塚耕平参院議員(元厚生労働副大臣)を、その後の両院議員総会で新代表に決定した。複数立候補も予想されたが「代表選をやればさらに亀裂が走る」(長老)との"民進党的理由"で大塚氏に1本化した結果だ。

「民進系勝ち組」の立憲民主党は枝野幸男代表を先頭に野党第1党としての党組織の整備などに忙殺され、第2党の希望の党も小池百合子代表(都知事)に代わる国政リーダーの共同代表選出の先送りを余儀なくされるなど、党内混乱が収まらない。そうした野党の窮状をあざ笑うように、政府・自民党が国会での野党の質問時間削減に動いたことで、召集前から与野党対立が先鋭化し、一定の会期が設定されても「内政・外交などでの真っ当な国会論戦は望めそうもない」(自民幹部)という政党政治の危機になりつつある。

「ババ抜き」の果ての大塚新代表就任

党存続により、党籍を持つ衆参議員の合計数なら依然、「野党第1党」の民進党だが、新代表選びは「誰もババを引きたくない」という沈鬱な空気の中、テレビ出演などで一定の知名度もある大塚氏の無投票当選となった。当初、有力視された岡田克也元代表は「無所属での当選」などの理由で固辞し、名前が挙がった小川敏夫参院議員会長や蓮舫前代表も「損な役回り」に尻込みして、大塚氏にお鉢が回ったというのが実態だ。

大塚氏は日本銀行出身の参院当選3回で58歳の幹部議員。厚労副大臣などを務めた経済政策通の論客で、予算委員会などでの政府側との丁々発止のやり取りで党内でも評価が高い人物ではある。ただ、折り目正しい理論派だけに、野党再結集の「結節点」となるような権謀術数を期待する向きは少ない。

31日午後3時過ぎから開かれた両院議員総会で新代表に決まった大塚氏は、「力不足は重々承知の上で誠心誠意代表を務めたい」と低姿勢で就任挨拶を始め、今回衆院選で民進系の立憲民主、希望両党の比例選での得票合計が自民党を200万票余も上回ったことを指摘して、「次期総選挙では立憲民主と希望と民進で政権交代を成し遂げたい」と党再生と野党再結集への意欲を語った。

さらに、「今日は間違えてはいけないので原稿を読んだ」と苦笑しながら「われわれが明るくなくては国民も政権を託そうなどとは思わない。明るい民進党にしたいのでよろしく」と締めくくり、会場の拍手に深く頭を下げた。大塚新代表は党員・サポーターも含めた本格代表選での選出ではないため、任期は来年9月までで、次期代表選は安倍晋三首相が「3選」を狙う自民党総裁選との同時進行となる。

党内には「そもそも、それまで民進党が存続しているのか」(有力議員)との声もあり、大塚新代表は就任あいさつとは裏腹に「政党清算手続きが最大の仕事」(同)となる事態も想定され、新リーダーとしては暴風雨に突っ込むような厳しい船出となる。

「会派の落差」で野党が「衆参ねじれ」の構図に

特別国会召集までに固まった各党、各勢力による衆院への会派届けをみると、自民党284、立憲民主党・市民クラブ55、希望の党・無所属クラブ51、公明党29、無所属の会13、共産党12、日本維新の会11などとなった。「ダブル不倫疑惑」で無所属当選となった山尾志桜里元民進党政調会長は立憲民主に入党しないままでの会派入り、希望の党は民進党代表を辞任したばかりの前原氏を無所属のまま会派に加えている。

一方、選挙のなかった参院は自民党・こころ125、民進党・緑風会47、公明党25、共産党14、日本維新の会11、希望の会(自由・社民)6、希望の党3などと前国会から大きな変化はない。衆院とは対照的に民進党が圧倒的な野党第1党の立場を維持し、会派のない立憲民主の福山哲郎幹事長は無所属扱いだ。

このため当面の国会運営は、衆院は「自公vs立憲民主・希望」、参院は「自公vs民進・共産」と衆参の構図が大きくねじれることになる。法案審議などは当然、衆参にまたがるため、政府提出の重要法案をめぐる与野党折衝も極めて複雑化し、特に野党陣営が混乱する可能性は否定できない。

そうした中で突然、政府・自民党が仕掛けたのが、野党の質問時間を制限する作戦だ。通常国会から首相らの頭痛の種となってきた「森友・加計学園疑惑」はまったく解明が進んでいない。首相は「真摯に丁寧に説明する」と繰り返してきたが、今回の質問時間見直しの動きは、「国会審議で野党追及の時間短縮を狙ったものであることはミエミエ」(共産党幹部)だ。

首相らは自民圧勝という結果にも「謙虚」を合言葉に笑顔も封印してきただけに「早くも地金が出た」(同)と批判されても仕方がない。野党側は「とんでもない暴論で妥協の余地もない」(枝野立憲民主党代表)などと猛反発している。

質問時間の落としどころは「4対6」だが…

与野党の国会でのそれぞれの質問時間は、国会運営上の慣例として議席数に比例させずに野党側に多く配分されてきた。論戦の主舞台となる予算委での質問時間配分をみると、2009年の政権交代前はおおむね与野党は「3対7」だったが、民主党政権下で強力野党だった自民党の要求で「2対8」となり、第2次安倍政権以降も基本的にそれが踏襲されてきた。

しかし、自民圧勝で多くが勝ち上がった当選3回組の一部議員が「われわれは『魔の2回生』と呼ばれ、大勢なので質問の機会も少なく、週刊誌などで『働かない議員』などと批判されてきた」として党執行部に議席数に見合った質問時間の確保を直訴した。これに首相も理解を示したことから自民党側が時間配分の「7対3」への逆転を提案したというのが経緯だ。

自民党も「あれは言い値で、落としどころは『4対6』あたり」(国対幹部)が本音とみられるが、野党側は「もともと野党時代の自民党が要求したもので、手の平返しも度が過ぎる」(共産党)と折り合う気配もない。

ただ、野党側も民進分裂の後遺症などで国会戦略はまだ定まっていない弱みもある。特に希望の党は代表質問などで自民追及の先頭に立つはずの共同代表が不在で特別国会後の選出を想定している。このため、自民が当初提案した特別国会の会期8日間を1カ月程度に拡大した場合は、会期中の共同代表選実施という異常事態ともなりかねない。それでは野党が要求する首相の所信表明演説と各党代表質問、さらには衆参両院での予算委審議や疑惑解明のための集中審議や証人喚問に対応するための野党態勢づくりがすべて後手に回り、「与党を利する結果」(立憲民主幹部)にもなりかねない。

いわゆる「加計疑惑」に絡んで政府・自民党が先送りしてきたとされる、文科省大学設置審議会での加計学園・獣医学部新設認可に関する最終決定や、森友学園問題での会計検査院の検査結果公表は、いずれも11月中に予定されている。だからこそ政府・自民党は「本格的な野党の追及」を年明けに先送りしたい思惑もあって、質問時間配分や国会会期設定で野党を揺さぶっているのだ。

特別国会が召集される1日は午前中の閣議で現内閣が総辞職し、昼前後の衆参本会議で議席指定や正副議長選挙などいわゆる院の構成を決めた上で首相指名選挙を実施、それを受けて首相が前内閣閣僚全員を再任して第4次安倍内閣を発足させる段取りだ。その後、首相は5日のトランプ米大統領初訪日による日米首脳会談を手始めに、14日まで連続するアジアの国際会議での首脳外交に専念することになる。

「化けの皮」がはがれれば「国民の信任」は崩壊

すべては、選挙での自民圧勝による「安倍1強継続」を背景とした安倍政権の優位性がもたらしたもので、敗北した野党陣営のみっともない離合集散劇がそれを後押ししている構図だ。3分裂した民進系各党はいずれも次期総選挙での政権交代を叫ぶ一方で、「仲間内での多数派工作に血道をあげている」(自民幹部)のでは安倍1強に対抗する術もないのは当然でもある。

しかし、それをいいことに「悪だくみも繰り出して野党を揺さぶれば、政権側も国民からのしっぺ返しを受ける」(首相経験者)ことは歴史が証明している。直近の世論調査をみると、選挙後にいったん支持が不支持を上回った内閣支持率が、再び逆転する数字も出始めている。首相らの「謙虚一点張り」の"化けの皮"が早くもはがれるようでは、漁夫の利で勝ち取った「国民の政権への信任」は時を置かずに崩壊しかねない。