第19回党大会で誕生した新しい常務委員メンバー。(Photo by Lintao Zhang/Getty Images)

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 中国共産党大会が閉会した翌25日、「最高指導部」となる7人の常務委員が登壇した。進退をめぐってメディアの焦点となった王岐山氏の姿はなく、新人の顔ぶれが目立った。15億人もの「人民」を統治する指導部人事には、各派閥の利害関係が反映する。胡錦濤氏や江沢民氏に近い人物も選ばれたため、習近平氏は党内融合を優先したと言える。

 10月25日、中国共産党の新指導部の顔ぶれが明らかになった。習近平氏の忠実な「同盟」王岐山氏が退任し、習氏と敵対派閥・江沢民派の韓正氏がメンバー入りした。背景には、習近平・江沢民両派閥の熾烈な争いがあったとみられる。

 いっぽうで、各派閥の利益を考量し江沢民派に妥協したとさえ言われている今回の人事だが、習氏と胡錦濤氏との関係は良好で、唯一の江沢民派である韓正氏が常務委員の中で序列最下位であることからから、習近平氏に利するとの観測が有力だ。表向きでは譲歩しつつ、実権を握るポストには「習家軍(習近平子飼いの部下)」を配備したため、習近平氏が「虚を捨て実を取る」との策を講じたと評することができる。

 ラジオフリーアジア(RFA)は中国国内の学者の話として、習近平氏は自らの名を冠した「習近平思想」を党規約に明記する代わりに、江沢民派の人事要求を呑んだ可能性があるという。つまり、新指導部のメンバーはパワーゲームの結果だった。

 それでも、習氏はドロドロの駆け引きの中で自らに有利な局面を作り出した。

 

 習近平氏は「七上八下(最高指導部就任時の年齢が67歳以下でなければならず、68歳以上のものは退職する必要がある)」のルールを守り、汚職摘発の功労者である王岐山氏を退任させた。そのメリットは反腐敗運動で多くの幹部の反感を買った王岐山氏を退任させることで、党内反対派の矛先をかわしたことだ。同時に、習近平氏に近い趙楽際氏を中央規律委員会書記に引き上げることで、反腐敗の勢いを維持していく狙いがある。

 次に、習近平氏は江沢民元総書記から3代にわたり仕える政治哲学者・王滬寧(ワン・フーニン)氏を最高指導部入りさせることで、胡錦濤前総書記が指定したポスト習近平の後継者である胡春華氏を押しのけた。また、習氏の側近と目される陳敏爾氏の指導部入りも見送られたことで、党内の不協和音の軽減を図った。習近平氏の右腕ともいわれる栗戦書氏も、彼と同等のキャリアを持つ汪洋氏や韓正氏を同時に昇進させることで、難なく常務委員入りさせることに成功した。

 共産党長老や他の党内派閥から見れば、今回の指導部人事は決して習近平氏の独断ではなく、各派閥の利害をうまく調整した「マスターピース」のような出来映えだろう。にもかかわらず、習近平氏にとって自分に忠実な栗戦書、王滬寧、趙楽際、汪洋の各氏が指導部入りできたことは大きな勝利だ。

 5年前の第18回党大会では、江沢民派の劉雲山・張徳江・張高麗3委員が権力を振りかざしていた状況と比べれば、情勢の変化はあまりにも大きい。4:3で揺れていた最高指導部の天秤は今や6:1で習近平派に大きく傾き、唯一残された江沢民派の韓正も、深山から誘い出されたトラのごとく、去る日の猛威を惜しむままでいる。

 習近平氏の最高指導部人事における表面上の譲歩は他の面でも奏功したとみられている。最高指導部に次ぐ権力機構である共産党中央政治局委員の人事では習近平派が大きく躍進し、側近の丁薛祥、劉鶴、陳希、陳敏爾、黄坤明、蔡奇らがそれぞれ重要なポストを占めた。

 このような指導部人事は、各派閥に受け入れられる結果であると同時に、「習近平核心」をさらに強化させる結果となった。反対派を抑え、最高指導部における江沢民派の影響力をほぼ排除した今、習近平氏は絶対的な権力を掌握しつつある。

 15億人の「人民」を抱える中国が今後どのような方向に進むかは習近平氏の選択にかかっていると言っても過言ではない。

(翻訳編集・王揚思/文亮)