不眠症ならぬ「過眠症」をご存じですか? 症状や原因とは

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執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


あなたは自分の睡眠に満足していますか?

睡眠の悩みと聞くと、多くの方が思い浮かべるのは「不眠症」でしょう。

しかし、「過眠症」で悩んでいる方もいることをご存知でしょうか。

今回は、その過眠症についてご説明します。

過眠症とは

過眠症とは、夜間の睡眠時間や睡眠の質に問題がないはずなのに、日中に強い眠気が現れ、起きていることができない状態、あるいは抑えきれないほどの眠気によって、意図せず居眠りをしてしまう状態のことをいいます。

『睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)』では、過眠症を「中枢性過眠症」と呼び、次のものが分類されています。

(1)ナルコレプシー

ナルコレプシーは、日中に耐えられないほどの眠気に襲われ、居眠りを繰り返してしまい、日常生活に支障をきたす疾患です。

10〜20分ほどの短い居眠りをすれば、いったんはすっきりするものの、その後、再び眠気に襲われることを繰り返します。

また、眠りに入るときに現実感のある夢を見る入眠時幻覚や、いわゆる「金縛り」のような状態になる睡眠麻痺などの症状が現れる人もいます。

ナルコレプシーは、症状の違いから2つに分けられます。

ナルコレプシー1

笑う・怒るなどの感情の変化が起こった際に、筋肉の緊張が緩み、身体に力が入らなくなる情動脱力発作があります。

ナルコレプシー2

ナルコレプシー1と同じく、日中に耐えられないほどの眠気があり、居眠りを繰り返すものの、情動脱力発作はみられません。

これまでの研究で、ナルコレプシーの発症年齢のピークは10代であることがわかっています。

(2)特発性過眠症

心身の休息や回復に時間がかかり、夜間の睡眠が10時間以上になるなど、長時間の睡眠を必要とする疾患です。

また、夜間に十分な睡眠をとっていても目覚めが悪い人、日中強い眠気に襲われ、1日に1時間以上の睡眠を必要とする人もいます。

発症年齢は25歳未満が多いといわれています。

(3)クライネ・レビン症候群

数日から数週間にわたり、傾眠状態(けいみんじょうたい;意識はもうろうとしているが、周囲の問いかけには反応できる)が続く過眠症です。

非常にまれな病気で、日本では「眠れる森の美女症候群」などと呼ばれることもあります。

傾眠状態が続く間は、1日に15時間以上眠り続け、食欲が増加する、過食になるなどの症状もみられます。

(4)睡眠不足症候群

慢性的な睡眠不足状態に陥り、日中に強い眠気に襲われます。

平日の睡眠時間は3〜4時間なのに対し、休日の睡眠時間は10時間以上という人が多く見受けられますが、本人は睡眠不足と自覚していないことも多々あります。

(5)長時間睡眠者

もともと1日に10時間以上の睡眠が必要な人を指します。
元来の性質であるため、障害ではないという見方もありますが、長時間睡眠者が通常よりも短い睡眠時間で過ごしていると、睡眠不足症候群などに陥る可能性があります。

ICSD-3では、このほか、身体疾患や精神疾患などの基礎疾患の二次的症状や、薬物などの影響で過眠になることがある、と示されています。

それでは、どんな病気が原因で過眠の症状が引き起こされるのでしょう。

過眠を症状とする病気



ここでは、過眠を症状とする病気として、次の2つをご紹介します。

非定型うつ病

うつ病と聞くと、寝つきが悪い、眠りが浅い、といった不眠症の症状をイメージする方が多いでしょう。

実際に、気分の落ち込みや抑うつ状態、食欲減退、集中力低下などを症状とする「定型うつ病」では、不眠症の症状が現れる患者さんが多いです。

一方、「非定型うつ病」は、「新型うつ病」などと呼ばれ、抑うつ症状はあるものの、楽しいことがあれば気分が良くなる、食欲が増加するなど、定型うつ病とは症状が異なります。

睡眠に関しても、不眠ではなく、眠りは浅いものの過眠の症状が出る傾向にあります。

冬季うつ病

特定の季節に、うつ病のような症状を発症する障害を「季節性感情障害」といいます。

そのうち、とくに秋から冬にかけて症状が現われるケースを「冬季うつ病」と呼びます。

冬季うつ病は、秋や冬に日照時間が少なくなることによる、セロトニン(精神を安定させる作用を持つ脳内神経伝達物質)分泌量の減少が原因であると考えられています。

冬季うつ病になると、抑うつ症状、意欲や集中力の減退、自殺企図などの症状に加え、過眠や食欲増加などの症状が現れます。

過眠症の治療

過眠症の診断には、問診のほか入眠潜時反復測定検査(MSLT)など専門的な検査が必要になります。

このような検査を経て確定診断がなされると、薬物療法などそれぞれの病気に合わせた治療が行われます。

ただし、特発性過眠症やクライネ・レビン症候群など、まだ治療法が確立されていない病気もあり、治療薬が有効でないこともあります。

こんなときには受診をしよう

「毎日眠くて仕方がない」というあなた、寝る前に熱いお風呂に入ったり、カフェインを摂取したりしていませんか?

何気ない習慣が寝つきを悪くし、日中の眠気をもたらしている可能性もありますから、まずは自分の生活を振り返ってみましょう。

しかしながら、生活習慣を見直し、改善を図っているにもかかわらず、過眠の症状が治らない場合には、過眠症や不眠症をはじめとした、何らかの病気が影響している可能性があります。

このようなときは、専門医のもと、きちんとした治療が必要ですので、睡眠外来や心療内科などに相談してみましょう。


【参考】
・睡眠障害の診断と分類(ICSD-3)(https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/pdf/h28-2-3.pdf)
・厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠不足症候群」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-029.html)
・国立精神・神経医療研究センター「入眠潜時反復測定検査」(http://www.ncnp.go.jp/hospital/sdc/cure.html)


<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供