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Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は北野武監督の人気シリーズ最新作『アウトレイジ 最終章』を観てきました。もちろん小出部長も北野武作品が大好き。[後編]は素晴らしき俳優たちについての話に……。


活動第38回[後編] 『アウトレイジ 最終章』


参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)



 


小出部長が本作を音楽で例えて解説する[前編]はこちら


塩見三省さんって、めちゃめちゃ『ヤクザと憲法』に出てきそうな佇まい


世武 ひとつ質問があるんだけどさ。私、そもそもヤクザ映画観ないからよく知らないんだけど、今回の『アウトレイジ 最終章』だけ観てると、寂しさっていうか「時代が去っていった感」はすごくあったわけよ。


小出 はい、あるある。


世部 で、今のヤクザ社会がそうだからなのか、ただ単に北野武監督が描きたかったのがその感じだったのか、どっちなんだろうと思って。


小出 それはまさに去年の頭に公開された東海テレビ制作のドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』っていうのを観てもらうと大変わかりやすいんだけど。


レイジ 一緒に観にいきましたよね、岡村靖幸さんと3人で。


──『ヤクザと憲法』は大阪のある指定暴力団を丹念に取材したもので、今のヤクザは国や公の制度に疎外されるという意味では「弱者」側であり、一般社会での暮らしにくさを赤裸々に伝えている。これは本当に時代のリアルを捕まえた傑作ですね。


小出 暴力団の規制の法律(暴力団対策法、暴力団排除条例)が整備されてから、ヤクザの方たちはそれに縛られて、例えば銀行口座は作れないし、組の幹部が亡くなっても葬儀場を使わせてもらえない。


さらに子供まで幼稚園への通園を拒否されるとか。自分たちの人権はこんなにも縛られるのかと問題提起をしてるんですね。


福岡 たしかに携帯の契約ひとつとっても厳しそうな。


世武 レストランもお断りみたいなことと一緒のことだよね。


小出 そうそう。でね、『最終章』の塩見三省さん(関西ヤクザ花菱会の幹部・中田役)って、めちゃめちゃ『ヤクザと憲法』に出てきそうな佇まいじゃない?


レイジ たしかに。


小出 前作『アウトレイジ ビヨンド』の塩見さんは、すっごいオラオラ言ってた役だったから。


レイジ いわゆるヤクザ映画的なザ・ヤクザ。


小出 今回は大病をされてからの復帰で、ガチリアルなヤクザ像。『ヤクザと憲法』に出ていたような気さえしてくる凄味でしたよね。


──哀愁と迫力が同時に来るような生々しい名演ですよね。今回の塩見さんは本当にすごい!


小出 顔が映るだけで、すいません……と謝りたくなる(笑)。


 


北野映画出てる大杉さんがいちばんカッコ良い


レイジ 俺は役者さんで言うと警察側なんですけど、松重 豊さん(マル暴の刑事・繁田)がすごく好きです。


世武 いいよね〜。飲み屋街のシーンは『孤独のグルメ』をすごく思い出しました。


福岡 私はやっぱり、さっき言った白竜さんがめっちゃダントツでカッコ良かった。


世武 白竜推しやな。


小出 俺も好き、白竜さん。たけしさんの監督デビュー作『その男、凶暴につき』(1989年)の白竜さん、すげえカッコ良いのよ。今回の『最終章』をその変奏だと思って観ると、アイツとアイツが……って、最後ちょっと泣けてくる。


福岡 『夜もヒッパレ』の人じゃん、うちらの世代。


小出 そうだね、僕も最初の白竜さんは『THE夜もヒッパレ』だね(編註:1995年から2002年まで日本テレビ系列で放送されていた音楽バラエティ番組。白竜は準レギュラーで出演していた)。藤井フミヤさんの「Another Orion」歌ってたの覚えてる(笑)。


──僕の世代はVシネマですね(笑)。


レイジ あと光石 研さん(山王会の若頭・五味役)も良かったです。


世武 やっぱみんな顔が良いよね、顔が映ってるだけで成り立つから。キャスティングさすがだなって。


小出 ピエール瀧さんが「顔面世界遺産」って言ってた(笑)。


世武 ほんとそう!


福岡 瀧さん普通にしてたら、めちゃくちゃ怖そうやけど、今回の花田っていうのはわりとチキンな役やったな。


小出 ちょっとコメディリリーフ。


福岡 うん。


小出 俺はね、やっぱ大杉 漣さん(花菱会の新会長・野村役。元証券マンで古参のヤクザを嫌っている)。北野組の常連ですけど、実は『アウトレイジ』シリーズは初参戦なんだよね。


今回の大杉さんは最大限の威力を発揮してたというか、こういう役をやらせたら抜群にうまいですよね。やっぱ大杉 漣さんすごいなと思った。


福岡 北野映画出てる大杉さん、いちばんカッコ良いよね。


小出 いちばん輝いてるよね。


世武 服とかさ。これ見よがしな衣装とか。


小出 最高だよね。埋められて顔だけ出して「おーい!」って言ってるだけで、説得力がハンパない(笑)。


あと今回、大杉さんと津田寛治さん(張会長の側近・崔役)、大森南朋さん(大友の弟分・市川役)も北野組の常連なんだけど、『アウトレイジ』シリーズは初参戦。


「あ、ここで出すんだ!」と。『アウトレイジ』の前二作は、北野組に初めて参加する大物俳優をメインで使って、しかも意外な役にキャスティングしてきたんですよ。


 


今回の幕引きの仕方も、北野映画っぽさがあるよね


──西田敏行さんもそうだし、三浦友和さん、加瀬 亮さん……。


小出 そうそう、こういうキャスティングするんだと思って。


福岡 「いい人」役ばかりの役者さんが『アウトレイジ』に出られたら、絶対うれしいやろね。1と2に出てくる小日向文世さん(マル暴の刑事・片岡役)もめちゃくちゃ怖かったよね。


レイジ あの小日向さん、最高! 世武さんは観てないですよね。


世武 そう。これは観ないとまずいね。


小出 それまでの小日向さんってなんなら癒し系みたいな、あったかいお父さんっていう役ばっかだったから。


世武 なるほどね。でもそのなかで、やっぱり役者・ビートたけしの凄みは際立っているよね。北野映画のたけしさんは本当に好きだな〜。


──自作自演系の映画人のなかでも、スクリーンに佇む自分へのまなざしが独特というか。北野武とクリント・イーストウッドは別格の深い味わいがありますね。


小出 今回の幕引きの仕方も、すごい北野映画っぽさでもあるよね。それこそ、これまでに何度もリフレインされてきた幕引きだと思う。


世武 説明のできない寂しさだけが残るような。なんか理想があるのかな、北野武さんの。オレはこういうふうにありたいっていうのが、映画に全部出てるのかなっていう気もする。


小出 男のシルエットみたいなものは強烈にあると思うんだよね。粋か粋じゃないかとか。


世武 そうだね。


小出 さっき「人生哲学を感じさせない世界」って言い方をしたけど、代わりに「男の美学」や死生観は充満してる。


『ソナチネ』の「あんまり死ぬの怖がるとな、死にたくなっちゃうんだよ」って台詞じゃないけど、若い頃から死に場所を探して、何かを持て余し続けて来た北野映画の“男”が、やっとケジメをつけ終えた感というか。


それが大友というキャラクターが持っていた命題にも思えるし、“彼ら”の『最終章』だって感じもするね。


TEXT BY 森直人(映画評論家/ライター)