AKB元姉妹やHIPHOPも 若者受けする?現代版共産党プロパガンダ。SNH48メンバーがファンのカメラを見つめる(許哲/flickr)

写真拡大

 AKBの姉妹グループとして誕生し、昨年中国で独立した上海のSNH48が「歌唱祖国(祖国を歌い上げる)」「我和我的祖国(私と私の祖国)」など中国共産党の定番曲のカバー版MVを次々とリリースし、プロパガンダの一端を担ぐ御用アイドルグループになっている。

 仏道儒の三教と数千年の伝統文化を育んだ中国を、無神論と破壊主義の共産党政権が代弁できるはずはなく、祖国イコール中国共産党の図式は成り立たない。しかし、日本のAKB48の形式を踏襲して、総選挙で選び抜かれた美少女たちがほほ笑みながら歌う「愛国」楽曲なら、抵抗感を抱くことを忘れてしまうかもしれない。ソフトパワーの恐ろしさだ。

 エンタメを通じた中国共産党のプロパガンダはこれまで、古くさい歌謡ショーや共産党史の偉人の紹介などの形で行われてきた。しかし最近は、若者向けにインターネットで流行しやすいポップカルチャーにも宣伝工作がみられる。

 SNH48のようなアイドルのほか、「天府事変」のようなラッパーのグループ もいる。メンバーは、野球帽にビッグサイズのTシャツ姿で、お堅い共産党のイメージには一見えない。しかし、楽曲「紅色力量(紅い力)」「這就是中国(これが中国)」は党の愛国ビジョンを謳い、共産党青年団からの支持を得ている。

 また、女の子に人気の男性アイドルグループ「TFBOYS(ティー・エフ・ボーイズ)」は、10代のメンバー3人からなり、それぞれSNS微博に3000万人近くフォロワーがいる。党のスローガンを拡散させたり、党青年団のイベント出演をPRしている。

 ソフトパワーの主力である映画界も例外ではない。中国人民解放軍創設90周年にあわせて封切られた愛国主義的アクション映画「戦狼2」は、国営メディアの押しも一役買って、中国史上最高の興行収益となる750億円超を記録した(オンラインチケットサービスサイト・猫眼電影) 。微博の映画感想トピックでは「戦狼2を見て、中国人に生まれて幸せだと思った」とのコメントに1万2000以上のいいねが付いた。

 若者文化に浸透しやすいソフトなプロパガンダは、「聴衆のニーズに合っているという点で一歩前進している」「一般市民は人民日報や中国中央テレビ(CCTV)の古くて説教じみたやり方に辟易している」と、北京外国語大学のメディア研究者・乔木氏は指摘する。

 ただ、誰しもがこうしたエンタメ宣伝を好き好んでいるわけではない。「戦狼2」は、随所に共産党の五星紅旗と「中国への愛」が掲げられ、映画の舞台でもあるアフリカについて「中国とアフリカは仲良し」との台詞が何度も登場する。経済圏構想「一帯一路」に含まれるアフリカ戦略投資を宣伝したい当局の意図が見え隠れし、描かれる両国の友好関係は、押しつけがましいとの批判もある。

 先のラッパーグループに対しても、政府から金をもらって愛国的なコメントをネットに投稿する集団「五毛党(五毛は約5.5円)に過ぎない」と白眼視する人々もいる。

(翻訳編集・葉静/佐渡道世)