長崎戦でのミスを猛省した田口が群馬戦で輝きを放った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[J2リーグ39節]名古屋 4-2 群馬/10月29日(日)/パロ瑞穂

 台風の直撃によって、22分30秒の時点から54分間の中断を挟んだ異例の試合は、一度は群馬の逆転を許した名古屋が3点を奪い返して大勝へとつなげた。前日に昇格争いのライバルである長崎が勝利し、福岡が引き分けていた結果も当然頭の中には入っていた状況での戦い。勝てば3位浮上、負ければ2位と勝点差5がつく。勝利へのプレッシャーは普段の比ではなかっただろう。しかし、名古屋の選手たち、とりわけ背番号7は極めて冷静に、多難の試合をさばいてみせた。
 

 これにはハッキリとした理由と裏付けがあった。前節の長崎戦、厳しい試合展開を耐え抜き、88分にシモビッチのPKで先制した直後、名古屋はミスから失点を喫し、手にしかけた勝点3を寸でのところで逃している。この“ミス”とは、押し込まれた中で奪い返したボールをつなごうとした田口泰士のパスミスも含まれる。原因を追及する観点で失点の流れを見ていけば該当選手は他にもいるが、相手にボールを渡してしまったことを田口は猛省。「冷静に周囲を見すぎてタマさんにつなぎにいってしまった。後悔しています」。だからこそ、群馬戦からは状況判断に一層の慎重さと明確さを出していこうと心に決めて、チームメイトとも共有していた。
 
「(小林)裕紀と泰士はポジションが真ん中なので、チームの“目”になってくれることを望んでいるが、そうなってきてくれている」。風間八宏監督も田口の成長とパフォーマンスに高評価を与えている。ボックス・トゥ・ボックスで激しく上下動を繰り返し、ビルドアップから前線へのパス供給に加え、ゴール前に関わる動きまで見せる田口の姿を見れば、それも納得できること。今季は群馬戦前までで8得点を挙げており、セットプレー時のエアバトラーとしてもこの後半戦は存在感を高めてきた。暴風雨の中での前半には「この風だからオレが蹴った方が良い」とFKのキッカーを玉田圭司に譲ってもらい、青木亮太の先制点をアシスト。後半立ち上がりにミスから群馬に逆転を許したが、「やることを変えるつもりはなかった」と慌てずに試合を進めた。
 
 そして86分、押谷祐樹の右からのクロスをシモビッチが収め、丁寧に落としたボールをダイレクトで、しかもDFとGKの逆を突くコントロールシュートで沈め、逆転弾をマーク。「振り抜いても良かったけど、相手が来てるのは見えていたから。ここは右かなと」とここでも落ち着いた口調で語ったが、簡単なシュートではもちろんない。もともとダイレクトプレーはパスにせよシュートにせよ得意な選手ではあるが、勝利が必要な試合で2-2の場面、86分という時間帯を考えてもその選択にはやはり強靭な精神力が不可欠だろう。
 4-2で勝ち切った試合後、前節の反省が生かされていたかと問うと、田口はちょっと考えてこう答えた。
「チームの中でしっかり確認して、前の試合と同じようなことをしないように、はっきりと。グラウンドの状態もあったし、風もあったし、しっかりクリアするところはクリアしようと、クシや裕紀さんとコミュニケーションを取った」
 
 猛省はさっそく実を結んだ。最近ではこうしたリーダーらしい振る舞いも見せるようになってきたが、これも「だってバタバタするの嫌だし」と自身の変化は否定する。しかし理由はどうあれ、田口が今季1年でチームリーダーらしくなってきたのは間違いない。キャプテンマークを巻き、その重圧とも戦っていた昨季が嘘のように、伸び伸びとチームを引っ張っている。
 
 残り3戦を3連勝してライバルの結果を待つ。状況は2位の座を奪取せねば、自動昇格は他力であることに変わりはない。頼もしきリーダー、文字通りの“ボランチ”に成長した田口は、「ああだこうだ言うより勝たなきゃいけないから。全部勝たないといけないし、結果がすべて大事になってくる。そこはみんな理解しているからね。残り3つもそうやってやるだけ」といたってシンプルに考える。名古屋らしさを支える舵取り役は、間違いなくスケールアップを果たしている。
 
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)