韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相は30日、国際社会による経済制裁により、北朝鮮の経済事情は1990年代に数百万人ともいわれる餓死者が発生した「苦難の行軍」当時よりも悪化する可能性に言及した。

趙氏はソウル市内で行った講演で「北が1990年代半ば、金日成主席が死亡してから食糧難で非常に苦労したが、場合によってはその時より経済事情が悪化するかもしれないとみている」と述べた。

売春で生計

このような懸念は、すでに各方面から出ている。

韓国紙・東亜日報の敏腕記者で、脱北者であるチュ・ソンハ氏も最近、自身のブログで同様の懸念を示し、「苦難の行軍」当時の平壌の様子を生々しく振り返っている。

また、国連で北朝鮮の人権問題を担当するトマス・オヘア・キンタナ特別報告者は26日、国連総会の人権委員会で制裁が一般市民に壊滅的な影響を与え得ることは歴史が示している」と述べ、もともと劣悪な北朝鮮の人権状況が、ミサイル発射実験と核実験に対する最近の3回にわたる制裁強化により、さらに深刻化しかねないとの懸念を示した。

北朝鮮の食糧事情は、かつてより大幅に改善している。しかしそれも、1990年代と比べて主に中国と韓国への輸出が数倍に伸び、大量の外貨が流入。それにより食料や化学肥料を購入し、さらには信用力の外貨に支えられた自由市場が拡大してきたからだ。

それでも、社会主義計画経済からなし崩し的に資本主義化が進む中、貧富の格差は拡大を続け、貧困層の女性たちはその日の糧を得るために売春に走らねばならない状況となっている。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

そんな状況下で、経済制裁が強化されているのである。

趙氏が講演で述べたところでは、北朝鮮が6回目の核実験を行った後、国連による制裁と米国の独自制裁の効果で、北朝鮮は年間輸出額約30億ドル(約3400億円)の90%近くに当たる品目が制裁の影響を受けるという。

つまり、これまで必死に生活を守ってきた北朝鮮国民の生活の基盤が、底から抜けてしまう可能性があるということだ。

またこれに加え、国民の幸福を顧みない金正恩体制は必ず失政を犯すだろう。

罪なき北朝鮮国民が大きな悲劇に見舞われる可能性は、日に日に高まっていると言えるのだ。