民進党の全国幹事会の冒頭で挨拶をする前原誠司氏(筆者撮影)

「私は去っていく人間ですので、後はしっかりと新たな代表のもとで結束をされて、そして野党のひとつの大きなプラットフォームとして繁栄してもらいたい。その気持でいっぱいです」

10月30日に開かれた民進党の両院議員総会終了後のぶら下がり。今後の民進党の体制についての思いを記者に尋ねられ、ついさきほど代表を辞任したばかりの前原誠司氏はこう述べた。前原氏は「しかるべきときに民進党に離党届を出して、希望の党に合流する」とも話した。

自分が去る政党の繁栄を祈るのもおかしな話だが、そもそも民進党に未来はあるのだろうか。その前途の多難を露呈したのが、両院議員総会前に開かれた47都道府県連の幹事長らを集めた全国幹事会。党の今後の方針を巡って紛糾し、午後1時に始まった議論は4時間にもおよんだ。

重ねて代表辞任を求める声も

全国幹事会は、27日の両院議員総会で議決した〔運陛泙話亙組織を含めて維持する、∩宛饗緝修亮任の意向を受け止める、30日に両院議員総会を開いて結論を得る、の3点が報告された。

これらについて前原代表や岡田克也常任顧問が質問を受け付けたが、党の存続を前提に「希望の党や立憲民主党とどのように連携していくのか」という質問がある一方で、厳しい意見も相次いだ。すでに辞意を表明している前原氏に、重ねて代表辞任を求める声も数人から出た。それだけ地方では強い危機感や怒りがあることを示している。

「もう民進党の歴史的使命は終わった。もちろん身内にとって、民進党は存続させる意味はあるだろう。しかし有権者にとってはどうか」。幹事会に出席していた民進党兵庫県連幹事長の向山好一県議は、執行部など幹部の認識の甘さを指摘する。

「再来年(2019年)の春には統一地方選挙で、その年の夏には参議院選挙がある。またそれまでに衆議院が解散されないという保証もない。その時にちゃんと候補をたてることができるのか。民進党の看板を背負っていては、有権者は話も聞いてくれないだろう」

もっとも希望の党と立憲民主党が合流するとするならば、民進党の存在意義はあるはずだと向山県議は言う。しかしこの2つの政党は“政策協定”なるもので分断されてしまったため、もはや合流は不可能だ。その現実を幹部は認識していないと向山氏は嘆く。

「私がそのように意見を言ったら、岡田(克也)さんは『そう悲観的にならず、我慢しなければいけない』と言った。我慢してなんとかなるのならいいが、実際にはどうにもならない」

まさに悲鳴ともいえる声だが、このような意見が地方からいくつも出てきたのだろう。中にはひとりで何度も質問する幹事もいて、前述のように全国幹事会は4時間にも及んだ。

なぜ民進党は追い詰められたのか

さて、民進党がここまで追い詰められたのはなぜなのか。その理由は10月27日に開かれた両院議員懇談会のやりとりを見ればわかるだろう。

「全ては安倍政権を倒したいという思いで行ったことであり、他党を利するつもりはなかった」

そのように自己の行為を正当化する前原代表の言葉から浮かんでくるのは、希望の党にしてやられた民進党の姿だった。

たとえば9月21日の段階で、一定数の民進党の議員が排除されることが前原代表に伝えられている。にもかかわらず、前原代表はそれを10月1日までほとんど誰にも話していなかった。そして9月28日の両院議員総会で「衆議院の全員が希望の党に移る」という案を前原代表が提案し、全会一致の賛成を得たのだった。そもそも前提が正しくない時点で、この決定は無効といえなくもない。

また「一定の方向を定めるのが私の責務」と述べて、自分の決定を正当化しようとする前原代表に対して、芝博一参議院議員は「全ては言い訳にしか聞こえない。なぜ全ての決定をひとりで行ったのか」と疑問を呈し、桜井充参議院議員に至っては「なぜ引き返さなかったのか。偽メール事件と同じではないか」と批判した。

桜井氏はさらに、「(希望の党との)交渉については本来は選対委員長の長妻(昭)さんが行うべきで、結局は党が壊れた」と前原代表を厳しく責任追及している。

この時点でもはや前原代表への信頼は皆無となり、辞任を求める声が相次いでいる。江田憲司氏は「本日即刻辞任いただきたい。遅すぎるくらい」とばっさりと斬り捨て、福田昭夫氏は「特別国会が始まるまでに新しい代表を決めるべきで、前原さんが決めるのはおかしい。安心して身を引いてほしい」とやんわりとかつ厳しく述べている。

前原氏へのバッシングの嵐

さらに石橋通宏参議院議員に至っては、すぐ後に開かれる両院議員総会での辞任を求めていた。芝氏は「前原さんが方向性を決めるのは許されない」と厳しい態度を崩さず、杉尾秀哉参議院議員は「国民は前原さんを嘘つきと思っている」と批判して、即時の辞任を求めた。

徳永エリ衆議院議員や神本恵美子参議院議員など女性議員も、前原代表にすぐさま辞任することを要求。前原氏は「もっとも嫌われた代表」として歴史にその名前を残しそうだ。

さて、民進党として最後の会見をする前原代表の背後に、代表就任時から党のシンボルに取り入れた「ALL for ALL(みんなはみんなのために)」が見えていた。

前原氏は党から去り、10月31日午後には新しい代表が選ばれる。衆議院はバラバラになったが参議院は46名の勢力を保持していることもあり、参議院から選ばれる見通しだ。ただ弱みは、これといって目玉になる人材がいないこと。当初ささやかれた羽田雄一郎参議院副会長は出馬を否定したが、小川敏夫参議院会長や大塚耕平政調会長代理のほか、衰退の原因となった蓮舫前代表まで候補に挙がっている。

民進党には100億円以上ともいわれる資金が、まだ残っている。これがある以上、党存続は不可能ではない。分党論も出ているが、民進党はあたかも親の遺産を食いつぶす子供のごとく、延命にいそしむに違いない。