平気で鉄条網の下を潜って家に戻る羊群れ=シリンゴル盟・シリンホト市(2013年1月撮影)

写真拡大 (全2枚)

 日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。

 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

----------

 鉄条網が作られたはじめのころ、家畜たちはその内側でおとなしくしていた。

 しかし、風に漂ってくる美味しい草の誘いに我慢できず、隣の鉄条網を越え、草を喰む方法を次第に身につけていった。羊やヤギは体が小さいから、鉄線の間をくぐったり、くぼみを探して、そこから鉄条網を潜り、隣の牧草地へ侵入していった。

 牛と馬、ラクダは、その大きな体と長い足を生かし、いきなり鉄条網の上をジャンプし、体でそれを押しつぶしながら、新たな天地を広げるように侵入していった。

 まさしく、進化論の実証である。

 今まで草原で自由に動き、美味しい草を喰んでいた家畜は、いきなり鉄条網に監禁されたのだが、2、3年でそれを乗り越える方法を身につけたわけだ。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第4回」の一部を抜粋しました。

----------

アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。