榎並寿男医師は「8割以上の白斑は改善可能」と話す

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 皮膚の色が抜け落ち、白くなってしまう病気、「白斑(尋常性白斑)」――。故マイケル・ジャクソンも、この病気だったことが公表されている。

 おおよそ100人に1人(人口の1%程度)に起こるともいわれ、従来は難治とされてきた。だが、近年、治療が進化し、成果を上げている。最先端の治療に取り組み、「8割以上の白斑は改善可能と考えている」という新宿皮フ科院長の榎並寿男医師に聞いた。その後半をお伝えする。

中波長の紫外線を用いる光線療法が登場

──治療にはどんな方法があるのですか?

 榎並:ステロイド剤などの「外用療法」と、紫外線を照射することでメラニン産生を促す「光線療法」の併用が一般的で、これらで十分な改善が見られない場合、「移植手術」を検討することもあります。

 近年の大きな変化は「光線療法」の照射機器の進歩です。従来は「PUVA療法」という療法が主に行われてきました。PUVAは、紫外線に対する反応力を高める薬「ソラレン」を投与した後に、「長波長紫外線(UVA)」を照射する治療法です。

 しかし、白斑の面積が半分以下に縮小する例は、全体の2割に満たない程度でした。色素の再生が起こっても、周辺の皮膚の色調と異なり、結局はまだらになってしまう限界もありました。加えて、ソラレンの副作用(吐き気や発がん性など)という問題もあったのです。

 これに変わって登場したのが、「中波長紫外線(UVB)」を用いる光線療法です。中波長とは、波長が280〜315nm(ナノメートル)の紫外線を指します。白斑に有効なのは波長311±2nmを放出する「ナローバンドUVB療法」と308nmだけを放出する「メル療法」です。

──従来の光線療法と比較して、どんな特徴が?

 榎並:ナローバンドUVB療法は光の照射量は弱く、広範囲に用いることができます。PUVAと比べて周辺の皮膚との色調もよくなるケースが多く、これだけでも大きな進歩でした。

 さらに近年に登場したメル療法は比較的、狭い範囲にしか用いられませんが、ナローバンドで効果の見られない人でも色素再生が起こるケースがあります。

 患者さんの体質や照射した患部の状態を的確に判断し、患者さんに合った療法器機を上手に組み合わせることで、当院では色素が再生する可能性は8割以上に高まりました。

 ただし、分節型の白斑(体の右半分だけ・左半分だけといった局所に白斑が現れるタイプ)には、残念ながら光線療法の効果が現れにくいのです。どうしても改善しない残り1〜2割の患者さんをなんとか治したいと、当院では10年ほど前から「ミニグラフト移植」という治療を導入しています。

傷も残さず高い改善率を誇る最新手術「ミニグラフト移植」

──ミニグラフト移植とは?

 榎並:頭皮などからメラノサイトがある正常な皮膚細胞を採取し、白斑部に埋め込み移植する手術です。

 従来から白斑部を大きく削り取って、そこに正常皮膚を移植する手術はありましたが、入院を必要とする上、麻酔をしても激しい痛みを伴います。皮膚をとった箇所には傷跡が残るし、移植した部分と正常皮膚との色のマッチもよくありませんでした。


 そこで患者さんの負担にならず、さらに傷が残りにくい手法として考え出されたのが、ミニグラフト移植です。メラノサイトの存在しない白斑部に正常な皮膚細胞を植え込み、それを定着させた後、ナローバンドUVBやメルを使ってメラノサイトを育て、健全な皮膚を取り戻そうという手法です。

──皮膚を「面」で移植するのではなく、正常細胞を「点々」と埋め込むわけですね。

 榎並:そのとおりです。そもそも、光線療法で改善しない患者さんの白斑部には、紫外線に反応する要素がないのだと考えられます。

 畑に「種」がないのに、いくら水をやっても「実」はならないのと同じで、メラノサイトやその前段階の細胞がない白斑部にいくら紫外線を照射しても、「実」に当たるメラニン色素は生まれない。ならば、白斑部に正常なメラノサイトを持つ細胞を移植し、定着させればいいわけです。

 当院で行っているミニグラフト移植では、白斑部に専用のマシーンを使って直径0.6〜1.3mmの小さな穴を開けます。その後、同じように頭皮から正常皮膚を採取します。正常細胞をとった部位、移植した患部ともに傷跡がきわめて小さく、数週間でまったくわからなくなります。

 マシーンで均一に移植するので、移植後の皮膚が凸凹になるようなこともありません。当院では現在、特殊な採取マシーンを使うことで、頭髪を剃らずに正常細胞を取ることもできるようになりました。

 皮膚の定着率は99%以上。早い人では術後1カ月で白斑部の半分以上、3カ月で80%以上、色が出てきます。光線療法単独より、改善効果が早く現れるのもミニグラフト移植の長所です。

 他の治療法で満足な効果が得られなかったかたでも「ミニグラフト移植+光線療法」で改善する可能性がありますから、ぜひあきらめないでいただければと思います。

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 なお、光線療法は健康保険の適用となるが、ミニグラフト移植は自費診療となる。手術は約2時間で終了し、日帰りで行えるとのこと。なお、頭髪を剃らずに正常細胞を取ることができるのは新宿皮フ科独自の手法で「国内はもちろん、世界でも当院が唯一ではないか(榎並医師)」とのことだ。
(取材・文=山本太郎)

榎並寿男(えなみ・ひさお)
1947年、岡山県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業、同大学院修了。1979年より中部地方を中心にクリニックを開く。光線療法に関する研鑽に努め、2006年に東京・市ヶ谷に国内初の白斑専門治療院「市ヶ谷皮膚科 日本白斑センター」を開設。2008年に東京・新宿に移転し「新宿皮フ科 日本白斑センター」と改称。白斑治療に関して国内屈指の実績を持つ。著書に『白斑はここまで治る』『白斑はここまで治る供戞覆箸發縫◆璽襯砂佝如砲ある。