10月5日、音喜多駿、上田令子両議員が都民ファーストの会から離党。記者会見では、都知事の国政進出に対して疑念を呈した。(時事通信フォト=写真)

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■都議選の惨敗で三途の川が見えた

衆院選まで、都議会自民党内の雰囲気は非常に暗かった。「このままでは自力での再生は難しい」という空気が立ち込めていた。

この雰囲気は、昨年7月の東京都知事選挙で小池百合子氏が当選し、都議会自民党が推した候補が敗れたところから始まっている。しかし、知事選直後の自民党は「風邪をひいた程度」という認識で「すぐに回復するはず」と鷹揚に構えていた。小池氏からの自民党攻撃に対しても「あえて反論する必要はない。地道に活動していればみんなわかってくれる」という意識でいた。

ところが、黙っていたら誰にも伝わらなかった。それが露わになったのが今年7月の東京都議会議員選挙である。

自民党は57議席を保有する第一党として60名の候補を擁立したが、獲得できたのは過去最低の23議席にとどまった。20代の当選者は1人も出せず、第3会派に転落。私自身も103票差での当選で“臨死体験”をした。組織としての都議会自民党は三途の川の手前まで行ったのだ。

生かされた命は大切にしなければならない。その意味では、まさに再生への道を歩み始めたところだが、三途の川から現世へ戻る道をいまだに見いだせていないこともまた事実だ。

そもそも、私たちはなぜ負けてしまったのだろうか。

要因はいくつかある。もっとも大きなものは、小池氏が始めた「小池劇場」「小池ブーム」に巻き込まれ、ほとんど太刀打ちできなかったことだ。

小池氏の勝負勘や発信力はすさまじい。都議会自民党を「ブラックボックス」と一刀両断した小池氏の発言は都民の共感を集め、「小池都知事になれば東京はよくなる。自分たちの生活はよくなる」と夢や希望を抱かせた。同時に都議会自民党に対して「嘘つき・閉鎖的・利権集団」という悪印象を植えつけることにも成功した。実際はそんなことはない。常に東京にとって利益になることを考えており、理路さえ整っていれば最年少の私の発言が通る、そんな風通しのよさもある組織だ。

しかし、都議選では自民党支持者の中にも新しい風を求めて、「今回は小池さんに」「都民ファーストの会に」と投票する人がいた。そうした人たちの声を吸い上げることができなかったことは、猛省すべき敗因の1つである。

かつての自民党には熱心な支持者がいて、現場での活動を支えてくれた。それが今は支持者との関係が希薄になりつつある。私たちは組織のあり方や時流の捉え方を見直し、保守層の熱をもう1度取り戻さなければならない。

就任から1年が経過した今も、小池氏は世間の耳目を集める話題を都民に次々と提示している。小池氏が詳しいアラブの文化圏でたとえるなら、まるで砂漠の中でオアシスを探し回るような忙しさだ。一方、私たちは山奥で、静かに瞑想しているような気分である。きれいな水の湧く水源の場所を知っているが、「ここに水がありますよ」と発言しても、なかなかその声が届かない。有権者の意識が向かうのは、同じ場所に留まり続ける私たちではなく、活発に動き回る小池氏である。求める水が近くにあるのは、はたしてどちらか。そのことを有権者に気づいてもらえないかぎり、自民党の再生は難しい。

■都知事の政策案は、結局振り出しに戻る

都知事選、都議選での敗北を経験しても、私たちが変えてはいけないものがある。それは自分たちの政策だ。事実、一貫して変わっていない。私たちはまっすぐな道を歩んでおり、こちらが正しいと自信を持っている。

都議会で知事を追及するのも、嫌いだからではない。党派に関係なく、正しいことをしようと言っているだけだ。私は自民党が変わったから選挙に負けたのではなく、周囲の評価が大きく変わったのだと分析している。政策面では何も悪いことをしていないのに、ここまで評価が落ちたのは正直、理不尽だとは思う。

都民の皆さんには、ぜひ、小池都政における政策が結果的にどうなっているかを冷静に考えていただきたい。

たとえば、1番の問題である築地市場の豊洲移転も、結局は自民党が主張していた通りに豊洲移転が決まった。昨年末まで小池知事が検討していた東京オリンピック・パラリンピックの3会場見直しも同様だ。私たちは当初から「見直す必要はない」と言い続け、最終的に私たちの主張通りに決着した。

それでも小池知事は「コストを400億円削減した」と喧伝した。しかし、6月の都議会文教委員会で私が質問したことにより、その数字もまやかしであることが明らかになった。削減された大半はもともとの予備費や契約落札差金であり、残るものの多くもグリーンボンドという都債、つまり都民の借金につけ替えただけだったのだ。

結局、小池都知事がパフォーマンス的に取り上げたことは、すべて振り出しの自民党案に戻っている。これらの事例からもわかるように、都議会自民党の政策は決して間違っていない。

「小池劇場」の前提となる自民党への悪いイメージを覆すのは大変だが、政策の正しさを理解してもらえれば、都民からの信頼回復は必ずできると信じている。そのためには「自民党は変わった」と思われるように努力することが、私たちには求められている。

■都議会自民党だけが持つ「教科書」とは

今の都議会自民党に圧倒的に足りないのは発信力だ。小池知事には毎週金曜日の定例会見という発信の場があり、一挙手一投足が注目されている。一方、一都議会議員や都議会自民党がそれに匹敵する発信力を持つことは難しい。しかし、何もしなければ、また自民党は三途の川を見るだろう。そのとき、都民も一緒に三途の川を見るようなことは、決してあってはならない。

そうした危機を招かないためにも、都議会自民党は発信を続けなければならない。1人では無理でも、自民党には専門分野、得意分野を持った人材がたくさんいる。

都議会自民党と都民ファーストの会が決定的に違うのは、私たちが都政を運営するうえでの「教科書」を持っていることだ。自民党は長い間、都議会第一党として大局的見地に立ち、東京と日本の未来を考えてきた。引退した内田茂氏には批判の声も多かったが、私は内田氏を「都議会の歩く百科事典」と呼んでいた。人材が豊富にいて、難局にどういう判断と行動をすればいいかという知見が、自民党内には脈々と受け継がれている。そうした知識や知恵を対外的に発信できるよう、報道室という広報体制もつくってきた。

今後は自民党に対して向けられた知事の発言を1つ1つはね返していくだけでなく、知事に先んじてよりよい政策を伝えていくことも必要だ。皆さんに私たちの主張を提示したうえで、「自民党案と知事案、どちらがいいですか」と問い続けていくしかない。

今、小池知事の周りには、自民党が歩んできた道とは違う道を歩もうとするブレーンが多く集まっている。そのため小池都政は脇道に逸れ、迷路に迷い込んでいるように思えてならない。近い将来、行き詰まるのは明白だ。

そんなとき、ブレーンとして小池知事を支え、本当に「都民ファースト」な知事にできるのは自民党しかない。

小池知事も私たちも、東京を光り輝く都市にするという思いは一緒だ。私たち都議会自民党は、そのゴールに向かって最短距離で進んでいる。議会で議論を重ねていけば、実は知事の考えと自民党の政策が変わらないことがわかるはずだ。そこから道が開ける。

都議会自民党を壊したのは小池氏だ。しかし、皮肉なことに、自民党を再生できるのも小池氏しかいない。「自民党=悪」という世間の呪縛を解くためには、魔法をかけた小池氏本人に自民党のすごさを認めてもらうしかない。

2020年まで残された時間は少ない。しかし、賢明な小池氏なら、間もなく気づいてくれるはずだ。そのときこそ、自民党再生のときである。

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川松 真一朗(かわまつ・しんいちろう)
東京都議会議員
1980年生まれ。日本大学法学部法律学科卒業。テレビ朝日アナウンサーを経て、2013年、東京都議会議員に初当選し、現職2期目。都議会自民党で最年少。都議会文教委員会副委員長。都議会自民党筆頭副幹事長。オリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会委員を務める。
 

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(東京都議会議員 川松 真一朗 構成=畠山理仁 写真=時事通信フォト)