女性社員から隣の課の課長のパワハラ疑惑を相談されるようになったのですがどう対応すべきでしょうか(写真 : ふじよ / PIXTA)

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【ご相談】
同僚管理職のことでご相談させてください。30代女性、今年管理職になったばかりです。新任なのでいろいろ相談しやすいと思われるのか、部署を超えて女性社員から相談を受けたり、愚痴を聞いたりする機会が多くあります。
私の隣の課の男性管理職は、管理職歴も長く、強いリーダーシップを発揮するタイプの人ですが、彼についての相談を多く受けるようになりました。彼は体格も良くて声も大きく、威圧感を感じる女性社員が多いようで、「叱られると怖くてパニックになり何を言われているのかわからなくなる」「大きな声で叱るのはパワハラではないか」と訴えられます。会社にはハラスメントの相談窓口はありますが、その後のやりづらさを考えると相談できない、なんとかしてほしいと言うのです。
たまたま彼と食事をする機会があったので、重くならないように忠告してみたところ、「大丈夫だよ。わかってやっているから」と笑って相手にしてくれませんでした。恐らく本当に悪気や他意がないんだと思います。なので、私としては大事にしないで、女性社員たちの気持ちも彼の態度も変化させたいと思うのですが、おこがましいでしょうか。上司や窓口に相談するのは最終手段にしたいと考えると、まだできる対応があるのではないかと悩んでしまいます。できれば具体的なアドバイスをいただけると嬉しいです。

まずは、信頼できる上司に相談すべき


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隣の課の課長のパワハラ疑惑に、どう対応するか、ということですね。

上司や窓口に相談するのは最終手段と考えているようですが、私はそうは思いません。相談が後手に回ることのほうが、大事に発展することもあります。まずは、信頼できる上司にあなたから率直に懸念を相談してみるのがよいように思います。もちろん、事を荒立てないように気をつけながら。

あなたに苦しい状況を訴えている女性社員たちも、まだ大事にはしていないし、処分などを求めてはいないように見えるので、きちんと彼に指導が入るようにして、静かに態度を改めてもらうのがいいのではないでしょうか。

あなたが自身でなんとかしようとこの件を抱えてしまうと、本来の目的である「彼に変わってもらって職場環境を改善する」時期が遅れたり、かえってこじらせたりする可能性もあります。部下たちの心身への被害が大きくなる前に、速やかに対処するほうがベターでしょう。

パワハラやセクハラは、男女問わず誰でも加害者にも被害者にもなり得ます。パワハラやセクハラをニュースや身近で見聞きすると、「あれはひどい」「どうしてこれまで許したのか」と憤る人たちが多いのですが、そういう人たちこそ、意外に周囲からは「加害者になり得る」と思われていたりします。自分がその当事者だという自覚がもてないのです。

「受け取り手がどう感じるのか」が重要

なぜ自分の行動はハラスメントではないと思いがちなのか。本人は、「自分にはその人への愛があって、相手を思ってやっていることだから」という理屈で動いているからでしょう。本来、こうしたハラスメント関連の問題は、「自分はこういう理屈でやったことだ」「良かれと思って」ということではなく、「受け取り手がどう感じるのか」ということのほうがより重要です。管理職ともなれば研修や講習などで口酸っぱく言われて頭では理解しているはずなのに、自分のこととなるとその自覚が持てない、というケースが非常に多いように感じます。

あくまで個人的な意見ですが、私はこういう人たちが自覚を持つには、多少でもその可能性があるなら、いっそ告発を受けてパワハラ当事者として調査をされたり聴き取りを受けたりするのがいいのではないか、と思っています。実は、私自身も、自分自身や部下のマネジメントがハラスメントにあたるのではないかという指摘を受けたことがあり、調査をされたことがあります。当事者になってみると、それは、とても恐ろしくて辛い経験でした。

当初は、社内アンケートに具体的なコメントがあった、と聞いて、「あの人だって同じようにしているのに」「少し厳しく言っただけ」と言いたくなる気持ちや、「いったい、誰がそんなことを?」「私が直接やったわけではないのに」と思う気持ちは、事実としてありましたし、何もない顔で普段どおりに仕事をこなすのはとても難しく、目の前が真っ暗になったようでした。

しかし、悪気がなくて愛をもっての言動であっても、それは伝わっておらず、逆に相手に大きな苦痛を与えているのは厳然とした事実です。強い自覚をもって自分自身が変わっていく以外に、この事実を好転させる方法などありません。

たとえ人事的な処分に至らなくても、いろいろ事情があったり言い訳があったとしても、「マネジメントに問題あり」と自分で認めること、受け取り手が不快に思い懸念を感じたことをきちんと認めることが最も重要です。むしろ、問題が解決できるうちに、自分の非を突き付けられる機会を得てよかった、と思うべきだと思い至りました。

後はチャンスがあれば心から謝罪し、猛省して事態を改善していくしかありません。「管理職としての未熟さ」をとにかく噛みしめるしかないのです。

そのような苦い経験もして、今私が思うのは、ハラスメント加害者になるリスクが少しでもあれば、その人たちは、大きな被害が出たり誰かを深く傷つけてしまう前に、強い当事者意識を持つ機会を持つべきだ、ということです。周囲が見て見ぬふりをしたり、黙認したりして、その機会を与えないのが一番よくありません。

私の知人の女性管理職は、男性部下と仕事の進め方で話し合ううちに口論となったことがあったそうですが、彼が机をたたき、大声を出して立ち上がったときに、大げさではなく身の危険を感じたと言っていました。それ以降は、大柄な男性が急に立ち上がっただけで頭が真っ白になると言って悩み、通院もしていたと聞きました。

上司に相談しても「悪気はなかったのだから」というばかりで、受け止めてはもらえず、孤独感と恐怖心を強く感じたそうです。それもれっきとしたハラスメントだと私は思います。部下や指導する後輩でなくても、一緒に働く誰かにそのような思いをさせたり心身を傷つけたりすれば、傷つけた事実を知り、猛省する機会を持つべきです。そうでなければ、その人がより良いリーダーとなる可能性は奪われてしまいます。もちろん、それで永遠に「×印」がつくのではなく、スタンスや言動が改善されれば、また成長の機会を得られるようでなければいけませんが。

近年、パワハラで会社を訴える報道をよく見かけるようになりました。そのとき不思議だなと思うのは、数々の証拠を持って告発する被害者が多いのに対し、加害者のほうはいかにも無防備で、たとえば自分の発言が録音されていることやメールを追跡される可能性を想像さえしていないかのように感じられること。これは、やはりひとえに加害者になり得る、そのせいで甚大な被害がでるかもしれない、という自覚が足りないのだ、と思えてなりません。

自分を客観的に見るのはなかなかつらいこと

自分を客観的に見る、というのはなかなかつらいことです。私が新人営業担当者の頃、商談シーンのロールプレイングを繰り返しやらされましたが、それをビデオ録画して見せられたことがありました。自分ではうまく切り抜けられたと思った切り返しも、ヒアリングも、冷や汗でびっしょりになるくらい恥ずかしい出来でした。口癖やしぐさの癖、相手との距離感、話す量のバランスの悪さも思い知りました。ロープレ終了後に、先輩や上司たちがしてくれる総評より、自分で自分を客観的に見たときの事実のほうが多くのことを教えてくれたように思います。

「自分は愛をもって部下に接しているから、ハラスメントとは無縁だ」と思う管理職すべてが、“告発される機会”を得るのは難しいでしょうし、そうなったらサラリーマン人生が終わると感じる人もいるでしょう。一度告発されてみるといいと書きましたが、極論過ぎる話だと思われる方も多いと思います。

では自身を振り返るためにはどうするか。管理職は、部下との面談や日常でのコミュニケーションを、部下に断ったうえで録音して聞きなおす習慣をもってみてはどうでしょうか。自分の態度が威圧的ではないか、相手の話をきちんと受け止めるキャッチボールができているのか、振り返るいい機会になると思います。それに、もうすでに、部下のスーツのポケットには、レコーダーがオンになって入っているかもしれないのです。振り返る機会のないまま、自覚のないままに、パワハラ加害者になってしまう可能性も否定できません。

あなたの同僚の男性管理職は自覚がないのか、実はうすうす事の重大さを感じていながらあなたには自覚していないように見せているのか、どちらかはわかりません。でも、「わかってやっているから大丈夫」というのは通用しないように思います。

とはいえ、あなたが横から仲介して、彼に心を入れ替えてもらおうというのは、あなたの言うようにおこがましいかもしれません。深刻なパワハラにつながる可能性があるのであれば、冒頭でも書いたように、速やかに上層部やコンプライアンス関連部署、人事などに報告・相談して、強制的に自覚を持ってもらったほうがいいでしょう。

被害が出てからでは遅い

告発する、あるいは告発を勧める、というのはなんとなく後ろ暗いような気分になるかもしれませんが、被害が出てからでは遅いのです。自分でなんとかしようと思わずに、勇気を持ってその女性たちとともに行動していただきたいと思います。

そして、あなた自身も他人事と思ってはいけません。部署をまたがって相談を受ける、自分は話をしやすい上司だと思っていたら大間違い。そう楽観的に構えていると、気づけばハラスメント加害者になっていた、ということもあるかもしれません。あなたには、このケースを他者の失敗から真摯に自分の言動を振り返る機会にして、管理職スキルを磨いていっていただきたいなと思います。