現HP IncとHPEの前身である企業「HP(Hewlett-Packard Company)」は、第二次世界大戦前にアメリカ・カリフォルニア州で設立され、2018年で創業80周年の記念の年を迎えます。しかし、その前年の2017年10月に発生した火災によって、シリコンバレー生誕の歴史そのものと言っても過言ではないHP創業者の貴重なアーカイブが焼失してしまったことが判明しました。

Hewlett-Packard historical archives destroyed in Santa Rosa fires | The Press Democrat -

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HPは1938年にウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードによってカリフォルニア州パロアルトで設立されました。後に世界的なコンピューター企業になり、コンピューター関連企業が集まるシリコンバレーが生まれるきっかけを作った企業のHPは、二人が538ドルで購入したガレージで創業しました。

偉大な創業者の残した書類や応答記録、スピーチ原稿やその他のコレクションは、HPという一企業の礎というだけでなく、どのようにしてシリコンバレーが始まったのか、コンピューター関連産業がいかにして誕生したのかを物語る歴史的なアイテムであり、大切に保管され未来永劫にわたって維持されるべきものでした。そこで、HPのカレン・ルイス氏は、HP創業50周年を迎えるにあたって、創業者たちの歴史的な記録を収取して保護するアーカイブ業務を始め、それ以降、アーカイブはHP社内で厳重に保管されてきました。



この歴史的なアイテムはその後、Keysight Technologiesという世界で初めて電子的手法を用いた計測会社の社屋に移動されたとのこと。なお、Keysight Technologiesは1999年にHPからスピンオフしたAgilent Technologiesから分社したカリフォルニア州サンタローザに本拠を構える企業です。100個の箱に入れられたHP創業者の歴史的アーカイブは、2014年にAgilent TechnorlogiesからKeysight Technologiesへと事業が移される過程で、Keysight Technologies社屋に移されることになったそうです。

そのKeysight Technologies社屋が入るサンタローザのFountaingrove地区で大規模な火事が発生し、住民の少なくとも23人が死亡、6800棟の建物が被害を受けました。Keysight Technologiesは2つの平屋建て社屋を構えており、その1棟にHP創業者のアーカイブボックスが保管されていたとのこと。



火災発生後にKeysight Technologies社屋付近は立ち入りが禁止されていましたが、火災発生から3週間経って行われた調査の結果、歴史的アーカイブは焼失してしまったことが判明しました。30年前にアーカイブの保管業務を担当する国際業務マネージャーを務めていたブラッド・ウィトワース氏は、「HPは『世界を根本的に変えた業界(コンピューター業界)』の最前線にいました。アメリカのビジネス史の大きな部分が消え去ってしまったのです」と今回の火事によって貴重な歴史的資料が失われた惨事を嘆いています。また、イリノイ大学のレイモンド・ブライス名誉教授は、「アーカイブされた資料には、企業の成長を見つめたHP創業者の貴重な洞察が含まれていました」と述べ、失われた価値は金銭には換算できない貴重なものだったと指摘しています。



今回の出来事についてはKeysight Technologiesの管理の不備を批判する声も上がっています。前述のウィットワース氏が「大きな損失ですが、簡単に防ぐことができた」と述べるほかにも、HPでアーカイブの収集・保管業務を始めたルイス氏は、「適切な保護措置なしにアーカイブを建物に保管するのは無責任だ」と非難しています。なお、ルイス氏によると、歴史的アーカイブをHPが保管していたころは、消火装置など安全設備を備える特別な保管庫の中に収蔵していたそうです。

これに対してKeysight Technologiesは、コレクションの焼失の事実は認めましたが、適切な保管がされていなかったという批判に対しては異議を唱えています。広報担当者のジェフ・ウェバー氏は、「Keysight Technologiesは歴史的アーカイブを保護するため、適切かつ責任ある措置を講じましたが、カリフォルニア州の歴史の中でも最大規模の火災によって、努力は無に帰しました。これは地区の多くの人にとってと同様に悲惨な状況です。今は傷を癒し始めるべきときであり、責任者探しをしようとは思いません」と述べています。