ビッグマイナーの目玉は間違いなくスパーダ

 2015年に登場した4代目ステップワゴン。先代でも高い評価を受けた使い勝手や走りのレベルアップはもちろん、燃費とパフォーマンスを高次元でバランスさせた「1.5リッター直噴VTECターボ」、リヤゲートの縦開き/横開きを両立する「わくわくゲート」の採用など、激戦区のMクラスミニバン市場へ満を持して登場したはずだったが、蓋をあけて見るとトヨタのヴォクシー/ノア/エスクァイア3兄弟、日産のセレナに販売台数で後塵を拝してしまっていた。

 その理由のひとつが「ルックス」である。4代目は原点回帰と言うことで、ファミリー層を意識してノーマル/スパーダ共にフレンドリーでカジュアルなルックスが採用されたが、ユーザーからは「スポーティなルックスのスパーダが大人しくなりすぎた」と言う声が多く、カスタム系のユーザーはモデューロや無限のエアロパーツ装着率が高かったそうだ。

 もうひとつは「パワートレイン」だ。世界的なトレンドであるダウンサイジングターボだが、Mクラスのミニバンユーザーにはあまり響かず、それよりも「ハイブリッド」が求められていた。そこに早急に対応したトヨタ3兄弟に遅れを取ってしまったのも事実だ。更に日産セレナもノートで採用済のe-POWERが追加のされる(東京モーターショーで公開された)ことから、ステップワゴンにも電動化が期待されていた。

 今回の大幅マイナーチェンジはこの2点の強化がポイントとなった。販売比率が80%を超えると言うスポーティなスパーダは、新デザインのLEDヘッドライトやフロントグリルにより、ダイナミックなフロントマスクに刷新。リヤ周りは小改良に留まるが、テールゲートスポイラーのデザイン変更によりフロントとのバランスを最適化。

 一方、ノーマルのエクステリア変更はなし。ホンダは「このルックスを好むユーザーいるので変更しなか
った」と語るが、グレード構成などを考えるとレンタカーなどのビジネス需要のために残したのだろう。そう言う意味では、新型は完全にスパーダ推しなのである。

 尚、従来モデルで追加された第3のステップワゴン「モデューロX」はガソリン車に継続設定される。

 パワートレインはアコードやオデッセイに採用される2モーターの「スポーツハイブリッドi-MMD」を搭載。145馬力/175N・mの2リッターアトキンソンサイクルDOHC i-VTEC)は発電を行ない、184馬力/315N・mのモーターで駆動するシリーズハイブリッドだが、高速域のクルージング時ではエンジン直結クラッチによりエンジンで走行も可能。ここが日産のe-POWERとの一番の違いだ。シャシー系はスポーツハイブリッドi-MMDの採用に合わせてエンジンルーム〜フロア前半は新設計。

 ボディはハイテン材の適用範囲の拡大(56→59%)や断面/結合部の補強(静剛性8.5%以上アップ)、専
用チューニングのサスペンション、フロントアルミナックル&ベアリングの採用、更に前後にパフォーマンスダンパー採用と、見えない部分はフルモデルチェンジ並の変更内容だ。

 更に安全面の充実もポイントで、ミリ派レーダーと単眼カメラ併用の安全運転支援システム「ホンダセンシング」は歩行者事故低減ステアリング機能がプラスされ全車標準装備。また、ハイブリッドモデルはACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の作動範囲が0km/h(従来は30km/hから)からに変更。

では、今回はスパーダハイブリッドGEXを中心に試乗を行なったのでその印象をお届けしたいと思う。

レスポンスのいい加速は1.5リッターターボを大きく上まわる

 エクステリアは「ステップワゴン、おまえもか!!」と言ったフロント周りだが、好き嫌いはともかく存在は出たのは事実だろう。イメージ的にはトヨタ3兄弟のノア、日産セレナならハイウェイスターに似たイメージだが、個人的にはハイブリッド専用色で初代アコードインスパイアを彷彿とさせる「フォレストグリーンパール」の組み合わせであれば、意外と落ち着いて見える。

 インテリアは大きな変更はないが、ハイブリッド車は専用セレクトレバーとフロントシート中央に電動パーキングブレーキスイッチがレイアウトされるセンターコンソールが装着(そのためウォークスルーはコツが必要)される程度。運転席下にハイブリッドシステムを搭載するため、ガソリン車とはフロントシートから2列目にかけてのフロア形状の傾斜が若干異なるものの、実際の居住性や使い勝手に関してはほぼ同じだ。

 実際に走らせてみるとモーターならではのスムースで鋭い加速Gの立ち上がりにより、発進からの力強さは過給するまで若干ラグがある1.5リッターターボとは雲泥の差である。ちなみにバッテリー容量が十分で通常の加速であれば100km/hまではEV走行可能だが、加速時などにアクセルをグッと踏み込んでエンジンが始動しても、それほどエンジンが唸る印象もなくノイジーではない。

 これはアクセル操作に合わせた自然な発電制御に加え、入念に施された遮音/吸音も効いているのだろう。燃費は一般道を中心にワインディング、高速道路と約100kmの走行20km/L前後をマーク。ちなみにガソリン車は10〜13km/Lだった。

 ハンドリングはガソリン車に対して100kg以上重い車両重量を活かし、重厚さを演出した乗り味で、フラットライド、スムースライドで雑味の少ない質感の高い乗り味に仕上がっているのだが、ハンドリングに関しては操舵の初期応答の良さに対してリヤの遅れが気になった。

 これはワインディング云々だけの話ではなく、高速道路などでのレーンチェンジでの収まりの悪さなどにも影響するなど、日常使いでドライバーの安心感にも繋がる部分なので、もう少し頑張ってほしいと思った。

 ちなみに、その辺りは走りにひと手間掛かった「モデューロX」では改善されているのだが、残念ながらガソリン車のみの設定。個人的にはハイブリッドにも追加してほしい。

 更にディーラーOPにはなるが、ワクワクゲートによる後方視界の悪さを解消してくれる「アドバンスドルームミラー」や、セレナよりも使い勝手のいい、足もと操作で自動開閉可能な「ハンズフリースライドドア」など、ライバルをよく研究しているな……と感じられる部分も。

 このように、今回の変更はライバル対抗策がてんこ盛りの内容になっており、実際に乗ってみてハード的には大きな進化となっているが、その一方でコンセプト不在となってしまった感も否めない。もちろん、ミ
ニバンはユーザーニーズや結果(=販売台数)が重要なのはよくわかるが、個人的にはホンダには「後追い」ではなく「先行」であってほしい。