古巣相手にハーフナーは2ゴールを奪った。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 2187日ぶりのJ1弾だった。ハーフナー・マイクは2011年にヴァンフォーレ甲府の選手として17得点を挙げる活躍を見せ、同年のシーズン終了後に欧州へ移籍。オランダやスペイン、フィンランドのクラブでプレーし、17年7月のヴィッセル神戸入りからJリーグへ復帰している。
 
 神戸はハーフナーと前後して、元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキの加入も決まっていた。ハーフナーも日本代表通算18キャップの実力者だが、ポドルスキはドイツ代表として国際Aマッチに130試合出場した猛者。ハーフナーはここまでのリーグ戦出場が5試合にとどまり、得点もなかった。
 
 しかし29日の甲府戦はポドルスキが累積警告で出場停止。神戸はハーフナーを「活かす」戦いを選択して3-2の勝利を挙げた。
 
 吉田孝行監督はこう説明する。「相手のサイドの背後を徹底して狙って、そこからクロス。マイクは必ず中にいるというゲームプランで入った。前半の途中に水たまりが出来だしてロングボールにしなければという展開でしたが、セカンドボールを拾ってサイドに散らして、その中でマイクが決めたというのはある意味で狙い通りの得点だった」
 
 神戸はボールを保持する狙いから、強い雨を考えて蹴るプランに切り替えたが、「クロスからマイク」という狙いは不変だった。
 
 ハーフナーは0-1で迎えた33分に渡邉千真の右クロスからヘッドで同点弾を決めると、2-2で迎えた86分には小川慶治朗の右クロスに合わせてやはりヘッドから決勝弾。2011年11月3日の横浜FM戦で同じ山梨中銀スタジアムで決めたゴール以来となる、「J1弾」だった。
 
 1点目をアシストした渡邉はこう狙いを説明する。「ふわっと上げれば、マイクが合わせてくれるかなと思った。狙い通りのボールが行けた。デカいんで、ふわんと上げればあとはマイクの時間になる」
 
 一般的にはライナー性の強いクロスを入れないと、なかなか得点は生まれない。「ふわっとしたクロス」は相手DFに対応する時間を与えてしまうからだ。しかしハーフナーは2点とも相手CBのマークがついている中で、ヘッドを決めてみせた。
 
 甲府のGK河田晃兵は説明する。
「マイナスに入るボールから首をひねられた。DFの対応が難しい2本だったと思います。ディフェンスの『上』だとガチンコに競れるけれど、後ろに入ってきたボールに下がりながら首を振る感じだと難しい。(マイクは)足を付けたままゴールを見ながら(首を)ひねった。デカい分『幅』が出るし、ジャンプをしなければ狙い澄ませて打てる。相手が飛んだら胸トラに切り替えられる器用さもある。(クロスを)上げさせないようにするしかない」

 2点ともアシストは右サイドからファーに上げた「緩め」のボール。ハーフナーはゴールから遠ざかりながら、叩きつけるのでなくコースを狙って首を振っていた。「ゴール前に飛び込む」「高く跳ぶ」という一般的なヘディングではなかった。195センチというサイズを活かしつつ、相手を見て空いたコースにしっかりコントロールする「技」を出したヘッドだった。
 
 ハーフナー自身もこう振り返る。
「ディフェンスを前に出さないようにしっかり腕を伸ばして、あとはコースを狙って、頭を動かすだけだった。いいボールも来て上手く流し込めた。(ぎりぎりのコースを)狙っているので。あとは(GKが)届くか届かないかということ」
 
「懐かしいですね」という小瀬で、古巣の甲府を相手に挙げた2ゴールは、ハーフナーの真価を証明するものだった。「次につながる結果は残せられたかなと思います」と彼も口にするように、ポドルスキの「影」に隠れていた男が、自身の存在価値を大きくアピールした一戦だった。

取材・文:大島和人(球技ライター)