名古屋駅と「ささしまライブ24」を結ぶ交通機関。あおなみ線(右下)近鉄(左)に加えてシャトルバス(右上)も登場した(筆者撮影)

通称の「名駅」をもじって「迷駅」と呼ばれるほどの入り組んだ構造で、全容の把握が難しい名古屋駅。ここから南約1kmのところに今年10月上旬、「ささしまライブ24」という新たな街が誕生した。

ささしまライブ24には、最寄りに名古屋駅へ通じる路線の駅が2つある。それにもかかわらず、9月16日から名古屋駅とこの地区を結ぶ名鉄バスのシャトルバス「ささしまウェルカムバス」が運行を開始した。

現地に行ってみると、これは「迷駅」が生んだバス路線だとわかった。

かつての貨物駅が新しい街に

まずは位置関係を確認しよう。ささしまライブ24は名古屋駅から南に延びる東海道新幹線や名鉄名古屋本線などと、同駅からカーブを描いて西へ延びる関西本線や近鉄名古屋線などの間に挟まれた、三角形に近い形のエリアだ。

ささしまライブ24の広大な土地は、旧国鉄の笹島貨物ターミナル駅があったところで、開業当初の名古屋駅もこの付近にあった。名古屋駅近くでは最後の大規模再開発エリアとされ、慎重に計画が練られた。計画中の2005年には、愛知万博のサテライト会場として活用されている。万博後に本格的な再開発工事が続けられた結果、アミューズメント施設に加えてJICA中部国際センター、愛知大学名古屋キャンパス、中京テレビ放送といった規模の大きな施設が順次オープンした。

さらに、保育園付き大規模賃貸マンションやホテルなども開業し、今年10月には最後の大規模施設として、2つの高層ビルとその間をつなぐ低層棟からなる複合施設「グローバルゲート」が完成した。ここには商業施設・コンベンションホール・オフィスなどに加えて、名古屋初進出となるプリンスホテルも高層棟の上層階に「名古屋プリンスホテル スカイタワー」を開業している。


名古屋駅とささしまライブ24(地図中緑色の部分)の位置関係

ささしまライブ24の最寄り駅は、三角形の西端近くにある名古屋臨海高速鉄道あおなみ線のささしまライブ駅と、さらに跨線橋を渡った先にある近鉄名古屋線の米野駅だ。

あおなみ線は、万博に間に合わせるべく2004年の秋に開業し、この際にささしまライブ駅が誕生した。名古屋―ささしまライブ間はわずか800mで、所要時間は2分弱、運賃は200円だ。

だが、名古屋駅のあおなみ線ホームはほかの路線とやや離れ、JR名古屋駅の最南端に飛び出した形で存在する。このような場所にホームができたのは、同線が名古屋貨物ターミナルへの貨物線を旅客営業できるようにした路線のためだ。

JR在来線各線を挟んで東側には近鉄名古屋駅と名鉄名古屋駅があるが、近鉄・名鉄とあおなみ線ホームを直接つなぐ道はない。乗り継ぐにはまず北に行き、JR名古屋駅の中央コンコースを通ったうえで南下する必要がある。コースによって距離はやや異なるが、おおむね400m程度で、電車の降車位置によっては500m近く歩くこともある。

駅前からすぐ乗れるバス


名古屋駅前、ミッドランドスクエアの前に停車する「ささしまウェルカムバス」(筆者撮影)

一方、新設された「ささしまウェルカムバス」の停留所は、名鉄・近鉄の名古屋駅改札を出てすぐ東側にある。乗車は駅から道を隔てて反対側にある高層ビル「ミッドランドスクエア」の前で、降車は名鉄名古屋駅に隣接した場所だ。

バスの所要時間は、名鉄バスのサイトに「標準所要時間」として、名古屋駅(ミッドランドスクエア前)→ささしまライブ24が4分、ささしまライブ24→名古屋駅(名鉄名古屋駅前)が8分となっている。この所要時間の差は、名古屋駅行きが発車後にグローバルゲートを一周することもあるが、それ以上に名古屋駅前への道が渋滞するためと思われる。運賃は210円で、あおなみ線や近鉄より高い。

だが、名古屋駅周辺は駅が開業して以来、東側が発展してきた。駅西は国鉄がJRになってから急速に発展したが、東側とはいまだに差がついており、高層ビル群もすべて駅東側に集中している。あおなみ線は10月から名古屋―ささしまライブ間限定の往復割引乗車券を発売開始したが、東側の名鉄・近鉄駅前からすぐの場所で乗り降りできるバスの利便性は高い。


あおなみ線のささしまライブ駅。下を「ささしまウェルカムバス」が走るが、停留所はない(筆者撮影)

ささしまライブ24では、グローバルゲート開業後最初の週末となる10月7・8日を「まちびらき」と位置づけて、大々的なイベントが行われた(ささしまライブまちびらき GLOBAL DAYS 2017)。両日とも好天に恵まれ、大勢の人でにぎわったが、その2日目となる8日の昼頃から夕刻までの、同地への交通機関の様子を実際に見てみた。

あおなみ線は4両編成の通勤形電車が15分おきに走っている。ささしまライブ駅には電車が着くたびに下車する人がおり、名古屋方面ホームに乗車待ちの列もできるが、収容力の大きな電車だけに、ラッシュ時のような混みかたにはならないようだ。

駅は高架上にあるが、1 階分下がったところにある歩行者デッキがそのままグローバルゲートに直結していて、さらに奥の愛知大学まで続いている。歩いていくと、グローバルゲートとその先にある商業施設「マーケットスクエアささしま」が、ささしまライブ24のにぎわいの中心だということがわかる。その両施設を隔てる道路にささしまウェルカムバスの停留所がある。

鉄道はそれほど混んでいない


ささしまライブ24のもう1つの最寄り駅である近鉄名古屋線の米野駅(筆者撮影)

近鉄の米野駅は、ささしまライブ駅の北にある線路群を越える長さ156mの「ささしま米野歩道橋」を渡り、地上に降りてすぐの場所にある。米野―近鉄名古屋間は1.1kmの距離で、運賃は150円と、あおなみ線の200円よりも安い。電車は20分ごとで、あおなみ線の15分ごとに比べるとやや少ないが、所要時間は約2分で変わらない。しかし、米野駅でささしまライブ24の利用者らしき人はあまり見掛けない。

あおなみ線がそれほど混んでおらず、近鉄の駅でもささしまライブ24を訪れる人の姿をあまり見掛けないとなると、ささしまウェルカムバスの利用者が多いことが予想される。クルマ社会の名古屋だけに車での来訪者も多く、大規模な駐車場はあるものの、商業施設の規模や行き交う人の数からしてとても間に合いそうにないからだ。

ところが、バスは立ち客が出ることもあるものの、座席に余裕があるときもあった。土休日は12分ごと、平日日中は10分ごとの発車で、8日は「まちびらき」だけにさすがに増発されていた。しかし、つねに増発されているわけではなく、往復ともに満員というわけでもなさそうだ。バスの収容人員は電車に比べるとはるかに少ない。

そこでバスから沿道を見て驚いた。歩道には大勢の人が行き来しているのだ。バスの利用者数については公式発表を待ちたいところだが、歩道を歩く人々はどう見てもバスの利用者より圧倒的に多く、しかも南北両方向に歩く人たちがいる。

どうやら、ささしまライブ24への最も多いアクセス方法は「徒歩」のようだ。さらによく観察すると、バスの乗客は中高年が多めだが、歩いている人たちはほぼ若者だ。

名鉄は、リニア中央新幹線の品川―名古屋間が開業する予定の2027年度までに、駅を再開発する計画を立てている。その計画は、名鉄名古屋駅から南方の笹島交差点までを1つのビルに建て替え、さらに道路を挟んで南にあるビル「名鉄レジャック」と、隣接する日本生命笹島ビルまでも一体開発しようというものだ。最北端から最南端までは400mほどにもなり、東海道新幹線の一編成16両分の長さに匹敵する。

名鉄名古屋駅から約400mにわたる一体運営のビルを建てると、そこが歩道も兼ねることは間違いない。その最南端からささしまライブ24の中心となるグローバルゲートまでは約400mなのだ。グローバルゲートの入口までであればわずかに300mだ。

名駅再開発でさらに変わる風景

いま、この300mの間に目立った商業施設はない。しかし、街と街がつながってさらに大きく発展することを考えると、名古屋市としては、この300mを価値を生み出す区域に変えていくことを考えるべきではないか。すでに若者がいっぱい歩いているのだ。

ささしまライブ24はまちびらきをしたばかりだ。そのまちびらき当初から、あおなみ線と近鉄の最寄り2駅に加えてバス路線もできた。さらに徒歩でのアクセスも多いことがわかった。

この様子から予想すると、10年後のリニア開業時には、リニア駅からささしまライブまで続く、約1.5kmの「名古屋の玄関」が誕生しそうだ。日本有数の距離を誇ることになるこの一大繁華街の成立には、名鉄名古屋駅と名駅地下街の再開発がその鍵を握っていよう。

これまで、北側に建設されるリニア駅と、やや離れた南に位置する名鉄駅・近鉄駅の連絡が注目されていたが、名鉄名古屋駅再開発によりさらに南に位置するささしまライブ24との結節点になれば、名鉄駅は名駅南端の位置づけから、名駅の中核へとその立場が変わるであろう。

1.5kmという距離を考えると、ささしまウェルカムバスは名鉄駅前だけでなく、リニア駅最寄りにも乗降場所が欲しくなる。リニア駅予定地の直上には名古屋駅バスターミナルができ、名古屋市バスとJR東海バスが利用している。その乗り継ぎ利用も期待できそうだ。

鉄道駅は簡単に動かせないし増設も難しい。しかし、バス停なら対応しやすい。迷駅が「名だたる駅」としての「名駅」になるとき、その全体の移動を担うささしまウェルカムバスが果たす役割は大きそうだ。2019年3月までの社会実験ののち、将来を見据えた本格運行になることを期待したい。