チェコの極右政党率いる日系人トミオ・オカムラとは? 総選挙で大躍進

写真拡大

 21日に開票されたチェコの総選挙では、伝統ある政党が振るわず「チェコのトランプ」とも呼ばれる富豪、アンドレイ・バビシュ氏が率いる新勢力、ANO(「不満な市民の行動」の意)が約30%の票を得て、第1党に躍り出た。ANO以外にこの選挙で注目されたのは、10%以上の票を得た極右政党SPD(自由と直接民主主義)の大躍進だ。EUを批判し反移民を訴える同党のリーダーは、日本人とチェコ人の血を引く実業家、トミオ・オカムラ氏だ。

◆辛い子供時代を経て起業家、国会議員へ
 オカムラ氏は、日本と朝鮮半島系の血を引く父親と、チェコ人の母親を持つ。5歳のときに、家族で当時共産国家であったチェコスロバキアの小さな町に引っ越したが、家庭の事情から施設で育った。人種差別を受け、吃音症(どもり)を発症し、14才までおねしょをしていたという同氏は、差別から逃れるため大学をドロップアウトし、21歳で日本に戻った。ところがさらにひどい偏見に遭遇し、「混血」と差別され、ゴミ収集員や映画館のポップコーン売りをして生活していたという。結局チェコに戻って地元の古城やスパを訪れるアジアの観光客向けのビジネスを起こし、起業家として成功を収めた(ブルームバーグ)。
 
 旅行業界団体のスポークスマンを務めたことで有名になったオカムラ氏は国会議員となり、落選したものの大統領選にも立候補している。2013年には、「直接民主主義の夜明け」という政党を立ち上げたが失脚して離党し、2015年にSPDを創設した。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)によれば、オカムラ氏はチェコの主流派政党とエスタブリッシュメントに反対しており、彼らのメッセージを「親EU、親多文化主義、親イスラム」だと批判し、「ブリュッセル(EU)は敵、イスラムは宗教というよりはイデオロギー、多文化主義はチェコ文化にとっての脅威」と述べている。

◆イスラム嫌い。移民の脅威を訴えて有権者の不安を煽った
「自分が直接経験したから人種差別と外国人嫌悪は大の苦手だ」と話すものの、オカムラ氏はイスラム教徒に非常に強い反感を抱き、ムスリムはテロを繁殖させると非難。亡命希望者を受け入れることには「ゼロ容認」だと述べている。また、チェコ人はケバブを買うのはやめ、モスクの周りで犬や豚を散歩させてムスリムに嫌がらせをしようと主張している(ブルームバーグ)。

 ロイターは、低失業率、賃金上昇、比較的少ない移民数にもかかわらず、反外国人感情を煽るSPDの支持が広がったと指摘する。ニューズウィーク誌によれば、チェコのムスリム人口は全体の0.1%ほどだが、グラスゴー大学でチェコ研究をするジャン・キュリック氏は、中央ヨーロッパの中小国は常にいつか敵に滅ぼされ、存在が無くなってしまうのではと恐れており、このような歴史的な不安が現代のチェコの政治に影響を及ぼしている、と見ている。同誌は、このような感情をオカムラ氏が利用したと考えている。

◆反移民は集票のためのポーズ? 新政権に参加なるか?
 もっとも、オカムラ氏が常に極右だったわけではないようだ。ロイターによれば、2011年に同氏は移民の女性を呼び物とした美人コンテストの審査員を務めたこともある。その2年後には、ロンドンのモスクを訪れるためイスラムドレスを来たチェコ人の恋人の写真を投稿し、そこで彼女が受けたアシストをほめたたえ、「素晴らしい経験だ」と感想を述べたということだ。

 チェコのパラツキー大学で政治学を教えるPavel Saradin氏は、もともとオカムラ氏は最初にいた党では直接選挙と悪い政治家の処罰を訴えていたのに、失脚した後から移民という「仮想の脅威」という安っぽい話を付け加えたと述べている(ロイター)。

 NYTは、今回の選挙で第1党となったANOがオカムラ氏のSPDと連立を組むことはなさそうだとしているが、ロイターは、これまで主流派だった政党が、ANOのリーダーであるバビシュ氏が詐欺罪に問われていることを理由に連立を拒否しているため、政治的譲歩と引き換えに、ANOとSPDとの連携の可能性もあるとしている。