人気テレビ番組「クイズダービー」でも人気を誇った篠沢秀夫氏が先日亡くなられました。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、長い間難病と戦いながらも精力的に執筆活動などを続けていた篠沢氏のバイタリティの源を、月刊誌『致知』2012年3月号に掲載された記事を再録する形で紹介しています。

難病と向き合い続けた篠沢秀夫さん

人気クイズ番組の回答者として知られていた学習院大学名誉教授の篠沢秀夫さんが亡くなりました。

この10年ほど、ALS(筋萎縮症側索硬化症)という難病と向き合い続けてこられました。声を失い、動くこともできない日々を篠沢さんはどのような思いで乗り越えてこられたのでしょうか。

篠沢 秀夫「常に前進」

話すことができず、動くことも困難になったいま、私は「古代の心」で生きています。現代は情報が多く、自分と他人とを比べてしまいがちです。子供の育ち方が平均以下と思って殺してしまう母親の話など、目を覆いたくなるニュースが溢れています。

一方、身の回りしか見えない古代の人は呑気だったことでしょう。余計な情報がないので、他と比較して豊かだとか貧しいとか考える必要もありません。ありのままの自然環境を受け入れて、伸びやかに仲良く生きていたであろう古代人。古代の心では、目に見えることしか分かりません。それでいいのです。

現代も全人類の奥底に眠っているこの古代の心で、いまを否定するのではなく、いまを楽しむ。それを提起するのが、ALSの発症後に着想した、新古代主義・ネオアルカイスムです。

「こうならなければよかった」「元気な人が羨ましい」などと思うと、心が沈み、体が重くなります。けれども私のいまある姿は、人工呼吸器を付けたことにせよ、自分で選んだ結果です。他人を思い煩うことなく、我が道を行く。そう心に決めて、この一瞬の自分の体に満足すれば、お天気がいいだけでも嬉しいと感じます。声が出せなくても、心の中で好きだったフランス語の詩を吟じ、フランス民謡を歌っていられます。

そして、いましようとすることを決めて、一つ上の目標を定めると、心が躍ります。ベッド暮らしになってからは、毎日2時間は執筆に充てると決め、既に『ぶる ぶる ぶる ブルターニュ大好き』『美しい日本語の響き』『命尽くるとも 「古代の心」で難病ALSと闘う』の3冊の本の刊行が実現しました。

昨年は「クイズダービー」以来の知人である女優の長山藍子さんから、陽気で社交的な私の妻・礼子を、劇で演じたいとのお申し出がありました。劇の脚本の土台とするべく、夫婦自伝物語『明るいはみ出し』を半年かけて書き上げました。妻との出会いからいままでを楽しく綴り、大変な分量になりましたが、既に校正刷りとなり出版は間近です。

(中略)

人生、何事も上手くいくとは限りません。一時の成功も振り返れば大したことではないと気づいたり、失敗して打ちひしがれることもあります。けれども心の苦しみについては、語らないことで耐えるしかありません。

悲しみは口にしないでじっとこらえ、やり直して明るく前へ進めばいいのです。困難に遭うたび、私は自分にそう言い聞かせて乗り越えてきました。「前進 前進 また前進」はいまも昔も私の行動原理です。

(『致知』2012年3月号掲載)

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