xiangtao / PIXTA(ピクスタ)

写真拡大

◆3点話法は話しながら考える

 プレゼンで、聞き手の集中力の低下を防ぐことに効果のある方法として、3点話法があるというのは前回お伝えした。すなわち、「伝えたいことは3点です」「ポイントは3点です」「理由は3点です」「今後のアクションプランは3点です」というフレーズを、プレゼンの節目節目で入れて構成する話法だ。

 3点話法のロープレ演習をしていると、3点話法をプレゼンの中に組み込むことに戸惑う人がいる。そういう人は、プレゼンで伝えたいことが、はっきりしていない場合が多い。その場合は、「伝えたいことをはっきりさせましょう」と言うより、具体的な手法を授けることが効果的だ。

 その手法とは、語り出しの話法を振り付けることだ。「私がどうしても伝えたいことは」「最も重要だと思うポイントは」「これには理由があることがわかりました」「是非実現したアクションプランは」という導入部分の話法だ。その後、「次の3点です」とつなげる。

 4点でも2点でもなく、3点であることが肝だ。話し手にとっても、聞き手にとっても、話したり聞いたりしていて、整理しやすく、理解しやすいからだ。加えて、1つ目は、2つ目は、3つ目は……というように、リズムも出来る。

 本当にそうだろうか?と思っている人に対して、このように解説をしているだけでは、その懸念を払拭しづらい。試してみることが一番だ。それも、下書きをしたり、話法を考えてから話してみるという方法ではなく、話しながら考えてフレーズをつくり出すことがお薦めだ。話しながら考えるという臨場感のある状況の中でこそ、自身が最も伝えたいことの思いが明確になりがちだからだ。

◆枠組思考でフレーズを生み出す

 話しながら考えるといっても、いきなりやろうと思っても、フレーズが浮かんでこない場合もある。その場合は、枠組思考で考える方法がある。実は、3点話法を用いる利点のひとつに、枠組思考がしやすいことがある。枠組思考がしやすいから、話法を構築しやすいのだ。

 枠組思考とは、大・中・小、複雑・中庸・簡易、過去・現在・未来、今週・来週・再来週、成功・失敗・改善、現状・課題・解決、説明・質問・応答、案1・案2・案3というように、枠組みに当てはめて、3点のフレーズを見出す方法だ。

 大きな問題、中くらいの問題、小さい問題というように、大・中・小で3点を考えていく。複雑な問題、中庸な問題、簡易な問題というように、問題の絡み合い具合から見出す。過去・現在・未来の観点から問題を洗い出す。今週実施すること、来週実施すること、再来週実施することという実施のタイミングでの区分でも良い。

 成功したこと・失敗したこと・改善したいこと、現状分析・課題抽出・課題に対する解決方法、説明・質問・応答というプロセスの枠組みでも良い。一番簡単な枠組みは、3案を羅列する方法だ。

 これらの枠組みのいずれでもよい。自分で話そうとする内容を、これらのいずれかの枠組みに当てはめて、ピンとくる枠組みで、3点話法を組み立てるのだ。慣れてくれば、話しながら考えてフレーズを語ることも出来るようになる。

◆意図して使用し枠組思考を活用する

 この枠組思考、スキル向上を図るために有用なのだが、使い方を間違えると弊害にさいなまれることになる。枠組思考は意図して使用することが大事な用法だ。どの枠組みを使うか意図して、どの枠組みから自ら選択すること不可欠だ。

 これを行わないで、どの枠組みを使うかの指示を待ってしまったり、枠組みの選択を他者に委ねてしまうと、そもそも枠組思考は機能せず、単なる枠組に縛られた固定観念となってしまうのだ。

「自分自身の現在のモチベーションレベル(気持ちの高まり具合)を10段階で見極める」という演習を行っている。このようにガイドすると、決まって寄せられる質問に、「何についての気持ちの高まり具合か?仕事についてか、家庭についてか、この演習についてか?」というものがある。また、「10段階の10や5や3の定義は何か」という質問もよく出される。

 それに対する私の答えは、「自分の心持ちが仕事のことで頭が一杯であれば仕事のこと、家庭のことが気にかかっていれば家庭のことになる」「自分が10だと思ったら10、5だと思ったら5」というものだ。

 こうした質問が出るということは、枠組に縛られている可能性がある。何に対する気持ちの高まり具合か、10段階の定義は何か、これらを他者に決めてもらうのではなく、さまざまな枠組みを当てはめながら自ら使う枠組みを選ぶこと、これが枠組思考だ。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第55回】

<文/山口博>

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。