前回、かぜの予防策としてのうがいと手洗いについてお話ししました。今回は、喉の痛みについて補足説明します。

市販薬と処方薬の上手な使い分けとは?

熱は出ないけれども喉が痛い……。これは立派なかぜの症状です。喉が痛くなって熱が出て、会社を休み、寝て治る、というのが一般的なかぜ治療の行程です。熱を上げることで免疫力を高め、体内に侵入したかぜウイルスをやっつけることができるからです。

ところが、中には熱を上げる力が弱い人がいます。高齢者には多くいらっしゃいますが、若くてもそういう体質の人はいます。すると熱が上がらないので免疫力も上げられず、いつまでもかぜウイルスをやっつけられない状態が続きます。しかも熱が出ていないため、会社を休めず、ついがんばって仕事してしまう。立派なかぜなのだから休まなければならないのに、休めない→体が弱る→かぜ、治らない→でも熱が出ない→休めない→いつまでも治らない、ということになります。 

このように、熱が出ないことは決していいことではありません。

こういう場合は、あまり無理を続けずに、薬を上手に利用したほうがいいと思います。ひとつは喉の痛みに特化した薬を飲むことです。ドラッグストアで買える市販薬では、たとえば「ペラック」はそのひとつです。

かぜ薬には解熱剤が含まれています。熱はないのに解熱剤を飲むのはいやだなと、抵抗を感じる方もいるでしょう。その点、「ペラック」は解熱剤が配合されていません。主成分は炎症を抑えるトラネキサム酸という薬です。特に副作用の危険のある成分も入っていませんので、「喉は痛いが熱は出ない」人にはおすすめできます。

それでも治らない場合は薬を飲みつづけるのではなく、病院で診察を受けたがほうが賢明です。その場合も処方される薬はやはりトラネキサム酸だと思いますが、成分量が市販薬とは大きく違います。

たとえば「ペラック」なら、1日に飲める成分量は750mg(1回250mgで1日3回飲む)です。一方、病院から処方されるトラネキサム酸の1日の上限は2000mgです。私が薬局で調剤していた頃は、1回500mを3回で、1日1500mgという処方がよくされていました。つまり市販の薬の2倍量です。当然、効き目は強くなります。

このように、市販薬と処方薬では薬効成分の量が大きく異なることを知っておいてください。市販薬で済ませるのか、薬効成分の多い薬を処方してもらうのか。私は健康になるためには「一に運動、二に食事、最後に薬」と考えています。何がなんでも薬を使わないのではなく、必要な時は飲んだほうがいいという考えです。長引く症状を薬の助けを借りて治し、体力を消耗させないという発想も大切です。

ただ、危険だと思うのは「薬を飲めば治る」という発想です。薬は症状を治すものではなく、あくまで対症療法に過ぎません。

だれしも体のどこかにウィークポイントを持っていて、体力が落ちるとそこから調子が悪くなることがあると思います。自分の弱いところを自覚し、長期計画になると思いますが、少しずつ体質を改善していく工夫が必要でしょう。

スプレー式もかぜ予防にはならず

前回、かぜ予防の喉のうがいは水で十分であると書きました。使うにしても茶色のポビドンヨードより、紫色の「アズレン」(アズレンスルホン酸ナトリウム)のほうが有効であることを説明しました。熱は出ないが喉が痛むという人にも、「アズレン」でうがいは有効だと思います。

また、この季節になると、ドラッグストアには小さなボトルに入ったスプレー式の薬も並びます。喉に向けてシュッと噴射する、あれです。有効成分はアズレン、そしてポビドンヨードの2タイプがあります。

季節柄、あのスプレーは「かぜ予防」薬のように思われがちですが、いずれのタイプもかぜの予防はできません。ウイルスをやっつけることはできないからです。これらの効能は「喉の炎症による痛みや腫れ」です。やはりアズレンを使ったもののほうが、炎症には効果的だと思います。

かぜの予防はまず、うがいと手洗い。そして、バランスのよい食事と十分な睡眠、休養をとって体調を整えておくことです。かぜ予防のためにできることは、まったくもってオーソドックスなのです。

熱はないけど……。喉が痛いのは立派なかぜ!



■賢人のまとめ
熱は出ないが喉が痛い、鼻が止まらないーーという症状も立派なかぜです。熱が出ないゆえに長引いてしまうこともあります。市販薬には解熱剤の入っていない喉の薬、鼻の薬もあるので対症療法として使うのも手です。それでも治らない場合は、病院へ行って薬を処方してもらうといいでしょう。処方薬のほうが有効成分の量が多く、効き目は強いです。お薬は「必要なとき」を見きわめて使いましょう。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)など。